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心奪う略奪者

48章



屋上へ続く階段を駆け上り、奏臣は決戦地へのドアを開ける。


ドアの向こうはいつもの屋上だが、その向こうに捕らえられた異人が集められている。


その数ざっと15人。


その中には小学生ぐらいの子供も居る。


そして肝心の奴らは捕らえられた異人たちの目の前に立っている。


「8分52秒、まぁセーフだね」


手に持ったストップウォッチをポケットにしまうメイク。


もう片方の宮浜は手を組んでずっとこっちを見ている。


「…そいつが今回のお前らの被害者か」


その異人を指さして奏臣は言う。


「被害者と言うか事実を伝えただけだけどね」


メイクはそんなことを言った。


それを聞くと宮浜のほうが奏臣に向かって言う。


「あんた異人を守るとか言ってるらしいくせにあたしとか守れてないじゃん。自分の部下はちゃんと守ってんのに。何?無関係な異人は死んでもいいとか考えてんの?ふざけないで」


宮浜はそう言いながら自分の無くなった片腕を奏臣に向ける。


奏臣はそれに反論しない。


だが


「部下はちゃんと守ってるとかそんなに大層な人じゃないよこの人は!」


代わりに櫻木が宮浜の意見に反論する。


「私の大切な人はそこのディストに殺された!私たちだって何度も死にかけた!確かにこの人は強い。でも!それにも限界があるんだよ!」


その勢いに宮浜が少したじろぐ。


自分の守れなかった大切な人。


彼が殺されたのは守りに来てくれなかった会長のせいじゃない。力が足りなかった私自身のせい。


責任を負うところは違う。


「じゃあ何?私が死ぬのは力が足りない弱虫だったからってこと?」


宮浜がプルプル震え、拳を握りしめながら半ギレで櫻木に聞く。


もちろんその答えは決まっている。


「違う!悪いのは異人を殺そうとするそっちのディストの方だよ!」


メイクを睨みつける櫻木。


しかし宮浜はそう簡単に寝返りはしなかった。


「そう。でもねこっちは私を助けてくれたって実績があるの。だから私はまだそっちに行けないわ」


そこで宮浜が下げた手を勢いよく上に掲げる。


すると


「…左右に避けろ!」と奏臣が叫んだ。


その言葉に従って櫻木は右に咲川と櫻木が避け、左に人爽と奏臣が避けた。


次の瞬間に


ズバッと左右を分断するように何かが学校を切断した。


「…まさかまた分断か」


奏臣が分断された断面に近づき、虚空をコンと叩く。


そこには何故か壁があった。


「さぁガチンコ対決を始めよう」


右は宮浜、左はメイク。


それぞれの敵と生徒会は火花を散らす。


そして戦いが始まった。




「ちっ。こいつ分身にも関わらず私と同レベルだ。これは辛いな」


絶え間なく放たれる分身の斬撃をギリギリのところでかわし続ける幽美。


「早く向こうに行かないと一般の異人が殺されるかもしれない。なにか策…」


戦っている廊下の影で追人は呟く。


このまま足止めされれば人質を盾にされ、会長たちが手も足も出せずに負けてしまうかもしれない。


だが相手は能力に頼っている。


会長から聞かされたがメイクの不死能力以外は完全に消去出来るらしい。


だから屋上に行けば異人とメイクの能力を消去して相手の択を奪い、そのまま事件を解決できるはず。



しかしそう簡単にはいかない。


「あの分身の能力を消去したら勝てると思ったですけど、消したとしても元々の身体能力がバグってたんですよね…」


すぐに屋上に向かうため分身の能力は消去済みだ。


しかし分身はそれでも尚高速で移動し、斬撃を飛ばしたり超人的なことをしてくる。


それでやっと幽美と同レベル。


どうやればここから脱せるか、このままだと時間を稼がれて奏臣は連れてかれ生徒会は半壊してしまう。


いま屋上がどういう状況かはわからないがなるべく急ぎたい。


どうすればいいのだろうか。


「てか、あんたも参戦しなさいよ!私1人じゃ時間が足りない!」


幽美が影に隠れる追人に叫ぶ。


だが


「無理ですって。僕の今の能力は能力の概要を消すだけなのでもうやることがないんです」


今出て行っても出来ることはなにもない。


覚えては居ないが櫻木と黒山と戦ったときはメイクに強制的に強化させられていたから戦えたが今は違う。


そんなことを追人が考えているときにも幽美は分身に紙槍を飛ばす。


しかしその紙槍はきれいに刀で真っ二つに切断されながら逆に距離を詰められる。


しかもその一回で幽美の目の前に詰めてくる。


上からの一撃を幽美が空気を圧縮して刀を受け止める。


そして刀を押し戻した。


「原子レベルの緻密な操作はあと2回が限度…。それまでに」


幽美がそう呟くと今度は自身のスカート裏からナイフを2本取り出し、両手に持つ。


そろそろ片をつけないと本気でまずいかもね。と思う幽美。


そのナイフを右手、左手の順番で投げた。


投げたナイフは物理的に不可能な曲がり方をし、分身を混乱させ上と右の2方向から分身の命を狙う。


だが


スパン。と分身が刀を振るとナイフが2本とも弾き落とされ標的には当たらない。



2本のナイフは地面に落ちる。


「そういえばメイク僕を暴走させたときに悪意がみたいなことを言ってましたね。…もしかしたら悪意が能力の力の指標の1つかもしれない」


あのときメイクが言った「その悪意いただき」という言葉。


力を暴走させたのはメイクの仕業だったが、それが微弱な悪意を何倍にも増幅させる能力だったとしたら。


悪意の量をコントロールすればもしかしたら能力の強化ができるかもしれない。


ただの推測だが。


