戦力
47章
ドアの外は一般人が無数に居て出られない。以前ショッピングモール似たような状況に鳴った時は幽美の能力を使って一般人を拘束したがそれも数が多すぎて使えない。
櫻木と牙忍の能力は一般人に危害を加えてしまう。
咲川の能力はそもそもこういう用途では使えない。時間をかければ睡眠薬など作れそうだが時間をかければこのドアが破られる。
牙忍が「会長何とか出来ませんか?」と聞いてみたが、
「…無理だな。メイクも私が何も出来ないことを知っているからこそこの作戦を選んだはず。メイクは私と同一個体だ。私が出来ることも全て知っている。抜け目などないだろう」
と言い切られた。
この生徒会室を見渡してみても使えそうなものは何もない。
こっちのカードは全て相手に読まれている。情報は戦いにおいて最強だとはよく言ったものだ。
メイクは相手のカードを全てこの作戦で無効化してきた。
完全な負け試合だ。
奏臣がメイクが全てを読んだ上で攻撃を仕掛けてくると読んでいなければ。
奏臣が窓を見ながらニヤリと笑ってその後振り向く。
人爽の方へと。
「…だがイレギュラーならある。お前の出番だ。人爽」
その言葉に人爽は「わかりました」と答えるとスタスタとドアに向かって歩きだした。
人爽の能力は人とその人物の思考を操ることが出来る能力。
ショッピングモールの時はメイクにその能力を強化されていたが、今回はまた違う。
元の彼は30人程度の人間を操ることが出来る。
だが外に居る人数は30人をゆうに越している。
普通ならばこの窮地を脱することは出来ない。
普通ならば。
メイクが持っている能力は同一個体である奏臣も持っている。
さらに能力のポテンシャルは彼女のほうが上だ。
能力名「能力進化」。
これはメイクのような寿命を吸い取るデメリット効果はない。ただ体への負担が大きいだけだ。
10分も使用すれば体が壊れてしまう程度に。
今はそれだけで十分だ。
「洗脳神技」
ドアを開け放ち人爽はそう言った。
言葉と同時に外の人間が一瞬にして静まり返る。
ドアの外は完全に動きが止まった一般人たちが奏臣たちに道を譲るように真ん中を開け2つに分かれて立っていた。
「行きましょう」
振り返って人爽が言う。
そのまま生徒会は部屋を出て人が居ない場所へ進んでいく。
切り札の彼を探すために。
「えー…。まさか人爽を部下に引き入れてるなんて。やっぱりあの人の頭脳は私じゃ超えられないかー」
屋上のタンクの上でメイクが言う。
あいつは私が能力を奪い取ったことで昏睡状態に陥っていたはず。
まさか科学的にあいつを起こしたのか?それが出来るのはあの子供の科学者しか居ない。
「どうするの?あなたの言うとおりにしてれば私を助けてくれるんだよね?」
屋上入り口から短髪の女がメイクに聞く。
本名、宮浜空。元異人。現異術師。
「わかってるって…。今考えてんの」
今回の計画にはこいつが必要だったから条件を付けてこっち側に引き込んできた。
秘術を覚えさせれば強力な兵士になる。
さらに今回は空間断裂という結構万能な能力を持ってきてくれた。
これがあればあの人の攻撃も少しは防げるだろう。
こっちにはそれにプラスして異人という人質も居る。
負ける要素は無かったのだが。
「まだ異人が足りない。異人を集める時間をあいつらに稼いでもらおうと思ってたけどさすがに早すぎる…」
人数が多ければ多いほど守るために生徒会は戦いづらくなる。
計画が1つ狂う。
だけどまだ許容範囲内。
「とりあえず待つしかないねー」
図書室を訪れる生徒会。
そこに着くまでは人爽の能力のおかげで苦労せず来ることが出来た。
図書室に着くと奏臣は能力進化を切る。
これ以上は限界らしい。
ここに来た理由は1つ。
居るはずの彼を探しに来た。
「おーい居るかー?」
あの窮地を脱出したとはいえ、メイクにはまだ勝てる見込みがない。
だから勝つためにはあいつが必要なのだ。
「はーい少し待ってくださいねー」
図書室の奥の部屋から声が聞こえてきた。
そしてガチャとドアが開く。
出てきた人物は何冊か本を脇に抱えている。
「僕に何か用ですか?生徒会さんたち」
出てきたのは追人だ。
あの空間から助け出した追人はまたこの高校で過ごしている。
あまり変わらない生活を過ごしているらしいがそれがいいらしい。
「…メイクがこの事件を引き起こした。勝つためにはお前の力がいる。手を貸してくれ」
奏臣が追人に言う。
追人は本のバーコードをリーダーでパソコンに読み取らせながら言う。
「メイクですか。あの人ならかなり恨んでますし、協力してもいいですよ」
読み取った本を持って本棚へ移動する。
「でも1つ条件があります」
本を1つずつ本棚へ置いていって最終的に奏臣の目の前に立つとその条件を話す。
「僕も生徒会に入れてください」
条件はそれだった。
奏臣の前を通り過ぎて奥の本棚に本を置きに行く。
そしてゆっくりと本を本棚にセットしながら追人は言う。
「僕もここ最近結構な人数のディストのやつらに襲われてるんですよね。それも刺激的で面白かったんですけどさすがにめんどくさくなってきまして。それで生徒会という後ろ盾が欲しいんです」
全ての本をしまい終わるとまた奏臣の前に立つ。
