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46章



普段より賑やかな学校。


明らかに生徒ではない人間が何百人と学校を出入りしている。


老人、中年、若者、子供など種類はさまざま。


それは今日が文化祭当日だからだ!


いつもと違って飾り付けられた学校。生徒たちも今日だけは勉強は休み全力で楽しむ。


店で仕事を楽しむ。自由時間に他のクラスの店を回って楽しむのも良い。


そして文化祭の醍醐味。


それは


「やっぱり甘いものですよねぇ…」と頭にお面、右手にはチョコバナナ、左手にはわたあめ。完全に文化祭ではなく夏祭りの格好で咲川が言った。


「…甘いものは程々にしろよ」


奏臣が咲川に注意する。


「会長も言えませんけど?」


しかしその注意に幽美がさらに注意する。


その通りで奏臣も腰にミルクティーを装備し、さらに両手ソフトクリームを装備。


あんまり咲川と変わってない様子。


「…私は別に食べたいというわけではなく調査の一環だ」


といつものトーンで言うが「いや説得力ないですから」と幽美に一蹴され、左手のソフトクリームを強奪される。


それに奏臣は何も反応しなかった。


そして幽美はそのソフトクリームをぺろっと食べる。


普通に美味い。と幽美は思った。


この学校の文化祭はレベルが高い。なので外からくる人たちも相当に多い。


それによりトラブルも多い。


トラブルを防止するために奏臣があらかじめこの街の危険人物と異人をリストアップし、それらの人物がこの文化祭に入ると生徒に扮した奏臣の分身が尾行するようになっている。