「悪意ですか…」


正直、出そうと思って出せるものではないとわかっている。


自分は恵まれすぎているからだ。


だがそれ故に思うことはある。


少し違うかもしれないが。


「会長が聞いたら怒りそうですね」


恵まれすぎている自分への怒り。


それが一番追人の思っている負の感情だった。


昔なら信じられなかったが今なら。


消してしまった人たちへの贖罪のため。


全てをハッピーエンドの結末にするため。


全力で悪意を溜め込む。


「この物語は僕たちがバッドエンドから捻じ曲げるんだ」


そう追人が呟くと心臓の鼓動が激しくなる。


やっぱり仮説は正しかったんだな。と追人は安堵しなすがまま胸を手で抑える。


だんだん感覚が鈍くなっていく。


そして


「行きます」


一瞬のうちに分身と幽美の間に入る。


その姿は背中に小さな黒い羽が生え、黒いオーラを放つ姿。


天使と対をなす悪魔のような姿だった。


幽美は驚き動きを止めたが、分身はそんなこと意に介さず攻撃を続行する。


分身が刀を横から薙ぎ追人を一閃する。


しかしその刃が届くことはない。


まるで刃こぼれしたかのように刀が追人で止まったのだ。


「その刀は無効化した」


追人が刀を手で握って言った。


「刀の用途を消した。これでこの刀はもう使えない」


これが新しい力。


能力のみならず物体の内容すらも消せるようになった。


すると幽美がこの機を逃すか、とすかさず紙槍を分身に飛ばす。


分身は刀を握られている。


逃げるため分身は刀から手を離す。


だが紙槍は逃げるスピードより速く分身を狙い撃ちし、体の中心に刺さった。


すると分身はその一撃で生命活動を停止したのかさらさらと粒子となって消えていった。




「もっと本気出さないと負けちゃうよ?」


メイクが奏臣に向かって言う。


奏臣は息を上げ、咲川を守る態勢でメイクを睨みつける。


何かがおかしい。


普段ならば息を上げるなんてことは絶対にないはず。だが怪我自体はすぐに治るため、不死能力が弱体化しているということだろう。と奏臣は考える。


だが答えはわからない。


今はメイクの攻撃を止め続けることしか出来ない。


下手な動きをすれば人質が殺されてしまうかもしれないからだ。


「じゃ、次行くよ」


メイクがそう言うと力を溜めるように構える。


するとメイクの筋肉が膨れ上がってあっという間にムキムキになる。


「…身体強化か。いいだろう受けて立ってやる」


奏臣が言うと彼女も身体強化を使う。


身体強化と言ってもその上位互換の「身体極化」だが。


体がムキムキになることはなくあくまで裏側のステータスが上昇し、同じ姿のままで強くなる。


そしてメイクが最初に踏み込んで奏臣の腹を殴る。


しかしそれを受けても奏臣は動かない。


「…その程度じゃダメージすら受けない」


お返しにメイクの胸元を持って背面に投げつける。


そこには咲川が。


「…やれ!」


奏臣が咲川に向かって叫ぶ。


すると咲川は胸ポケットから玉を取り出し、それを飛んできたメイクに投げつけた。


咲川が投げた玉はメイクにヒット。


その玉は当たった瞬間に爆発し中から黒い粒子が溢れ出してくる。


「まさか破壊の概念!?」




もう片方の決戦。


櫻木が心狂う愛人者を使い、宮浜を狂わせようとする。


しかし宮浜はその概念を生みだした空間で断絶、縮小し概念は跡形もなく消し去られた。


「空間断裂とかめんどくさいね」


櫻木が宮浜に向かって言う。


宮浜自身に概念を弾き返す力はない。一度当ててしまえば勝ちなのだがそれすらも難しい。


櫻木が殴って攻撃をしようとしても宮浜は櫻木の拳と自身の周りの空間を捻じ曲げ止められる。


人爽の洗脳は強化状態ではないため直接触れないと使うことが出来ない。


かなりの手詰まりだった。


「それだけじゃないわ」


宮浜が屋上に手すりへ手を掲げると


バキバキバキ!と大きな音を立てて手すりが外れていく。


そして宮浜がその手を櫻木たちに向かって振り抜くと


手すりもそれに連動するように櫻木たちに襲いかかってきた。


「危ない!」と


咄嗟に人爽をかばった櫻木。


櫻木の体に鉄の塊が何回もぶつかる。


人爽はへたり込んで動けないようだ。


これは確実に空間断裂の能力じゃない。ならばこれは秘術の一種か?と櫻木は鉄の塊を耐えながら推測する。


しかしその推測は間違っていた。


「ふん」と宮浜が手すりを動かしていた方と同じ手を違う規則性で振ると


ドクンドクッ、と一瞬心臓の動きが止まった。


だがすぐに動き出す。


櫻木が「ハァッ!ハァッ!」と荒い呼吸で空気を吸い込む。


それと同時に宮浜も荒い呼吸で空気を吸い込んでいた。


「ちっこれは使えないな」と宮浜は呟く。


櫻木が荒い呼吸のまま「何をした?」と宮浜に聞く。


それに対し宮浜は


「なんか相手の心臓の動きを止めるって能力だったんだけど自分のも止まっちゃうなんてね」と回答になってるんだかなってないんだかわからない返答をする。


そこで人爽は話の違和感を追求する。


「なんてね。ってことは自分の能力を理解していなかったってことですか?」


宮浜は「いい目の付け所だね」と言って後方の気絶させられている囚われの異人たちを指さして言う。


「私の秘術は『心奪う略奪者』。意識を失っている異人の能力をちょいと拝借できる。この能力はそこに倒れているうちの1人の能力」


これが異人と秘術師のハイブリット。


強大な力。


「じゃ、まだまだ行くよ」


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