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5章


 「1990年頃から世界に現れ始めた異人という生まれつきの才能を持った人たちは、今世界に1000人ほどいると言われています。具体的な数がわかっていないのは、まだ覚醒してない人達がいてわからないからですね。ここで一つ最近のニュースを。二週間ほど前から一日に1人、多い日で2人、世界で異人の不審死が続いています。これは専門家の話によると、体が才能に追いつけずに壊れてしまっているかも知れない。ということらしいです。実際にはよくわかっていないんですが、私はこの専門家の意見には反対派ですね。不審死した人の統計を見てみると年代がばらばらになっていて体が耐えられなくなったという話なら結構な確率で不審死の年代が偏りがあると先生は思います。ので、何かしらの人為的な工作か何かだと仮説を立てました。でも異人についてはまだわからないことだらけですので先生の仮説も合ってるかわからないんですけどね」


…大体合ってるよ。すげえな、うちの現代社会の先生。


 組織からの奇襲があり、生徒会室をバッキバキに荒らされ、俺は結構な傷を受け、牙忍は死にかけ、いや一回死んだ。櫻木がなんか覚醒したりと、色々と充実感のある朝を過ごしたが、今はいつも通り授業を受けている。


俺の傷はもうほとんど完治した。足をめっちゃ刺されてめっちゃ血出て、何本か骨も逝ってたと思ってたん

だけど治っている。もうなんともない。


自然治癒でここまで回復したというわけではなく、これは愛花の能力のおかげだそうで。


愛花の能力は傷を癒すことができる能力らしい。かすり傷は当たり前。折れていてもパーツが無くなってい

ても治せるらしい。ただし、治せるのは自分限定なため使いにくい。代わりに死んでいなければ何でも治せ

るとのことだ。


そこで一つ疑問が生まれるだろう。そう、なんで自分限定なのに俺の傷は治っているのかというところだ。

理由はなんとびっくり、俺と愛花はとても相性がいいらしく、お互いの能力を自由に使えるということだ。


愛花はそれを使って身体を強化し、部下たちをぶっ倒したそう。そして俺はそれを使って傷を癒して今、普

通に授業を受けられている。


能力のことについては全部、会長に教えてもらった。


あの人、本人(愛花)でもわからないことを知ってるってどういうこと?さすがに能力については異人たち

でも何もしていない状態から見て判断するっていうのは無理だぞ。いや、もうあの人なら何でもできるでい

いや。考えてもわからないことは考えないほうがいい。


ちなみにこういう互いの能力を使えるというのは前例がなく、詳しいことはおろか、詳しくないこともほと

んどわかっていない。ということで結構今俺たちは危ない状態になっているというわけだ。


何かをするにも一旦会長に相談してからということになっているため、大体の休み時間は生徒会室で過ごす

ことになるだろう。


会長はずっと生徒会室にいてパソコンを使って色々している。ほんとに色々。俺じゃわからないくらい色々

している。勉強については「もう全部完璧にやった」そうです。


そんなことを考えながら窓の外を眺めていると、


「さて、それではこの異人たちの不可解な死に対して何かコメントもらおうかな。う〜ん、じゃあ空亡さん立ってくれる?」


呼ばれ、ハイと答えた少女はこう言った。


「特に何も思いません。異人は平和を脅かす存在なので、殺されてもいいと思っています」


「う〜ん、そうですね、確かに異人はその強大な力で人を脅かします。本人たちがいい異人とでも思ってい

ても人を滅ぼすほどの強大な力を持っているのは変わりありません。しかし、強大な力を持っていても危険

なのは事実です。しかし、こちらでその力の持ち主をコントロールできれば問題ないのです」


今やっている授業は現代社会の分野「異人の発生とその危険性」。


今の世界の人々からの異人の評価は最悪だ。


2003年、異人が力を使って街を一つ壊滅させた。という事件が起きた。その街は田舎ののどかな街だったが

一瞬にして街が更地になったらしい。この事件を起こした異人は無傷で消えた街の真ん中に倒れていたとこ

ろを捕らえられ、その後の処理で今はもうこの世にはいないらしい。


この事件がきっかけで異人の危険性が世の中に広まり、異人狩りと呼ばれるものが数年続いた。罪のない異人を一般人が攻撃し、一番ひどくて死者も出たという噂だ。今はだいぶ収まっているが、まだその風潮は残っている。


駅とかで異人は即刻駆除するべきだとか、異人はもう人じゃないから人権なんてものは存在しないとか。


昔、自分は異人ですと公表している人がいたが今はもうほとんどいないんじゃないか?


