妹
6章
キンコンカンコーン
「解読できなかったんですね。大丈夫ですよ。まだ誰にも読めない本なので解読できた方がおかしいです
し。生徒会の人がやってくれてるからとだけ全員に言えたので仕事の効率はそのうちもとに戻ると思います
し。それではお手伝いありがとうございました。図書室にはまた普通に来てくださいね」
そう言い残し追人は自分の教室の方向へ戻っていった。
俺たち二人も通常なら自分の教室に戻るべく階段を降りるはずだった。だが、あの解読の話について二人で
話し合い、一回会長に話すために生徒会室に行こうということになったのだ。
会長なら学校にあったあの奇妙な本のこともわかるかも知れないし、異人の能力の話なら解決してくれるの
ではないかと思ったからだ。
結局解読できたことは追人には言わなかった。怖くて言えるわけがなかった。あいつ本人も言っていたこと
だがどう考えても俺たちはまともじゃない。
階段を登り、両開きのドアの前に立つ。この奥に会長がいるはず。
両開きのドアの左側の取っ手を掴む。ゆっくり開けようとするが、
ガチャガチャ
鍵が閉まっているようだ。ということは会長はこの中にはいないのか。
自分としては正直安堵している。だが、わからないという不安が自分の中にはまだ残っている。
「いないのかな…」
愛花が少し落ち着いた様子で呟く。
「あぁそうみたいだな。あの人のクラスもわからないし、生徒会室にいないんじゃお手上げかな」
もう一度ドアをガチャガチャやってみて開かないということを再確認し、ついでにドアをドンドンと思い切
り叩き「会長ー!」と叫んでも出てこないので居ないということも確認し自分たちの教室に戻った。
教室の前には教科書を手に持ったクラスメイトが我先にと教室内に入っていく。
やな予感を感じながら教室を覗き込む。
教室にはもう5限の先生が居て授業が始まるのを待っていた。
急いで時間を確認すると授業開始1分前だった。
「やべぇ、授業の準備してなかった!」「私も!」
スーパー最高速で授業の準備をするために彼らはロッカーへ向かう。
だが、授業に間に合わずに先生に注意された二人であった。
昼休み開始前生徒会室にて
生徒会長、奏臣はいつも通り生徒会長席に座り、パソコンをパチパチしている。1点だけいつも通りではない
のは目の前にいる侵入者に話しかけていることだ。
「…さて、洗いざらい話してもらおうか」
生徒会室のソファに座らされているのは組織の幹部キング。何人もの異人を殺し、生徒会を襲撃した張本人
だ。しかし、異人を殺すという目的、奏臣も殺す対象で強大な力を持つ危険人物だが、今は特に拘束などは
されず、普通の状態で座っている。
「話すって何をだ?」
最初に来たときからだるそうにしていたが、今はさらにだるそうに奏臣に問う。
「あんたの情報網はこっちでも把握してんだよ。潰せるところは潰してるが人間のところも多くてな。完全
に潰そうとも潰せない状況なんだ。そしてその情報網からこっちの情報はほとんど漏れてる。今俺に何の情
報を望もうというわけだ?」
彼らの目的はあくまでも「異人の抹殺」だ。人間は守るものであり、殺す対象ではない。人間が異人に味方
していたとしてもだ。
「…わからないとは言わせないぞ」
一気に周囲に創神の殺気が満ち溢れる。その殺気で時計のガラス板にピッとヒビが入った。
奏臣がキングをギラリとにらみつけ言う。
「…私の妹はどうした」
それにキングは思い出したような顔をして言った。
「あぁ〜、そのことね。今のところは問題ないよ。何がしたいのかはわからないけど俺たちが貸した本をず
っと読み漁ってる。こっちとしてもありがたいんだけどね。他の事に時間を割けられるし」
ならいい。と奏臣が言うと溢れていた殺気が綺麗サッパリなくなった。すると、キングが皮肉そうに言っ
た。
「しかし、いいよね。あの量の殺気のコントロールができるんだったら何でも情報喋らさせられるでし
ょ?」
奏臣はその質問を無視して窓の前に立った。外を眺めているように見えているが、実際は外を確認してい
る。そろそろ来るだろうと予想していたのだ。これから来る奴らにも一個聞きたいことがあるが、喋っては
くれないだろう。
