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復讐

55章



ディストの本部。


ディストにはその人間が入ることが出来る寮が存在する。


本部は何回も場所が変わっているが寮の場所は変わっていない。


寮に行くためには簡易的なワープポータル(レキ作成)を使用しないと行けないようになっている。


元々ディストは身寄りのない奴らを集めているためこの制度は結構良かったりする。


しかしディストの長、ライが死んでから、維持が難しくなってきている。


今はメイクが1人で回している状態だ。


そもそもディスト自体ほとんど慈善事業のため赤字が確定している。


たまに臨時で依頼が来るときはあるがそれ以外はタダ働きだ。


さっきも言ったがディストは身寄りがない奴らを集めている組織だ。


それ以外は問題ない。


だが3食冷暖房完備の寮を継続していくのはメイクでもかなり難しい部類に入る。


ライの方針が不自由ない駆除をモットーにしていたため、今更変えることは出来ない。


管理室でメイクが「どうしよっかな〜」と椅子を倒しながらつぶやく。


正直な話、あの人に全部頼めばなんとかなるだろうけどさすがにそこまで迷惑を掛ける訳にはいかないからな〜。でも私の能力でも限界があるしな〜。


さらにいえばディストは希望者に学校関連の出費も給付している。


キングなど学生の奴らも多いからだ。


これはメイクが個人的に提案した。


その時からメイクは自分の目的が果たされればこの組織の人間が路頭に迷うことがわかっていたため最低限の学力は身につけてもらわないと。


と思っていたからだ。


他にも色々出費はありかなり厳しい状況だと言える。


最終手段はあの人に頼むことだけど、やっぱりね…。


そう頭を抱えていると管理人室のドアがノックされた。


そしてドアを開けて入ってきたのはキングだった。


制服を着ているから学校帰りだろう。


「どうしたぁー。遊びに来たのかぁー?」


メイクが椅子を戻してキングに話しかける。


するとキングは話を始める。


「ずっと考えてたんだ。もし異人が居なくなったらその時はどうすれば良いんだろうって。それでわかった。異人とはいえ俺は人を殺してる。だからそれの償いをしなくちゃいけないって」


まぁそう行き着くよなとメイクは考える。


そして


「でも死んだ人が生き返ったら償う必要は無いんじゃないの?」とキングに聞いてみた。


それに対しキングは


「もしそうなったとしても俺のやったことは消えない。俺の中に残り続ける。そのせいでオレの心が壊れてしまうかもしれない。せめて謝罪回りをし続けるさ。全員から許されるまでな」


