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仮面の天使

52章



天使。


それは太古の昔から伝説として語り継がれる異形の存在。


天使の力を行使するには奇跡が必要。


奇跡の最大許容量によって天使の強さは変わってくる。


その奇跡さえ体内に入れてしまえば普通の人間でも天使と同等の力を扱うことが出来る。


その体が持つ限り。


体が持たないほどの奇跡を体内に入れ力を行使すれば体は粉々に散ってしまい、命も同時に散る。


それが判明してからは奇跡の力を不要に行使するのは禁止され、奇跡が外界の漏れ出ないようにしっかりと管理されていた。




「貴様、その奇跡の量。4大天使に匹敵するぞ。一体何者だ」


創神は仮面の天使に向かって話しかける。


これは時間を稼ぐための会話だ。内容は何でもいい。


秘術師は異人と違って奇跡の量が多い傾向にある。


よって異人より強いケースがほとんど。


そしてさらに処刑というものをモチーフにしているため、神をも殺す力を持っている。


今ここで彼らを持っていかれたら神天使への勝ち目が薄くなってしまう。


だから彼らを逃がすために意識をこっちに向ける。


仮面の天使は制服ズボンのポケットに右手を突っ込んで仮面の上からでもわかるようなため息をついた。


「私にもわかりません」


返ってきたのは理解に少し時間がかかる話だった。


分裂していた状態なら理解できていなかったが今ならわかる。


「神天使から呼び出された下位天使で意識を持たされただけということか」


下位天使は4大天使より2つ低い階級で4大天使から1つ下がった階級の上位天使から上は自我を持つが下位天使以下は自我を持たずただ天上を漂っているだけの存在だ。


そんなものが己について知るわけがない。


創神が後ろを横目で見る。


しかし幹部たちはまだ逃げていない。


痺れを切らした創神が


「さっさと逃げろ!貴様らが勝てる相手じゃない!」と叫ぶと同時に


仮面の天使が動いた。


一瞬で距離を詰めて創神の顎から上に拳を振り上げる。


創神が物理的にも精神的にも飛ぶ。


アッパーは脳を揺らす技。


一時的に判断能力が皆無になり、何も行動できなくなる。


ドスンと打ち上げられた創神が地面に落ちる。


すると創神の体がピシピシとヒビが入り音を立てて崩れ始めた。


創神が自身のヒビの箇所を確認すると


「破壊の概念か」


と呟く。


仮面の天使が殴った拳には破壊の概念が纏われていた。


どうやらこの仮面の天使は破壊の概念を扱えるらしい。


死んだライ以外には破壊の概念は使えないはずだが。


「効かないけどな」


創神は自身の能力「零」によって破壊の概念を打ち消す。


零は異人秘術関係なく存在する全ての能力を持っている。


当然ライにしか使えないはずの心無き執行者も例外ではない。


しかも分裂していたときと違いその効果は桁違いになっており打ち消すことができるのは概念にまで及んでいる。


「話に聞いていた通り、いやそれ以上の奇跡量。面白い」


仮面の天使が復活した創神を見て言う。


だが相手は面白いと言うがこっちはそんな悠長なことをしている場合じゃない。


後ろにはまだ逃げることが出来ていない幹部たち、話を聞いても戦う姿勢を崩さない。


普段ならば褒めてやるところだが今はそうはいかない。


「仕方ない」


そう言うと創神は仮面の天使に向かって突貫する。


スピードはすさまじくコンマ単位の時間で離れていた仮面の天使にタックルをかます。


その勢いで2人は奥へと吹き飛ばされていく。


仮面の天使は脱出しようと奏臣を殴るがそれで止まるはずがなく、最終的に崖にぶつかって止まる。


その衝撃で辺り一帯が揺れる。


奏臣が仮面の天使から離れる。


衝撃でぶつかった箇所が大きく凹んでいた。


仮面の天使はあれだけの衝撃を受けたのにも関わらず奏臣が離れると背伸びをして歩き始めた。


「…化け物が」と奏臣は呟く。


自由になった仮面の天使が違和感に気づく。


「奇跡量が減ってる?」


目の前にいる奏臣の奇跡量が確実に減っている。


しかもかなりの量だ。


まさか。と仮面の天使は考える。




「ったく早く逃げてくれればこんなめんどくさいことしなくても良かったのに」


幹部たちを連れて瞬間移動しながらメイクは言う。


「申し訳ねぇ。少し意地になってた」


キングが申し訳なくそう言う。


あのタックルした瞬間に創神はメイクと奏臣に分かれていた。


私が気を引いてその間に部下を連れて逃げろと脳内で言われ、有無を言わさずに実行された。


行き先はあの高校だ。


あそこなら結界がある。


奏臣から前より多く奇跡を借りているからあそこの結界を開けることが出来る。


これも奏臣の命令だ。


「やっぱりあの人はおかしいよ。今に始まったことじゃないけど」


だけど奏臣はあれを想定しているのだろうか。


向こうには異人が居ることと大切な人を殺された生徒会の人間が居ることを。


そのうち奏臣も合流するだろう。


あの人のことだからきっとうまくやるはずだ。


メイクはそう思った。


そう思うしか無かった。


どんどん変わっていく風景。