俺は小学生の頃から親から絶対自分は異人だというのは言うなよと釘を差されていたので普通の人間として

振る舞って何事もなく過ごせていたが、周りに異人であることを公表していたクラスメイトも居て、そいつ

は周りから省かれ、ときには暴言を吐かれていた。お前は危ない、近寄るな、いないほうがマシだなどと

色々言われていたのを覚えている。結局そのクラスメイトは不登校になり、知らぬ間に転校していた。


学校も表向きは異人も人間平等に接しましょう的なことを言っているが、裏では差別したり、労働させたり

している。


(ま、しょうがないよな)


事実、自分でコントロールができていない異人もいるし、人間なんて指一本で倒せますよ的な異人もいる。

今の立ち位置が最高とは思っていないが、一番世の中のバランスが取れていると思っている。


 キンコンカーン


授業の終わりを知らせるチャイムが校内に響きわたる。


「それでは、授業を終わりにします」


休み時間が始まり、ガヤガヤと校内がうるさくなっていく。


さてと、昼休みだし図書室の手伝いに行くかー。


「信二くんーー!早く図書室行こー!」


うるさい愛花が来た…。そんなに大声で呼ばなくても聞こえてるって…。


今のでクラスの男子が「いつやるか…」「今はまずい、放課後に一人になったところを…」「証拠隠滅用のブツを用意しておこう…」「あぁ、頼む…」って何か雲行きの怪しい会議初めてんだよ…。さすがにね、俺を殺すようなことはないはず…。


「あいつは絶対に許さん、櫻木ファンクラブ、会員No,1の俺を差し置いて櫻木さんと付き合うなんて…ぶっ

殺してやる…」


前言撤回、コイツらならやりかねん。放課後は即逃げよう。櫻木ファンクラブがあったのも初耳。


言っちゃ悪いけど…、


「こいつにそんな魅力あるか?」


「だぁれに魅力がないって話ぃ?」


やべ、声に出てた。あいつらに殺される前に愛花に殺されそう。既に手に持ってるその刃物はどこから持っ

てきたんだ愛花。まさかそれで俺を刺そうなんて考えてないよな。流石に異人だとしても痛いものは痛いし、死ぬときは死ぬからな?いや、死なない限りは私の能力使って治せるでしょ、じゃなくてな。俺は痛いのが嫌だってことなんだよな。死ぬ死なないの話ではなくt(愛花からの思いっきりパンチ)


「痛ぇ!違う!痛いのが嫌っていうことをさっきから言ってるよな俺!普通にパンチも痛いからね!」


「じゃあ私に魅力がないってどういうことか説明しなさいよ!」


「それはだなーお前にファンクラブができるほどの魅力があるか怪しいってことだ!」


「傷ついた!私だって普通の女の子だからそういうことを言われると傷つくよ!」


ぎゃーぎゃーわーわー二人で口論しながら図書室に向かっていく。その道中「なんだいつものやつか」とい

う聞き捨てならない言葉を聞いた気がするが今はそんなことに構ってられない!


