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悪意

35章



「能力が使えないって本当!?」


櫻木が黒山に聞く。


黒山はうなずく。そして試しに壁を殴ってみる。


ゴンと鈍い音が鳴って黒山が拳を戻す。


「能力を使ってればこんな壁壊せる。でも壊せないんだ。さっきお前が階段を飛ばそうとして失敗したのも

そのせいだ」


櫻木は「それって…」と言葉を詰める。


それの答えを黒山が続けて言う。


「十中八九、追人の能力だ」


黒山たちの能力が消され、重い空気が周りを覆う。


そして学校の雰囲気も変わっている。


さっきまでの休み時間特有の広々とした空気が消え、まるで迷宮に入っているように不可思議な雰囲気が漂

う。


「追人を探そう」


黒山はそう言って階段を上る。


さっきまで追人は図書室に居た。そこにいるかはわからないがひたすらに探すしかない。


後ろから「待ってよー…」という櫻木の声が聞こえる。


黒山はめんどくせぇなぁと思い、少しスピードを緩める。


櫻木が追いつくと「さっさと行くぞ」と言うと櫻木の手を黒山が取って走る。肝試しの時みたいに高音を櫻

木が出しているが黒山は気にせず走り続ける。


ふと周りを見渡すとさっきまでいた普通の生徒たちの姿がなくなっていることに気づいた。


「俺たちが真相に気づいたから必要がなくなったってことか…」


黒山は独り言のように言ったがその言葉に反応するように黒山でも櫻木でもないもう1つの声が響く。


「残念。違うんですよねこれが」


その声と共に黒山の走る正面に誰かが横の教室から現れた。


黒山はブレーキをかけて止まる。


現れた人物は、長い黒髪。きっちりと着こなした制服。どこから見ても美人だと思わせる容姿。


だが雰囲気が会長ではないあの人物だ。


「まさかメイクお前もここに居たのか?」


黒山はメイクに聞く。


それにメイクは「実はこの合宿に最初からいたんですよ?気づいてないようですけど。肝試しの時もあの人

のふりして混じっても気づかないんですもん」と笑いながら言う。


まさかあれがメイクだったのか!?少し違和感を感じていたがそれが答えか。


「そしてここに居る異人。確か追人でしたっけ。それが結構めんどくさそうって話をライとしてたので消し

に来たということ。そしてそれに君の試練を使わせてもらったよ黒山君」


「…俺を…利用しただと…?」


黒山はメイクをにらみつける。


そして


「フランマ!」と叫んだ。目の前の敵を倒すために。


フランマは黒山の意識と同化し、黒山はフランマが持つ炎の力を得る。


黒山は炎槍を生み出し、右手に持つ。


こいつだけは絶対に許さない。異人を抹殺するということ自体で怒っているがそれに自分が利用されたとい

うことにも怒っている。


手加減はしない。


幸いにしてそこまでメイクとの距離は空いていない。一歩踏み出せば炎槍はメイクに届く。


そうと決まれば話は早い。


黒山は一歩を踏み出し、炎槍をメイクに向かって突く。


「そんなものが当たると思ってるの?」


メイクは嘲り笑うような口調で自身に飛んできた炎槍の根元をがっしりと掴む。


その根元部分も炎でできているが躊躇もせずに掴み、それを黒山ごと右に投げる。


体を持っていかれるような衝撃を受けた黒山は炎槍を切断し、鏃の部分だけが壁にぶつかった。


メイクは「ふーん」と前方に残っている先端のなくなった槍を見て言う。


しかしそれが狙いだった。


「炎槍!」


黒山がもう一度叫ぶ。


すると先端がなくなったはずの炎槍の先端が元に戻った。いや元に戻ったではない。少しだけ先端が伸びた

のだ。


すると伸びた炎槍の先端は延長線上にいたメイクに炎槍が刺さり、貫く。


そして


「炎滅槍突!」


炎滅槍突は炎槍の周囲を囲うように何十本もの極太炎槍を生み出し、本来ならそれで相手を刺す槍技。


