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キョウキ

37章



櫻木は今起きていることが全くわからず混乱していた。


フランマが2人存在していて何故か1人が黒山の後ろにスタンバっていたこと。そして何故かロストが繰り出

した玉が跳ね返ってロスト自身に当たったこと。


そして玉が当たった瞬間ロストが元の追人に戻ったことだ。


追人が戻ったのを確認した黒山とフランマがハイタッチしている。


「信二くん。一体何が起きたの?」と櫻木が喜ぶ黒山の袖を引っ張りながら聞いた。


黒山は「ん?」と言って、そして意気揚々と解説を初める。


「結論から言うと追人はもうメイクの支配下から脱却した。それはあいつ自身の力だ」


「あいつ自身の力?」


櫻木が復唱して聞く。


「おう。あいつの能力で追人に干渉してたメイクの能力を無効化したってこと。でそれをしたのは俺たち。

あのとき追人が発射した玉は俺たちじゃ打ち消せない。逆にそれを利用して相手側に跳ね返したってこと

だ」


櫻木が「でもそれじゃあフランマはどうして2人いるの?」と聞いた。


それには「あぁあれは炎幻だよ。そう見せてるだけ」と言うと、メイクを監視していたフランマの姿が朧気

になり消えた。


「要するにダミーだな」と簡単に説明した。


「結局、相棒は考えただけで何も行動はしてないんですけどね。普段の勉強もそれぐらい頭を柔軟に使った

らどうですか?」


煽り気味にフランマがため息をつき、言う。


「うっせ。それが出来てたら苦労はしないんだ」


黒山がそう返す。


その様子を見て櫻木は


羨ましいと思った。


まさに一心同体の関係でお互いの長所と短所を補い合う関係。


自分はどうか。


一心同体ではないし、信二くんと同じ能力を使って長所も短所も一緒。弱点を突かれれば一瞬でやられてし

まう。


「でもお前のおかげでもあるんだぞ」


黒山が櫻木に言った。


櫻木は黒山の目を見る。


「お前の身体神癒が無かったら絶対に死んでた。ありがとな。俺は本当に何もやってないよ」


あのときと同じ優しい声で言う。


だがそれだけじゃ足りない。


フランマと同じように信二くんと一体化したい。フランマと同じように信二くんと秘密の会話をしたい。


もっと一体にもっともっともっともっと知りたいもっともっともっと愛したいもっともっともっともっと助

け合いたいもっともっともっともっともっと話したい。


邪魔者さえ居なくなれば、私がもっと力を得れば、もっと狂えば…。


…もっと…一緒に…イラレル?