と言う。


ふむどうやら決意は固いようだね。


ならば私もその決意を裏切るような真似はできない。


その後キングとメイクは適当に雑談したあと、キングが部屋に帰っていった。


「仕方ないね」


キングが部屋から出ていったあとメイクは瞬間移動である場所に向かった。


あの人がいる場所に。



周りが暗くなり、海も漆黒の暗さを持ち始めた時。


アマが自身が死んだ場所に立つ。


かつての居場所だった旅館を見てアマは何を思うか。


自分はここで働きここで死んだがここの従業員は私のことを誰一人覚えていないだろう。


あの堕天使が記憶を操作している。


世の中の混乱を抑えるためにはそれが一番いいのは重々承知しているが、死んだ方の立場としては自分のことを誰も悔やんでくれないため、寂しいの一言に尽きる。


その者が生きてきたという事象ごと消していることに変わらないからだ。


アマは吸いきったタバコを浜に落として踏み、鎮火させる。


「これでも頑張って生きていたんですけどね」


従業員としての口調で言う。


だがその立場はもう無い。


別に誰かを責めるわけではない。


自分の力不足が原因なのだ。


「よし、そろそろ行くか」


アマは羽を広げ、大空へ羽ばたいていく。


そこから少し飛ぶと森の景色が街の景色に変わっていく。


そういえばあの2人が居なくなったときもこんな風に暗く、街の明かりが騒がしかった。


昔は良かった。


ただのんきに過ごすだけで良かったのに。


どうしてこんな風に争ってしまうのか。


アマは空中で立ち止まる。


そして上を見上げて月を見た。


この月はいつまでも変わらず周期を周回している。


そんな風な日常がもう一度来るのか。


「世界を壊せばもう何もしなくてもいいのか」


アマはそう呟く。


正直、今自分がここにいる理由もわからない。


理由なんてあるのかすらも。


あるのかわからないのなら無いのも同然だろう。


そうしてアマはとある場所に向かう。


あいつが居るはずの場所へ。


天上もこの世もあの世も全てが無になる。


そうすればもう負の感情が生まれることもなくなる。


「まずはあいつらを消し去る」


負の連鎖は止まらない。




「…何かがこっちに来ている」


メイクを迎えた奏臣がソファに座り、紅茶を飲みながらそう言った。


なんのことだかさっぱりわからない咲川。


しかしメイクは奏臣と感覚を共有しているためその意味がわかる。


「これは人間じゃないね。天使?」


向かってきているものの身体構成が明らかに天使の構成をしている。


羽も生えている。


奏臣は紅茶を机に置く。


そして


「…とりあえずお前の頼みは聞いてやる。それは安心しろ。それよりもこいつの処理だ」


とメイクに向かって言った。


この天使は普通の天使じゃなく4大天使に匹敵する力の持ち主。


奏臣が戦えば負けるのは濃厚だ。


だがそれは奏臣であればの話。


「…咲川は破壊の概念を一応ポケットに忍ばせておけ。武器にはなる」


そう言って立ち上がり奏臣とメイクは玄関へ向かった。


玄関から外に出るとその天使はもう、すぐ近くまで来ている。


住宅街の中で戦うのは危険すぎるため奏臣とメイクは羽を使って上空に上昇した。


空ならば被害は少ないはず。


そこで天使を待つ。


すると空の向こう側に天使のシルエットが見えた。


その天使のシルエットはタバコを吸っている。


直後、天使は奏臣たちの前に到着し、対峙する。


「…アマ、あいつの下にくだるなんて何を考えてる」


その天使はライに殺されたはずの天川だった。


「復讐だよ。その機会をくれたんだ。仕えないわけには行かないよな?」


四大天使。


創神もといミコ、天川もといアマ、黒山もといフラン、そして櫻木もといリエルの四人で構成されていた上級天使。


今はもうバラけてしまったが。


「君も私たちと同じであいつの意向に反対してくれてたと思ってたんだけど」


メイクが言う。


それに対しアマはこう答える。


「最初はな。でもな気づいたんだ。あの人のやってることは正しいってな」と。


しかし奏臣は呆れる。


「…蘇生されたときになにかいじられたか?昔のお前はそんなやつじゃない。お前は信念を曲げない。何があっても自分の意見を曲げなかっただろう」


昔の彼を知っているから答えられる。


天上での彼はとにかく頑固だった。


それさえなくせば良いやつだと言われるほどに。


今の彼は違う。


何かがおかしい。


「さてと無駄話はおしまいにしようぜ。お前を殺してこの世から守護者を消し去る」


アマはそう言って虚空から銃を作り出し、タバコを捨てる。


話し合いはできないようだ。


「…あぁ行くか」


奏臣はメイクを取り込む。


その瞬間に風が吹き荒れた。


「久しぶりに本気を出せるみたいだな」


「あぁ私もだ」


簡単にに言葉を交わすと2人は動きを止めた。


上空で吹く風の音だけが聞こえる。


そして


「時間神逆!」「時間神逆」


ほとんど同時に2人は叫ぶ。


その瞬間に時間が止まり、2人以外の全てが止まる。


アマが銃を5発、創神を囲むように打ちその中心を突くように自身が突撃する。


銃弾は時が止まり射出された後にその場で動きを止める。


創神が瞬間的に刀を生みだして横から切りかかった。


その刀をアマは銃で受けようとする。


だが


スパンと銃ごとアマの体を刀は貫いた。


銃は豆腐のように切れ縦としての役割を何も果たさなかった。


アマの上半身がバランスを崩して落ちる。


しかしアマの上半身は独立して動き、創神の背後を取った。


それに気づいた創神は振り向きざまに刀を振り向く。


刀はアマの顔面すれすれを通過する。


刀のリーチを計算し尽くした上での距離管理だった。


そしてアマは上半身だけで創神に体当たりをした。


体当たりとはいってもその威力は凄まじく創神の体は数メートル先に吹き飛ばされた。


最初にアマが銃を射出したところに。


「解除」


アマがそう言うと時間停止が解除される。


それと全く同じタイミングに射出された玉が勢いを取り戻す。


弾丸は全て目の前に居た創神に命中する。


弾丸を受けて創神は顔を強張らせる。


「奇跡の抑制か」


その弾丸を受けた瞬間に能力の低下を確認した。


これはすなわちあの弾丸には細工がしてあるということだろう。


4大天使は4人で共通の能力「零」を持っている。


さらに個人で別の特使能力を持ち、それを使って役目を分けていた。


そしてアマの特殊能力は「0b11」。


効果は相手の奇跡を抑制し、弱体化させる能力。


これを使ってアマは天上の警察のようなものをしていた。


0b11はどんな効果にも適用されるため、零もそれに該当する。


能力が使えなければ勝つことは不可能。


抑制され切る前に決着をつけなければ。


そう思い、創神は態勢を整えてもう一度刀を持ちアマに突撃した。




櫻木が自身の部屋でベッドに横になりながら考える。


「信二くん…報われなさすぎるよ…」


家族を無くし、記憶を無くし、異人対秘術師に巻き込まれ、私をかばって死ぬ。


あまりにも悲惨な人生だ。


考えるだけで悲しくなる。


「私にできること…」


それは彼を生き返らせて新しく楽しい思い出をいっぱい作ること。


つらい思い出なんか全部ぶっ壊していけるほど楽しい思い出を作る。


それが私にできる最大限のフォローだ。


恋人たるもの助けなきゃいけない。


だからまずは彼を生き返らせて…。


そこで櫻木は何かに気づく。


「あれ!?生徒会とディストが手を組んだんならもうメイクを殺す必要無くない!?」


体をベッドからおこして叫ぶ。


奏臣は蘇生の条件にメイクを取り込むことと言っていたがメイクが奏臣の中に入ったことを確認している。


ならもう蘇生ができるのでは!?


そう考えた櫻木は電話を取り、奏臣に電話をかける。


prrrrr


コール音が鳴っても電話に出る気配はない。


こんな時に限って!?


と櫻木が思っていると。


ドアがバタンと開け放たれた。


すぐさま開かれたドアの方を見る。


ドアの前には天使の羽を広げ仮面をつけた人物が立っていた。


しかし櫻木はこいつが神天使からの刺客とは知らない。


「あなたは誰?」


櫻木が仮面の天使にそう聞いた。


仮面の天使はその声を聞いて何故か息を吐いた。


そしてその仮面を。


右手で外した。

再開します

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