異人狩りを返り討ちにし、過ごしていたがその暮らしを止めるために生徒会に入って襲ってくる人数を減らそうというものだった。
「…だが生徒会に入ればもっと危険な目に合うかもしれないぞ」
奏臣が確認を求めるように聞く。
「もちろん承知の上です。ていうかこのままで居たら僕の存在を幹部レベルが聞きつけて同じぐらい危険な目に会いますよ。どっちにしてもです」
あっさりと追人は言う。
やはりこいつの状況判断能力、危機管理能力はすばらしいな。と奏臣は思った。
「…わかった。承諾しよう」
奏臣はそう言うと手を追人に差し出す。
もちろんその手を追人は握り、そして奏臣は握り返す。
「…さて早速仕事だぞ」
手を離して奏臣は言う。
待ってましたと言わんばかりの表情で追人は
「仰せのままに」と答える。
標的は屋上。
メイクとディストと手を組んだ異人。
万全の状態で彼らは走って向かう。
異人の救出へ。
「あーやばい。追人くん連れてこられちゃうなこれ」
屋上のタンクの上で奏臣と視界をリンクさせたメイクが呟く。
あの子素でおかしい能力持ってるんだよなぁ。あの子が居たらこの計画結構成功率が下がっちゃう。
かといってあの子を退けさせる手段もないしなぁ…。
「なにか問題でも出来た?」
下から短髪の異人、宮浜がメイクに話しかける。
それにメイクはタンクから屋上に飛び降りて
「問題も何も大問題だよ」と言う。
宮浜が詳細情報を欲しがったのでそれを話してやる。
「ということはその男の子は異人の能力でも秘術でも何でも実質無効化出来る能力を持ってるってことでいいのね?」
そうだね。と相づちをするメイク。
「でも自分より高位のものは無効化出来ないようになってるはず」と情報を付け足す。
それを聞くと宮浜はうーんと頭をひねる。
そして何かを思いついたように捕らえている異人たちの元へ歩き始める。
「何か案でも出来た?」
メイクがそう聞くと宮浜は
「えぇ」と答える。
「私の秘術を使う」
何を言ってるんだこいつ。
「聞いてなかった?あの子は秘術も消せるんだよ?」
メイクは思わず聞いてしまったが宮浜の顔は変わらない。
一体こいつは何をしようとしているのか。
屋上に通じる階段へ向かい、生徒会は廊下を走る。
廊下はさっきまで賑わっていた祭りの跡が残っていて、床に紙類が散乱している。
今は誰もおらず走る音だけが聞こえるほど静かなものだが。
この事件に巻き込まれた人たちは体育館に移動させ安全にしている。
あまり一般人を怖がらせたくはないが、見張りに牙忍を向かわせ一般人や生徒の争いが起きないようにして
いる。
牙忍が居なくて大丈夫かと聞かれたらわからないが、仕方ない。
ここに居る異人でやるしかない。
そうして廊下を走っていると
突然、天井が勢いよく崩れ落ちてきた。
奏臣は咄嗟にその瓦礫を空気を圧縮して強靭な壁を作り、半数を受け止める。
しかし半数は受け止めきれなかった。
ガラガラと瓦礫が道を塞ぐ。
しかもその瓦礫は奏臣と咲川と人爽と櫻木。幽美と追人になるように分断してしまった。
完全に道は埋まっていて進むことは出来ない。
やばい、と奏臣は慌てて瓦礫を変換し始める。
しかし瓦礫の量が多く一筋縄ではいかない。
そんなときに校舎内アナウンスが聞こえた。
「えーこほん。生徒会のみなさーん。あと十分以内に出頭しないとここにいる異人全員殺し始めますよー」
という放送がメイクの声で聞こえる。
「…くそっ」
この瓦礫をどかすのに少なくとも十分はかかる。かといって壊すと言ってもその方法は全て周りに居る部下を傷つけてしまう方法。
このままじゃ…。
「会長!とりあえず行ってください!」
向こう側から追人の声が響いてきた。
「僕たちもあとからすぐに向かいます!僕の力が必要ならそれまで耐えていてください!」
追人はそう言う。
奏臣たちが居る方は屋上に近い方。今から向かえば間に合う。
だが耐えれるかは全くわからない。
「追人は私が責任を持って届けます!なので行ってください!」
今度は幽美が瓦礫の向こうから叫ぶ。
ここまで言われたら信じるしかない…。
奏臣は振り返って言う。
「…わかった。待ってるぞ幽美、追人」
そしてそのまま屋上へ向かい始める。
足音で会長たちが向かったことを確認すると2人も振り返って別の道を探しに行く。
急いで探すために走っていると、
ガッシャン!と彼らの進行方向の窓から廊下に何かが降ってきた。
それは長いストレートの髪、整った顔立ち、着こなした制服。
見たことしかない姿だった。
「主の命によってあなたたちを抹殺いたします」
普段聞いている声と全く変わらない声でそいつがそう言うといきなり廊下の床が真っ二つに割れ始めた。
裂け目に落ちないように2人はそれぞれ反対側に乗る。
それを行った彼女は。
「分身体ね。会長のを見せてもらったことがるからわかるわ。ほんとに瓜二つよね」
メイクの分身体を見ながら幽美は言う。
分身体は次の攻撃のため、床に落ちていたガラス片を持つ。
もちろんガラス片は鋭利なため持った手からは血が溢れてくる。
「やるしかないようですね」
追人がかがみながら言う。
「えぇそうね。幸いスペックは本体より低いみたいだから、メイクの分身なら私たちでも勝てる希望はある」
そして次の瞬間にはもう激突していた。




