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翡翠姫の恋煩い  作者: 八百原有希
1/9

序幕

処女作です。

誤字脱字ご報告いただけるとありがたいです。

お手柔らかに。




――激しい雨が屋根に当たる。



雨音はうるさいはずなのに、何処か寂しげだ。花木豊かな庭園は濡れて緑が深まっている。普段は好んで雨音を聞く翠燕(すいえん)も、今日ばかりは気が滅入った。

何の気なしに窓から外を見ると、庭の中央にちょうど空から何か落ちてきた。


真っ黒なそれははじめ、布の塊のようだった。風に煽られてどこから飛んできたのだろうか。布に打ち付ける雨が薄赤く色付いて流れる。それが血だと悟った瞬間、翠燕は部屋を飛び出していた。



「翠燕様…!」



慌てた侍女の声が後から追ってくる。

庭に出ると着物が雨を吸い、あっという間に重たくなったが、それに構わず駆け寄った。黒い布のように思えたのは一羽の(からす)だ。翠燕が近づいてもぐったりと動かない。怪我を負っているようで、羽の付け根からじわじわと滲む血が痛々しい。驚かさないようにゆっくりと丁寧に抱き上げる。着物に赤い色が染みた。烏の(まぶた)がかすかに開き、また閉じる。抵抗する余力もなさそうだ。



深李(しんり)、清潔な布と湯の用意を」



傘を持って追いついた侍女にそう告げると、翠燕は烏を抱いたまま(きびす)を返した。





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