数分歩いて図書室に着いた。


俺たちの学校は南校舎と北校舎と旧校舎に分かれていて俺たちの教室は北校舎3階にあるのだが、図書室は真

反対側の南校舎3階にある。その途中に渡り廊下なんて存在しないので1階まで降り、南校舎に行き、階段を

上がって図書室に向かう方法しかない。


図書室は教室3個分の大きさをしており、縦に長い構造になっている。入り口は一番手前と奥の二箇所、しか

し廊下側の奥にはなにもないので基本的には手前側が入口になっている。


中に入ると天井にぴったりの高さの本棚がドア横から全方向に広がっている。更に図書室を5つに分断するよ

うに4つの天井までぴったりの高さの本棚が置いてある、ただしその奥と手前は少し隙間が空いておりそこか

ら別の本棚へ移動できるようになっている。その全ての本棚にぎっしりと本が詰まっていてところどころに

穴があるが穴があっても大量の本があることがわかる。貸し出し受付とやらは入って直進したところにあ

り、今は司書さんが座って本を読んでいる。


「やっと来ましたね生徒会の方」


入ってすぐ横の道から声をかけられた。そこにはこの学校の制服を着て、両手に本を五冊ほど持っている、

メガネを掛けて髪をきっちり整えている物静かそうな男の子が居た。


「図書委員会の人ですかね?」


「はいそうです。お手伝い感謝します。僕は追人手捨といいます。手捨と書いてロストと読むのでだいたい

の人は読めないのがコンプレックスです」


親のセンスを疑う名前だな。これが俗に言うキラキラネームというやつだろう。


「よろしく、俺は黒山信二。でこっちが櫻木愛花。本当は俺だけの予定だったんだが、こいつが行きたいっ

て言うから仕方なく連れてきた」


「人手が増えるのはいいことです。それではさっそく仕事に行きましょう」




最初につれてこられたのは図書室のバックヤードのようなところだった。


棚のようなものはなくただ箱がいっぱいそこら中に散らばっているだけだ。


その箱全ての中に新書がいっぱい詰まっている。そしてその箱がざっと数えて40個ほど。入っている本の数

を20冊だと仮定して大体800冊。


「この箱に入っている本を全て出して封を剥がしてもらいます。終わったものはこっちの空き箱の中に入れてください」


そう言って出してきたのは落ちている箱よりももっと大きな箱。


「えっとつかぬことを聞くんですけど、全部ってこの全部ですかね?」


ハイそうですが何か?、追人はキョトンとした顔で言う。


昼休みだけで終わるかな、無理だろうな。約800冊。


「冗談です」


冗談で良かったよ!さすがにこの量を二人で昼休み中に終わらせるのは無理無理。で、本当はどんな仕事か

な〜。


「この本を解読してください」


追人が手に持っていたのは古そうな本だった。その本を開きながら追人は話す。


「この本借りる人は結構いるのに全員、読めないって言って一日後に返しに来るんですよね。読めるように

なったらもう一回借りるっていう人が多かったのでみんなで解読を試みたんですけど全くできなくて。この

本が気になりすぎて仕事に集中できない人が続出してるので早めに解読して仕事にみんなを集中させたいん

ですよね」


それ俺たちにできると思ってんの?解読って結構難しいでしょ。この頭お花畑の俺たちにできると思ってる

ん?もう専門家に頼みなよ。


「ということで、頑張ってください」


「あ、ちょまっt」


追人は止まらずにバックヤードから出ていく。


結局、強引に押し付けられてしまった。


「解読って言ったってどうすればいいんだよ」


「私に聞かれても困るよー。はぁ…もっと楽しそうな本の入れ替えとかやりたかったんだけどな」


俺だってそんなふうなやつをやると思ってたさ。でもやらされたのは得体のしれない本の解読…。なんでこ

んな本がこの学校にあるんだよ。普通、読めない本とかって専門機関に送って解読作業進めるんじゃなかっ

たっけ?


文句言っても仕方ないか…。解読法を探そう…。


そう言って表紙を開き、中の文字を読み進めていく。


「?」


何で俺、この字読めてんの。知らないぞ、こんな文字。


試しに一番下にあるフレーズを読んでみる。


「…落ちた天使…依代を求め…彷徨う」そう書いてある。


書いてあることを日本語に訳し、声に出すと愛花が驚き、目を見開かせてこう言った。


「え?信二くんも読めるの?」


「まさか…お前も読めるのか?」


バックヤードが不穏な空気に包まれる。


二人で目を見合わせたあと、何も言わず本に目を落とし、その先を読んでいく。


「天上…監視し…小さき守…仕え…大…下僕達…人間…術…奪…消え…聖天…落ち…彷徨…宿…2つの…共鳴

し…滅」


ところどころ穴が空いていたりすり減っていたが、読めている。


愛花が少し震えながら俺の服をひょいと掴んできた。俺も怖い。今なぜだかわからないがこれが読めている

自分が怖い。


いったい自分は何なんだ?

初めての後書きです。

今回の話はいかがでしたでしょうか。

この物語内での異人の立場を分かるように書きました。

前回までは組織VS生徒会がメインだと思っていた人もいるかも知れませんが、実際は組織&一部の人間VS生徒会です。

ここからどうなるかはお楽しみに。

面白かったら〜☆5を、なにか指摘があれば遠慮なく評価を下げていただいても結構です。直していきます。

それではまた来週。

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