だが今はすでに刺さっている状態。その場合は元々あった体の部位は強制的に潰され極太炎槍が生み出され

る。それはすなわち。


ぐちゃと鈍い音を立ててメイクの体に何本もの炎槍が刺さり、鮮血が噴き出る。


そして黒山は槍の持ち手をハンドルのように変換し、持つ。


それをメイクごと思いきり回す。


メイクの体がぐちゃぐちゃぐちゃと音を立てて千切れる。千切ることができなくなるとメイクの体は炎槍に

刺されたまま回転する。


「うぉぉぉぉぉ!」


黒山はそのまま走り出す。壁に向かって。


メイクは千切れかけた腕で刺さった炎槍を持ち引き抜こうとするが深く刺さりすぎて抜けないのと強制的に

ねじ込まれて生成されたため完全にはまっているため抜けない。


「これで終わりだ!」


壁に衝突する。


メイクの体に押し込まれた炎槍がさらに深く刺さる。そして炎槍の先端が壁に突き刺さり、メイクの体はが

っちりと固定された。


ショッピングモールの時にメイクが黒山にやったことだ。


固定された炎槍から手を放して黒山は一歩後ろに下がる。


「相手が不死なら動きを止めることだけが有効打だ。お前のやり方をパクらせてもらったぜ」


黒山はメイクに話しかける。


メイクは固定されながら答える。


「いい記憶力してるね。これは一本取られたー」


死にかけで絶体絶命な状況なのに呑気な声で言うメイクに黒山の本能的な何かが危険信号を発していた。


なぜこいつはまだ余裕そうにしているのか。


「でもそれは人によるんだよ」


メイクがそう言った瞬間、炎槍が形を失ってぼろぼろと崩れていった。音はなく床に落ちる前に炎槍は消え

てなくなる。


そして刺されて穴が開いたはずのメイクの体が元に戻っていく。少し経つと体は完全に修復され、メイクが

失った服の縁をなぞると服も再生され最終的に最初の状態に戻った。


黒山はまた戦闘態勢に入る。


しかしメイクは手で黒山を止めるような仕草をする。


「そういえば君にはあの人の昔話をしたんだっけ」


メイクは黒山に聞く。


「あの人の昔話?」と黒山の後ろまで走ってきた櫻木が話を聞いてはてなという表情でメイクを見る。


黒山は「一応聞いたが、信じてないぞ。お前が信じるか信じないかは自由だって言ったんだからな」とメイ

クに返す。


それにメイクは「あれ一個だけ嘘だよ」と言った。


「一個だけ?」と黒山は人差し指を一本立ててメイクに聞く。


そうそうと言った感じでメイクは頷いた。


「実は私ってあの時現実に存在してなかったんだ」とメイクは言う。


しかし黒山は意味が分からず何も言葉を発せなかった。櫻木はまず前提の話を知らないため話についていく

ことすらできない。


「私は元々あの人の中に居た副人格。でもあの時に分かれて今の体になったんだ」




友達と共にトラックにひかれて友達だけを無くした事故の時、私はあの人の中で生まれた。


最初はあの人を正当化するためにね。


でもあの人ってこういう命がかかってることになると頑固じゃん?私の存在意義って何?って逆に考えさせ

られたよ。


結局、私があの人の悪意を貰って、残った善意があの人。そんな感じだったかな。


私のほうが憎いもん全部ぶっ殺しちゃえってそそのかしてそれをあの人が却下する。毎日がこう。主人格が

体の制御持ってるから私にはどうしようもできなかったんだよね。


でそのまま数年が過ぎた。その中で起きたことは黒山くんに話した通り。櫻木さんはあとで聞かせてもらっ

てね。


でまた事件が起きた。


友達だと思ってた子が裏切ってあの人を車に轢かせて殺した。


そこが私たち双子の分岐点。


今回ばかりは相当ショックだったみたいで精神世界での私の声掛けに少し揺らぐようになってたんだ。だか

ら私はささやきまくったよ。それが私のやりたいことだったからね。


殺せ。消せ。人間は悪だ。って感じで誘ってた。


でも最後の砦がぶ厚くて、なんとか耐えている感じだった。だから私は強制的に力を使わせようと主導権を

強奪しようとした。今回ばかりは本気で。