1回、1回飛んでいく度になにかの繋がりがちぎれていくのをメイクには感じ取れなかった。




「面倒なことをしてくれましたね」


仮面の天使は奏臣に向かって言った。


奏臣は「…こっちも世界を救うには手段を選んでいられないんだ」とほくそ笑んで返した。


その仕草に仮面の天使は首を傾げる。


「感情が消えていたのでは?」


と思わずという感じで奏臣に聞いていた。


奏臣はめんどくさそうな顔をして虚空から刀を生みだしながら


「…それも聞かされてるのか」と言う。


生みだした刀を左手で持った鞘から抜き右手で持つ。


正直、厨二病チックで黒歴史として封印したかったのだが。と頭で思う奏臣。


今になって思い返してみると重く考えすぎていたのかもしれない。


これに気づけたのも感情を取り戻してくれたのもあいつらのおかげだ。


だから


「…あいつらの生活を守らなければ何が最強の生徒会長だ。反吐が出る」


奏臣は表情を一変し、黒く相手を威圧する顔へ変貌した。


刀もそれに影響され黒いオーラをまとう。


その威圧だけで周りの雰囲気は暗くなり、仮面の天使は威圧され後ずさりをする。


これは怒りだ。


異人と秘術師という悲しいものを生みだしてしまった神天使。


そしてそいつに永遠とも言える時間従ってきた自分に。


その怒りを目の前の敵にぶつける。


八つ当たりかもしれないが、いずれはこの怒りの刃を奴にも届かせる。


奏臣はそう決意するのだった。


「いい覚悟ですね。では俺も全力で答えましょう」


仮面の天使は後ずさりをしたものの逃げることはせず、それに対峙する。


すると空が一瞬光ったような気がした。


それは気の所為などではなく、空から落ちてくるものが光を反射した光だ。


落ちてきた物体は回転しながら仮面の天使のすぐ前の地面の刺さる。


そして仮面の天使は右手でそれを抜く。


それは鎌。


禍々しく装飾された鎌。ご丁寧にドクロまで付けられている。


いかにも危険という感じだ。


「では参りましょう」


仮面の天使はそう言うと近くにある崖が壊れた小さい石サイズの破片を持ちそれを上に投げる。


何も言わなくてもその意図はわかる。


その時をただ感覚を研ぎ澄ませて待つ。


感覚を研ぎ澄ませると時間が長く感じるらしいが、それは嘘ではない。


現に石の動きがスローに見えるぐらいには長く感じている。


それは仮面の天使も同じだろう。


お互いに石を横目で視認し、タイミングを待つ。


そしてコツン、と石が落下する。


その瞬間、空間が壊れる。


奏臣と仮面の天使がぶつかった衝撃によって正常だった空間にヒビが入った。


奏臣が横から刀を抜き、それを仮面の天使が鎌の鞘で受け止める。


ギリギリと嫌な音が接着点から鳴り、火花が散る。


どっちも力を緩めるようなことはしない。


だが何故か一瞬だけ仮面の天使が力を緩めた。


それを逃さず奏臣は一度刀を引っ込め今度は仮面の天使の仮面を突こうと一撃を放つ。


その一撃は確かに仮面に当たった。


しかし仮面はそれを弾いて刀は吹き飛ばされる。


刀が吹き飛ばされたことによって奏臣の武器がなくなる。


今度は仮面の天使が奏臣の腕を切ろうと横から薙ぎ払う。


奏臣は今メイクに半分以上力を分け与えて弱体化している状態だ。


治癒能力は呪いの一種のため死にはしないだろうが再生はかなりの時間がかかってしまう。


今は腕を切られるのも避けなければいけない。


しかし普段の余裕綽々な戦い方で身についた非回避癖はそう簡単に治るものではなかった。


判断が遅れ、刃の切っ先をかすめる。


かすめた箇所から血がツーとたれていく。


それに続けて何回も仮面の天使は鎌を振り回す。


その度にワンテンポ判断が遅れてだんだんかすり傷は増えていき、奏臣の動きが更に鈍くなっていく。


確実にこのまま行けば負けてしまう。


そう考えた奏臣は流れを変えようとする。


「…変換!」


奏臣は自分の流れ出る血を変換した。


変換された血は皮膚になっていく。


新しく出来た皮膚はちゃんと傷を塞いで擬似的に体を再生させた。


そのおかげで体も元通りに動く。


奏臣は刀を生成し、鎌を受け止める。


そして刀を地球上に存在する最高温度まで熱した。


すると熱量に耐えられなくなり鎌は溶け始める。


この機逃すまいと奏臣がそのまま全力を尽くした結果。


仮面の天使の胴体を刃が切り裂いた。


ドサリと地面に上半身が落ちる。


しかしその断面からは血も流れず、体の中に臓器も見えない。


「…体は作り物か」


奏臣はそう呟く。


元々意思がない物に神天使がこれほどまでの奇跡を扱えるほどの体を与えた。


だがなぜあの体はヒビが入っているのか。


神天使が依り代を作ったのならもう少し精巧なものを作れるはずだ。


もしかしたらそれはこの下位天使の元々の性質なのかもしれない。


そう考えた後、何故か仮面の天使の亡骸が光の粒子となって天へ消えていった。


「…神天使が呼び戻したか。いずれあいつとはまた会うだろう」


仮面の天使は実質的には死んでいない。


体さえ作り直せばすぐに生き返る。


決戦の時は近い。


すべてを救うために戦わなければいけない。

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