「いやぁ…してやられた…」


メイクが起き上がった。


それに気づくと黒山たちは警戒態勢になる。


「監視されてたのはわかってたけどまさかそれが幻影なんて」


しかしメイクは攻撃する様子もなく体についた埃を払いながら言った。


そして学校を見上げる。


「もうこの世界も消えるようですね」


それを聞いた黒山たちも学校を見ると校舎にザザザと砂嵐が反映されてるのが見えた。


これは追人を救ったことによる試練の終了を示していた。


学校だけではなく地面もザザザとホログラムが消えていくようだった。


「じゃ、また」


そう言うとメイクはザザザとホログラムと一緒に消えていった。黒山が「おい待て!」と叫んで手を伸ばし

たが間に合うはずもない。


「逃したー」


「仕方ないですね。第一今の疲弊した状況で戦っても勝てませんよ」


2人はそんな話をした。


この間にも世界はホログラムに変わっていく。


「そういえばこれ試練だって言ってたけど俺は一体どこが成長したんだ?」


トラブルが有りすぎてもはや試練ということを忘れていた黒山はそんな事を言った。


最初はなにかわけわからない場所から始まって、記憶なくしてライと戦って、最終的には暴走した追人と戦

ったり、何が本当の試練かわからない。


「どこが成長したって信二くんが一番わかってるんじゃない?」


櫻木が黒山に向けて言う。


「そうかぁ?」と黒山は疑いの声を漏らす。


櫻木はニコっと笑って

「だってフランマっていう能力についてわかって、使いこなしてたじゃん。そのおかげで追人に勝てたんだ

し!」


「はっ」と、その言葉を聞いてなんとなくわかった気がする。


これは新しい能力を手に入れるための試練なんじゃない。自分をよく知るための試練ということか。


「確かにそうだな」


黒山はそれで納得する。


そしてこの世界は完全にホログラム化し、黒山たち以外全てがなくなった。


最後に「finish」と聞こえ、同時に意識も落ちて闇に落ちていった。




「狂気確認。削除。…失敗。失敗要因スペック不足。代替措置。異能付与。異能力種『秘術』。名『心狂う

愛人者』。付与開始。完了」


櫻木が「自分を知るための試練」と言った。しかし彼女にとっては違った。


彼女の望みは黒山と一緒にいること。


叶えるために、この試練は力を与えた。


それがどんな結果になるかも知らずに。


所詮プログラムなんてそんなものだ。


自分で考えることなんて出来ず。決められたレールの上しか走れない。


しかしこれは人間にも同じことが言えるのではないだろうか。


運命というレールの上をただひたすらに進んでいくだけのこと。


そしてそれを超えることができれば人間を超えたと言っても過言ではない。


まぁ普通の人間には超えることなんて出来ないのだが。そもそもの話、人間の体が持たないのだ。超える力

を持つと体が耐えられずに消滅する。


それが人間の体であればの話だが。




黒山は目が覚めると真っ暗な部屋の中に倒れていた。


何もない狭い部屋の中。


ゆっくりと立ち上がった。


ここで何をしていたかはちゃんと覚えている。


そしてドアを開ける。ドアの向こうから光が漏れてきた。


目の前の光景は見たことがある。試練に行く前に見た光景。ただの廊下だが黒山が出てきた扉と同じ方向に

もいくつか扉がある。


それには牙忍と幽美と咲川が入っているはずだ。


そして


「信二くん!生きてるよね!私たち!」


「あぁ、そうだな」


櫻木が黒山の目の前に現れた。


生きている。


試練の中で死にかけたが生きている。


少なくともこの2人は。


そのとき、もう1つの扉が開いた。


突き当り右のドアだった。


出てきたのは牙忍。


普通の牙忍だった。


しかし顔が完全にやつれている。


黒山が走って駆け寄る。それに気づいた牙忍は涙をブワッと流して


勢いよく黒山を抱きしめた。


その一瞬のことに黒山は混乱したが、それ以上に櫻木が牙忍に対して殺意を抱いていた。


牙忍はすぐに離したが、涙は止まっていなかった。


「な…何かあったのか?」


と黒山は恐る恐る聞く。


それに牙忍は涙を流すことをやめようとしながら


「試練の中で…お前らに見捨てられて殺されかけるっていう体験をしたんだ…」と言った。


いやどんな試練だよ。と心のなかでツッコミを入れる。


牙忍はようやく泣くのを止めることが出来たようだ。


「その時は『あいつらがそんなことするはずがない!』って言えたんだが、時間が経つに連れて確証が持て

なくってな…。それでお前の駆け寄ってくる姿を見たら、そんなこと考えた自分が馬鹿らしく思って同時に

情けなくなったんだ…」


「それでか…」


確かにそれはきつい。


俺もそんな夢を見せられたら正気じゃ居られないだろう。その場はうまく取り繕っても牙忍と同じように悩

んでしまう。


「心を抉る試練だったってことか」


黒山はそう思った。


すると同時に2つの扉が開いた。


残りの2人は消去法で咲川と幽美のはず。2人も試練をクリアして出てきたのかと思った。


そう思うしかなかった。最悪の状況なんて考える必要もなく。


「はーまず1人か…」




真っ暗でかろうじて周りが見えるような空間。


その中に見えづらいが3人の影があった。影は2対1で向き合っていて、2つのうち小さいの方は影の後ろに隠

れている。


「お前は誰だ?」


影のうち後ろに影を守っている影が向こう側にいる影に聞く。


声色から警戒しているのがうかがえる。証拠に周りの雰囲気がピリついている。


聞かれた影は今朝塗ったネイルの様子をじっと確認しながら答えた。


「秘術師、シーラー」と。


そして真っ暗な部屋の壁が砂嵐を映し始め、光を部屋全体が覆う。


目がなれてくると見えてきたのはきれいな青が砂浜の向こうに見え、夕暮れがピタリと止まっている海岸だ

った。


場所変更。


「どうしてここに居る。ここはお前たち組織の人間が来ていい場所じゃない」


2つのうちシーラーと向かい合っている影、幽美聖奈は夕暮れの光に照らされながらシーラーに聞く。


それにシーラーはまたネイルの様子を確認しながら「そりゃ仕事に決まってるじゃん」と冷酷でもなく温厚

でもない普通の声で返す。


すると咲川が


「ここは会長が作った部屋のはずです!試練が終わるまで第三者は絶対に入れない仕組みになっています!

どうやって入ったんですか!」と自身の能力で解析したこの部屋の仕組みについて話し、シーラーに詰め寄

る。


シーラーは


「協力者がいるんだよ。しかもあんたらんところの会長と全く同じ存在がね」と幽美と咲川に指を指しなが

ら話す。


「その子さえいればこの部屋の仕組みを変えることなんて容易いよ」と付け加えて。


幽美は会長と全く同じ存在と言われてもピンとこなかった。


だが咲川はわかっている。


それがメイクだということに。


メイクは最初、私たちと戦ったときから会長のことをあの人と呼んでいたし、倒しても復活するのも会長と

全く同じ。そしてメイクと会長は何やら因縁があるようだった。


決定的なのはこの合宿が始まる前にこっそりと会長とメイクの皮脂片を入手し解析した結果だ。


その結果2人の細胞構成は全く一緒だったのだ。これは彼女たちの能力である不死の力の影響かと考えてい

る。


結果自体は結構前に出ていたが、なにか踏み込んではいけない領域かと思い黙っていた。


しかし今回、シーラーの一言でそれが確証に変わった。


原理はわからないが彼女たちはもともと1人だった。それが答え。


今の最有力説は会長の分身がメイクで何かのバグが起き、体の支配権を奪われた説。


「そっちのちびっこはわかったっていうような顔してるね」


シーラーは体を90度に曲げて咲川を覗き込みながら言った。


だが咲川はびくっひょいと幽美の真後ろに隠れてしまった。


幽美は片手で咲川を守るような体制を取ると「なんにしてもお前はここで倒す」とシーラーに告げた。


そして


「ここは我の領域」


そう呟いて能力発動準備を完了させる。


シーラーはそれを見て「あぁあなたが生徒会ナンバー2なのね。確か領域内では秘術師を圧倒できるほどの力

があるとかなんとか」と馬鹿にしたように言った。


それに少しキレた幽美は砂浜の砂を変形させる。


形は波。


シーラーを軽々覆うほど大きな波を作り出し、突進させた。


砂は塊であればあるほど威力が強くなる。


迫りくる砂の波にシーラーは


ネイルをつけた指をかざした。


そして唱える。


「不見なる処刑」と。

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