それをあの人はかろうじて止める。


そして


強大なエネルギーと強大なエネルギーがあの人と私の体の中で激突し、それに耐えられず暴走が始まった。


周囲にある建造物すべてを無に変換。生きているものから命を奪ってそれも無に変換。そして空気を操って

爆散させ、地形すらも破壊した。


それがあの土地。


で、ここからが本題。


暴走したエネルギーに取り込まれたあの人と私はまだ生きていた。死ねるわけがないけどね。無限の命だも

ん。


でも暴走した衝撃で私の人格とあの人の人格は分かれてしまった。


能力で体が再生したとき、本来なら再生するのはあの人の体だけで私はその中に入っているはずだけど違っ

た。


人格ごとに体が生成されたんだ。


それが私とあの人の関係性だよ。




「じゃあ、お前は会長の実の妹じゃなくて会長本人だってことか?ややこしいけど」


黒山はメイクに聞いた。


メイクは「そうだねー。私も正直自分については全く分からないよ」と返す。


「で、どうなんだ」


黒山がそう言ったのを聞いて「どうとは?」とメイクが首をかしげて言う。


一回息を吸って黒山は


「結局お前は何が目的なんだ」と聞いた。


メイクは「わかりきったことじゃん」と前置きをして


「あの人を殺すためだよ」と言う。


その場の空気がシンとする。


しかしそれはメイクの言葉についての沈黙ではなかった。


瞬間、


「あ、居た居た。探したんですよ黒山さん」


ついさっき聞いた声が聞こえてきた。


声の発信源は右の階段上。


「どうしてここに居るかはわかりませんが、私をほっておいてくれないんだったら容赦はしませんよ?」


追人。


のような人物だった。雰囲気が別人。殺気がえげつない。


こっこっと階段を降りてくる。


「お前は傷つけたくない。だけどほっとくわけにはいかないぞ追人」


黒山は追人に向かって言う。


追人は動きを止めてプルプルと震えだした。


「僕が目覚めたのはつい最近なんですよ…?今まで全く別次元のことかと思ってたことが自分にふりかかる

なんて思いもしませんでしたよ。しかも消す能力?冗談じゃない!そんな能力望んでない!どうしてどうし

てどうしてどうして!この能力のせいで一体どれだけの人を存在ごと消してしまったか!僕は悪人なんです

よ!?それで僕がどれだけ嘆いたか!あなたにはわかりませんよね!そんな彼女とか生徒会のメンバーに囲

まれて!あなたになんて…!」


最初はまだ理性的だったがあとから本能のように叫んで追人は言った。己の思いを吐露するために。


黒山はそれを聞いて


「わからないな」とばっさり切り捨てた。


追人はそれを聞いて驚いたような顔をすると俯いて


「じゃあほっといてくださいよ!」と腕を振るった。


するとフランマの能力が行使できなくなった。どうやらつながりを消されたらしい。


しかし黒山はうろたえず


「でもな」と続ける。


「お前は悪人なんかじゃない。ほんとうの悪人なら能力を消すなんて回りくどいことをしなくても俺を消せ

たはずだ。それをしないってことはお前の中にはまだ理性が残ってるってことだ。人を消してしまった。そ

れにも理由があるんだろ」


そんなことを言ったが追人には届かなかった。頭を抱えて痛がっている。


「その悪意もらった」


するとメイクがそんなことを言って追人に飛びついた。


頭を手で掴み、何かをする。あまりにも唐突な出来事で黒山たちは動けなかった。


追人が叫ぶ。


そしてメイクが追人から離れた。追人はぐったりと倒れている。


メイクが言う。


「名前は…ロストでいいか。…さぁ物語の続きを消してしまい、すべてを無に帰そう!」


その声に追人が反応し、立ち上がったその瞳は濁り、さっきまでの瞳ではなくなっていた。


全てを消し去る最悪の異人。


その者の結末は自身すら消し去ってしまう結末だった.

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