分身とは言っても見た目は奏臣とかけ離れているため何人も奏臣がいるという事態にはならない。


その人物がトラブルや事件を起こしそうになると分身がそいつを誘導して外に連れて行く、または抑え込むという対策だ。


もちろんトラブルや事件を起こさなければ分身が動くことはない。


考えうる限り最高の対策だ。


そして校舎内も自由探索の奏臣の分身がパトロールしている。


これはテロ対策とトラブル対処を目的としている。


文化祭を成功させるため。


あくまで奏臣はこの学校の生徒会長だ。生徒のために行動を起こすことも業務内容に入っている。


この包囲網を抜けることができるのはほぼいない。


ただ方法が1つある。


これができるのはディストの人間だけ。


「…それは仕方ないな」と奏臣は呟く。


分身を大量に作り、それを制御していてかなり脳の負担がかかっているが、それをおくびにも出さず普段の顔をキープし、冷静に振る舞っている。


これもこの学校と異人のためだ。


「そういえば牙忍は今お店ですか?」と咲川が聞いた。


それには幽美が「そうですね。きっと人を驚かしてますよ」と返した。


すると突然気配を感じた。


気配の方を確認すると人混みの中から誰かがかき分けてこっちへ向かってきていた。


そしてすぐに顔が見える。


「…人爽か」


新しい生徒会のメンバーが手にフランクフルトを持って走ってきた。


もちろん笑顔で。


「ここの学校の食べ物美味しいんですね。もう10本食べちゃいましたよ」


人爽がお腹をさすって言う。


さすがに食べすぎだろ。とその場にいる全員が思った。


「…楽しんでるか?」と奏臣が聞く。


それにも満面の笑みで人爽は「もちろん」と言った。


奏臣は彼がとても苦労していたことを知っている。だからこの笑顔がとても価値のあるものだとわかる。


今ぐらいは好きなようにさせていいだろう。


ずっと我慢してきただろうから。



「はぁ…。俺も店回りてぇ」


おもちゃナタを持ちお面を付け体にスズランテープを無数に貼り付けた衣装を着た牙忍がお化け屋敷の物陰

に隠れて言う。


衣装係と小道具係は当日自由行動らしい。なのでここにいるのは虚しくも当日作業となったお化け役と受付係しか居ないというわけだ。


一応、お化け役はローテーションで今は数人しか居ないが外に出ているお化け役もいる。


悲しきかな。


今までに何人か客は来たが、人数はかなり少ない。お世辞にも繁盛とは言えないレベルだ。


お化け屋敷なんてこんなもんなんだろうか。


「やっぱり飲食店のほうが人気出るよ。こっちとしては仕事少なくていいけどね」


同じお化け役のクラスメイトが言った。


その通りだな。と牙忍は思う。


だが仕事が少ないとはいってもそれはそれで悲しいものだ。


「ま、のんびりやってこうぜ」


クラスメイトが牙忍に缶コーヒーを渡して言う。


牙忍はそれを受け取って「そうだな」と返す。


あと数分で入れ替えの時間だ。そうすれば俺も外に出て文化祭を満喫できる。


そこで受付から連絡が来た。


「2名様入りますー!」


どうやらお客さんが来たらしい。


「外出たらあいつらと合流しなきゃな。あと少し頑張ろう」


そう言って牙忍は側にあった明かりを消してお客さんを驚かす準備をするのだった。




校庭の飲食ベースに座る二人組。


やはりこの文化祭は静かに終われないようだ。


「そろそろ始めよう。私たちの祭りを」


腕と足を組んでとても偉そうにしている長髪の女が言う。


目の前のテーブルにはタピオカミルクティーが置いてある。


対面の短髪の女はそれにコクと頷き、飲んでいたいちごミルクをテーブルに置く。


その女は片腕がなかった。


そして言う。


「空間断裂」


ディストは異人と秘術の関係について今までより詳しく調べた。


理由は異人であり、秘術師でもあるライやメイク、そして櫻木が普通よりはるか上の力を持っているからだ。


メイクは普通なら奏臣と戦っても相打ちにも勝つこともない。それはメイクの能力が奏臣の弱体化版になっているからだ。


しかしそれに秘術を加えるだけで相打ちを取れる程に強化される。


そしてライと櫻木は秘術を習得した途端、概念を扱えるほどに強大な力を使うことができる。


ここに何か関係があるのではないかと考えたのだ。


結果、異人と秘術は同じエネルギーから力を発していて、そのエネルギーの量が異人の量と秘術の量で増えるから力が強くなるという研究結果だった。


この結果から異人を秘術師にすれば強力な兵士を作ることができるという新しい方針が作られた。


この短髪はその第一号。


試験的に異人であり秘術師であるものを総称「異術師」と呼ぶことにした。


そして櫻木も異術師に該当する。


もちろんこの短髪も異術師。


これから事件を起こすのは彼女だ。



その瞬間、校門前が騒がしくなった。


何か空いてるはずの校門で人が詰まっている。


その異変に気づいた奏臣はすぐに校門前に移動する。


それに続いて牙忍たちも付いてくる。


「なんか壁あるくね?」


校門前に居た誰かがそう言った。


奏臣は確認するため空いている校門を手で押さえる。


するとなにか壁があるのを感じた。


感じたというのは何故かそれが見えないからだ。


しかもこれは…。


「何かあったんですか?」


牙忍が壁に触れたままの奏臣に聞く。


奏臣は壁から一度手を離し、振りかぶって思い切り壁を殴る。


しかし壁はびくともしない。


「…やられた」


奏臣はそう呟いた。


「やられた?ってどういうことですか?」


今度は咲川が聞いた。


それに奏臣は険しい表情で


「…閉じ込められた。おおよそディストの仕業だろう」と言った。


しかもこれは秘術じゃない。異人の能力だ。


メイクの能力なら私が干渉できる。


だがこれは違う。


メイク以外の能力だ。


そこで奏臣は思い出す。


異人の行方不明情報にあった1人の異人の能力を。


その能力名は空間操作。


概要は透明な仕切りを生み出して空間を分ける能力。


だが調査時点ではその仕切りは部屋の大きさ程度しか作れない。この事案を起こせるほど強力な力じゃないはず。


「…ディストか」


そしてディストに所属しているメイクの仕業と考えて確定だろう。


ここにいる異人を殺すつもりか。


そう奏臣が考えると突然に学校のスピーカーから声が聞こえてきた。


奏臣と全く同じ声。


メイクだ。


「えーマイクテストマイクテスト。こほん。やっほー!私たちはディスト、異人を殺すために結成された組織。ここに異人がたくさんいるっていう情報を聞きつけて抹殺しに来ました!もちろん一般人には手を出さない。私たちが要求することは1つ!周りにいる異人を屋上に連れてきてほしい!異人の人数が20人を越したらここから開放してあげる。それだけ!じゃ頑張ってね!」