「それじゃあここでグッバイです」
奏臣が振り向くとキングが椅子から立っていて、両手には槍を持っている。そこから一瞬の時間もなく、そ
のうちの左側の槍を奏臣に投げつける。槍は目に見えない速さで奏臣を貫き、そのまま壁に突き刺さる。
攻撃を受けたあと奏臣は反撃しようとするが既にそこにキングの姿はなかった。だだ声だけが聞こえてく
る。
「その能力、苦しいね同情するよ。死んでも死ねないなんてどんな苦しみもこれにはかなわない。どうやっ
てやっても死ねない。だけど痛みはある。最悪だね」
最後に彼はこう付け足す。
「本当の怪物はお前だよ」
そこでぷつりと何かが切れる音がした。多分キングがこの学校から出た音だろう。この学校は結界が張って
あるので部外者が出入りするとそういう音がする。
自分以外誰も居なくなった生徒会室で奏臣はポケットから1つの物を出した。
奏臣が小学生の頃、家族3人遊園地で撮った写真だ。
バックに観覧車を映し、右に奏臣父、その反対側に奏臣母、間に挟まれた奏臣。
なんの変哲もない家族写真だ。その写真の中にいる小さい自分はニコニコと笑っていて、それを微笑ましく
見守る両親。バックの観覧車は真新しく、観覧車の前に「グランドオープン」と書かれた風船が浮かんでい
るのが映っている。
そしてその写真を見て彼女は悲しそうな顔をして生徒会室のドアを開け外に出る。そしてその足でどこかへ
向かうのだった。
夕暮れ、黒山の学校の帰り道。
夕日がうまい具合に街に風景と重なってThe青春って感じがするなー、と黒山は考える。
愛花は電車が別の路線なのでもういない。今は駅から自分の家へ帰っている最中だ。
道には犬を散歩させている人ぐらいしかいない。今まさに夏に入りそうで犬がアチチとアスファルトから足
を上げているほど暑いから外に出る人が減るのも当たり前だろう。
もっと熱くなんのかーと憂鬱になる黒山。
正直なところ暑いのは嫌いだ。理由は詳しくはわからないがとにかく暑いのは嫌いだ。とはいって寒いのも
嫌いだ。自分に適した温度が一番いいよなー人間誰しもそうだろー。と黒山は思う。
鼻歌を歌いながら黒山が帰り道を進む。
その後ろからてくてくと誰かが後ろを歩いている音がする。
黒山はそんなことには気付かずに歩幅変わらず進んでいく。
そういえば愛花と俺はあの本読めたんだろうなー。なんか前世の記憶とかやつ?それだったら逆に面白そう
だなー。ん?その場合、愛花が前世俺の近くにいた事ということに?それもそれで面白いなー。少し怖いけ
ど。
「あ、あのー」
いや、前世はなし。そしたらなんだろう。どこかで習ったことがある文字だったとかかね。まぁ図書委員の
やつが読めなかった時点でそれはないと思うしなー。どっか遠くで習ってたっていう説も出したいけどそし
たら愛花が直ぐ側に居たっていう話に…。うう…少しゾクゾクしてきた…。
「あ・の!」
唐突に大きな声が飛んできた。振り向くと学校でいつも寝泊まりしているはずの咲川が立っていた。少しフ
ラフラしてるように見えるのは気のせいだろうか。
「おー咲川お前も家こっちだったんだな。せっかくだから一緒に帰ろうぜー」
黒山はなるべく普通に言ったが、咲川はフラフラしながら
「いや家はこっちじゃないですぅ…、学校追い出されちゃったので泊めてくれる人を探して…ぽひゅう…」
最後まで言えなかったのは突然、咲川が暑さでフライパンになっているアスファルトにバタリとダイブした
からだ。
びっくりした黒山は一瞬動きを止めるとすぐに状況を理解し、咲川を抱える。
「ちょっと待て!お前それ鉄板焼になって死ぬだろ!起きろって!ん!?こいつ既に息が薄い!くそう、後
少し俺の家だからそれまで耐えてくれ!」
そう言って倒れた咲川を背負うと猛ダッシュで夕焼けに染まった道を駆け抜け、自分の家に帰る黒山だっ
た。
こんにちはsakuです
今回は会長の妹なる存在を匂わせる感じにしました
今後妹の存在は書いていくつもりなのでお待ち下さい
今回は書くことが少ないのでこれで失礼します
面白ければ〜☆5を、面白くなければさげてもらっても結構です
その場合何がダメだったかを教えてほしいです
直せる範囲で直していきます
それでは