封印された記憶
65章
ゴッズがいた世界は何もない世界だった。
天上もこの世もあの世もすべて。
正確には何もなくなった世界。
元の世界でゴッズの思い通りに物事が動いたらこうなっていたであろう世界だ。
いかにも彼女が好きそうな世界だった。
「ここにいるのか…」
黒山は辺りを見渡すが本当に何もない。
足場すらもないため今は天使の羽で浮いている。
本当に何もないためいるのかすらも怪しいが奇跡がここを示していた。
だからここにいるはず。
すると
何もない景色にヒビが入った。
やっぱりここが正解だったようだ
そう思った瞬間、ヒビが広がって完全に景色の壁が壊れる。
そこに現れたのはさっき見覚えがある場所。
天上と全く同じ場所だった。
そのさらに奥に玉座が。
玉座に座っているのは間違いなくゴッズだ。
「見つけた」
創神が言う。
そして即座に1を発動。
しかし、発動しない。
するとメイクが
「外から奇跡へ直に妨害されてるみたい。多分あいつの仕業よ」
と言った。
ふむ。
とてもめんどうだ。
黒山も天使状態とはいえその力の根幹は奇跡だ。
奇跡を妨害されているならば能力を使えない。
「私が居れば話は別だがな」
そう言って能力を異術に進化。
神格能力を超える。
そうすることによってゴッズの干渉を無効化できる。
しかもエリア単位で。
よって黒山の能力も使用ができるようになる。
だがゴッズは何も反応しない。
いや反応できなかったの方が正しい。
創神が能力を進化させた瞬間に創神はゴッズに違和感を覚えた。
それは今までの能力では検知できなかったほどの違和感。
それほど巧妙に隠されていた。
「なんだあれは」
その違和感はゴッズの体にあった。
何故気づけなかったのかわからないほどゴッズの体から概念が噴き出ている。
普通なら概念は自然界にしか存在しないはずなのに。
何故かゴッズの体から大量に発生している。
よく目を凝らして見てみる。
すると正確にはゴッズの周りの空間が裂けそこから概念が噴出しているようだ。
何であんな現象が?
と創神は疑問に思う。
だがやることはゴッズを倒すことだ。
変わらない。
「行くぞ黒山」と創神は言って天使の羽でゴッズのもとへ飛んでいく。
黒山もそれに続く。
ゴッズの座っている玉座の前に立つ。
だがゴッズは見向きもしない。
その様子に不審がる。
すると
「空間断裂」
ゴッズがそう呟いた。
突然の能力名に創神と黒山は反応が遅れた。
その一瞬でゴッズと2人の間と黒山と創神に間に1枚の壁が現れた。
壁のせいで反対側の状況がわからない。
壁を創神はイメージで取り壊そうとする。
だがイメージが通じない。
今度は力を込めて思い切り殴る。
それでも壁はびくともしない。
「無駄だよ」
ゴッズが居た壁の方から声が聞こえてきた。
そして壁を通り抜けてゴッズが創神のいるエリアに入ってくる。
「お前宮浜の能力を…」
創神がゴッズを睨みつける。
「下界の奇跡はほとんど私のだからね。どんな能力でも使えるよ」
下界の能力なんて何万何十万存在する。
その能力を把握しきれているのは化け物でしかない。
「でも何しにきたの?もう世界は壊れた。手遅れじゃない?」
ゴッズは創神に言う。
創神は
「お前さえ取り込めば世界を元に戻せる。手遅れなんかじゃないさ」
と言って刀を生み出した。
「やれるもんならやってみな」
ゴッズは槍を生み出し対峙した。
こいつを倒せばすべてが終わる。
その臨場感で気分が高揚した。
その壁に挟まれた反対側。
黒山がどんどんと壁を叩いている。
しかし壊れる気配はない。
「何が起きてんだこんちくしょう!」
黒山は思い切り壁を蹴った。
もちろんそんな程度では壊れなかった。
「あれ、こんなところまで来たの?執念深いねえ」
背後からレキの声が聞こえた。