そう言うとスピーカーからブツリという音が鳴って声が消えた。


数秒全員が黙りシーンとした。


一呼吸置いてある男が言った。


「出てこいよ!居るんだろここに!」


その声を皮切りに周りの一般人たちも騒ぎ出す。


中には「お前異人だったよな?」という裏切りの声も聞こえる。


その声を聞くと周りの人間がそいつを囲み、罵倒し強制的に連れて行った。


その様子は地獄だった。


奏臣の頭に昔の記憶が蘇る。


頭を抱えてうずくまる奏臣。


「大丈夫ですか!?」


人爽がうずくまる奏臣の背中を擦る。


だが奏臣の顔色は悪い。


パニックになる一般人の中、走ってくる男の姿があった。


「いたいた!おーい」


そいつは牙忍だった。


牙忍は奏臣の元へ来ると


「やっと仕事が終わったんですよ。でさっきのやつなんなんでしょうかね。え、会長どうかしたんですか!?」

と言った。


人混みのせいで奏臣はうずくまっているのがよく見えなかったのだ。


牙忍が小声で背中をさすっている人爽に「どうしたんだ?」と聞いたが人爽も「わかりません」と答えるばかりで何もわからなかった。


すると突然にスッと奏臣が立ち上がって「…なんでもない」と言った。


その言葉に少し心配を覚えつつも、奏臣が手招きをして校舎内へ歩いていったためそれに生徒会メンバーは付いていく。


その後ろで長髪でタピオカミルクティーを飲んだ女が彼らを見ていたが、その姿に生徒会は気づかない。


「…単刀直入に言う。これはディストと手を組んだ異人の仕業だ」


校舎内を通って、生徒会室に入り奏臣は言った。


その顔は険しかった。


「異人の仕業ですか?」


咲川が首を傾げてそう聞く。


「多分私みたいなやつですよね」と人爽が自分の胸に手を当てて言う。


しかし首を横に振った奏臣は「…まだ詳細はわからない」と苦笑いをした。


メイクが放送をした以上、ディストが絡んでいるのは確定事項だが何かがおかしい。


「確かに文化祭なら人が集まるので異人を抹殺できるかもしれませんね」


幽美が悩みながら言う。


しかしそれにも奏臣は首を横に振って「…それもわからない」と言う。


もともとディストは異人のリストを持っている。それには住所も職業も全て書かれていてプライバシーなんて存在していないようなものだ。


それを見れば異人がどこに居るかはわかるし、わざわざこんな風に異人を差し出させるようにする必要もない。


となれば奴らの狙いは。


「…1つだけ予測できたことはある」


そう呟き、ゆっくりと言う。


「…これは私たちを殺すための作戦だ」


異人を差し出させてそれを人質に取る。人質を取られれば迂闊に能力は使えないし、もし奏臣が時間を止めたとしても相手にはメイクが居る。メイクは時間停止に干渉できる能力を持っている。これは時間停止能力の下位互換だ。


「それじゃあ。私たちがここに居る異人を巻き込んだってことですか?」


幽美が恐る恐るといった感じで聞く。


それに奏臣は暗い顔をして「…あぁ」とだけ力なく言う。


この時間にも異人は屋上に集められている。


そしてここでさらなる追い打ちが。


外からドンドンと大量のノック音が響いてきた。


その数は無数に。


そして同時に怒号も。


「そこに居るんだろ!出てこいよ!」


全く声は知らない。おおよそ一般人だろう。


「なんですかこれ!?」


咲川が叫ぶ。


すると牙忍が外を見て何かに気づいた。


「みんな!あそこを!」


そう叫ぶ。


その声を聞きつけて全員が窓から外を見ると


そこには指名手配書風の紙が何百枚も地面に落ちているのが見えた。


そしてそこには顔写真付きで


『奏臣真子、牙忍隼、咲川白音、幽美聖奈、櫻木愛花。彼らを屋上に突き出したものには日本円1000万を贈呈する』と書かれ、ご丁寧に生徒会室の場所まで書かれている。


「…これも計画通りか」


苦しそうに奏臣が言う。


まだ扉の外から怒号と扉の叩く音が鳴り止まない。


この扉も特別製とはいえ長くは持たない。


時間をかければ一般人に捕まり、屋上に連れて行かれる。一般人は傷つけられない。


異人を助けるために屋上に行けば異人を人質に取られて何もできずに殺されてしまう。


結果は1つへ収束される。


これらもすべて彼女の手のひらの上。

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