声が聞こえた瞬間に振り向き確認する。
そこにはまぎれもなくレキが居た。
「お前も加勢に来てくれたのか!この向こうに会長がいるんだ。開ける手立てはないか?」
と黒山はレキに聞いた。
レキは黒山のすぐ横まで歩いてくると
ドカっと黒山を殴り倒した。
「なっ!?」と黒山は倒れながらレキを見た。
その顔は笑っていた。
黒山はそのまま回る。
レキはその様子を見てこらえきれない様子で「はははははははは!」と手を叩いて笑い出した。
倒れた黒山はゆっくりと立ち上がる。
そして
「てめぇ!何しやがる!」と怒りをあらわにした。
それにレキは
「僕はそもそも世界なんてどうでもいい。なんなら要らないって思ってる。だからどちらかと言われればゴッズに賛成なんだ。だから僕は君たちを止めるよ」
と言い放った。
黒山は血が出るほど拳を握りながら
「本気で言ってるのか?」と聞くとレキは「もちろん」と躊躇なく答えた。
その瞬間、黒山は零の中の身体神化を使う。
そしてそのままレキを殴る。
だが拳はレキの体を突き抜ける。
そのままレキの体は電気球体に変身する。
秘術だ。
電気は実体を持たず、物理攻撃は効かない。
ならば。
黒山は零の中の固定神質を使用した。
能力は実体を持たないものを強制的に固め、実態を持たせる能力。
能力を使用してその拳でレキを殴る。
するとレキの体は元の姿に戻され黒山の拳が当たった。
黒山は「勝てる」と確信した。
「今のうちに降参しろ。お前もこっち側に来い」
と黒山は言った。
だがレキは反応を見せずにニヤニヤと笑っている。
「何が可笑しい」と黒山は聞く。
レキは答えた。
「どうして僕はここにいると思う?」
と。
考えてみれば確かに。こいつは何故ここにいる。
ここは別世界。
簡単に来れる場所じゃない。
なのにもかかわらず。
「僕は契約したのさ」
レキは自分の手のひらを掲げて言う。
その手のひらには紋章があった。
稲妻の紋章が。
そして立ち上がり自身の着ていた白衣を脱ぎ捨てた。
脱ぎ捨てられた白衣は稲妻に分解され消える。
そしてレキの右手が前触れもなく千切れた。
千切れた右手はレキの頭に巻きついたかと思うとそれも稲妻に姿を変え、レキの右目から耳までを覆った。
千切れた右手があった場所から再生したのは稲妻の右手。
レキの周囲に小さい放電現象が起き続ける。
「あの天使とな」
そう言った瞬間に背中から稲妻で出来た天使の羽が現れた。
レキは続けて
「そういえばあの生徒会長の「1」と僕の「-」って2つとも「天使の翼」っていう存在らしいよ。詳しい定義は僕は分からないけどね」と言った。
黒山はもう一度レキへ攻撃を行う。
だが
「おっそい」
高速で攻撃を行ったはずの黒山の拳はいともたやすく避けられた。
そして
ガン
と顎から上に向かって拳が突き上げられた。
そのレキの一連の動きが早すぎて黒山にも見えない。
いつの間にか攻撃されていた。
脳が揺らされ意識が飛びかける。
ギリギリのところで耐え意識を保った。
しかし脳が刺激されたことにより、封印されていた黒山の記憶が蘇った。
燃える家、複数の遺体。
その記憶は自身の家族の記憶。
黒山は混乱する。
「なんで俺の家族が死んでるんだ…?」
溢れ出した過去の記憶。
俺の家族が何で…?生きてるんじゃなかったのか…?
と自身の頭を抱える。
レキはその様子を見て微弱な電流で黒山の頭の中を盗み見した。
「ふん。何かを思い出したのか」
と情けをかけるような顔をして。
複数の光を黒山に飛ばす。
それをもろに受け光は黒山を貫いた。
血が吹き出る。
黒山の叫び声が壁で仕切られた空間内に響き渡る。
「何か悪いことが起きてる。急がなくちゃ」
創神が開けた空間の穴を通って彼女は向かう。
大切な人の元へ。
後方にも3人。
仲間を助けるために戦いの地へ。




