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記憶

33章



概念はこの世界において圧倒的なエネルギーを持つ物。これを自分の意識でコントロールすることができる

ならそれはこのこの世界の最強の存在として降臨できるということ。


その境地を目指して何人もの人が概念をわがものにと古来から挑戦をしてきた。


結果はすべて失敗。


概念に触れたものはことごとくエネルギーの暴発に巻き込まれ命を落とす。今現在でも概念を自身の支配下

に置こうと挑戦するものがいる。異人だとしてもコントロールすることは不可能だと言われるまでになっ

た。


しかし1人の少年がその事実を壊した。


彼は意識を無くすと概念をある程度自由にコントロールできる異人だった。しかし意識がある状態では概念

が下方以外のすべての方面に常時放出され甚大な被害を生む。


これは一見失敗のように思えるが概念が本人を殺さず干渉できるということを示した大発見だった。


それを発見した研究所は称賛され、支援金を寄付してもらい少年についての研究を始めた。


初期のころは順調に進んでいった。


死人は出たものの概念というものの存在を肉眼で視認することができ大いにその界隈は盛り上がった。


その一方でさらに研究所は秘密裏に強大な能力の異人を研究していた。


彼女は計り知れないほどの強さを持ち、1人で世界を創造できる力を持っていた。


そして研究の結果彼女も概念に関連する能力を持っていることも発覚。さらにそれは無意識かでもなく自分

の思うとおりにコントロールできるという彼とはさらにワンランク上の能力だった。


しかし、彼女の存在から極秘だったためこの研究結果は明かされることがなく闇のままであった。


ある研究者は2人についてこう思った。


まるで破壊神と創造神であるかのようだ、と。


その後、研究は滞りなく進んでいったが、彼女が脱走する事件が起きた。


もちろん気を抜かず監視していたし、設備も一流どころじゃないほどの最高峰。死角などなく、扉は10重。

一つ一つを通るためにはカードキーが必要。絶対に外に出れないような状況を作った。


しかしそんなことでは止められなかった。


彼女は創造神でもあり、破壊神でもあった。


超重厚な壁を消し去り、監視の目を欺き、扉も消し去り、設備をも欺き、カードキーを複製した。


全て彼女の前には無力。


さらには今までのすべての被検体の研究結果を消し去り、研究所を物理的にも社会的にも破壊した。


それにより研究所は倒産。


被検体たちは普通の保護施設にそれぞれ送られていった。


彼女は1人で世界最高峰の研究所を破壊し、その力を見せつけた。その力は研究所が調べていた力よりもエネ

ルギー量をはるかに上回っていた。


だがその事件によって研究所に入っていた異人たちが普通の生活を取り戻したといっても過言ではない。


その中の1人。


彼は彼女を探し、1人保護施設を抜け出した。


概念を知らぬままその身に宿して。


彼の思いと向き合うために。




何だ…。何か忘れている気がする。


あれは…人か?


敵か…。


敵は破壊しなければ…。



「何だあいつ!あの一瞬で絶対にパワーアップしてるぞ!」


『ですね。さすが組織長と言ったところでしょうか。適応が早い様子で』


刃の形になって振り落とされる破壊の概念を黒山は必死に避ける。


明らかに概念の密度が上がっている。さっきは炎で焼けたが、今回は出来ないだろう。


だがところどころで降ってくる微量の破壊の概念を炎で焼き尽くせることはわかった。つまり量と質が高い

ものは焼けないということ。


『そもそも概念というのはですね。自然界における最強の原子みたいなものなんですよ。なので人間や異人

が対抗できる術は限られてるんです。最初に焼き尽くせたのは使い手が弱かったからで素の概念は圧倒的な

エネルギー量を持っています。そんなものは運命に身をゆだねるしかありません。ちなみに今そのレベルで

すよ』


「最後の情報で絶望なんだけどこれ泣いていい奴だよな」


フランマと会話し、策を練るが案が出てこない。


その間にも攻撃は激しくなる。


一応、スタミナだけは無尽蔵にあるため時間稼ぎぐらいはできる。


が、そんな悠長なことは言っていられないようだ。


フランマ曰く『私が全力で力をふるえるのは連続15分が限界です』らしい。


今は戦闘が始まって10分ちょっと。


あと5分もない。


さらにあの破壊の概念には心無き執行者が付加されており、黒山の「身体蘇生」も無効化されるらしい。


つまり、フランマが動ける間にあいつを止められないと確実に死ぬ。


「無理ゲーだろ」と思う黒山。


しかしやらなければいけない。やらなければ黒山たちのみならず外の異人たちもみんな殺されてしまう。


どうしたらいいんだっ!


そこで黒山は何かを思い出す。


もしかしたら…とそれに賭けてみることにした。


まずは準備をしないとな。


「炎幻!」


黒山は叫ぶ。


そして黒山と全く同じ姿をしたものがその場に数十体ほど現れた。


全員が一斉にライへ向かう。


それぞれ「炎槍」「炎刃」「炎斧」を装備している。


すべてフランマの能力によって作られたもの。普通の武器ではない。しかも分身体は全て実体を持ってい

る。実質1対武装した精鋭たちだ。


しかしライには数の力など関係ない。


ウガァァァァァァ!という雄たけびと共に破壊の概念がライの頭上を覆い滝のように流れる。流れた破壊の

概念は向かってくる分身体たちに容赦なく衝突し、飲み込む。


破壊の概念はライを覆って破壊不可能の壁を作る。


この中にいればライは絶対に攻撃もされない。


意識がないライにとってはそんなことどうでも良い話なのだが。


だが破壊の概念の壁によって視界も外界の音もなくなってしまった。情報源がなくなった無意識下のライは

破壊の概念を消し去る。


真っ暗なところに一瞬いただけで光がまぶしく見えた。


目が慣れてくるとそこは床がなくなって穴が開いた足元数センチ前。そしてその向こう岸に立つ黒山の姿が

見え、黒山の分身たちの姿はさっきまでいたはずなのにどこかへ消えてしまっていた。


黒山がそこで動く。


炎槍を両手で持ちライのもとへ走ってくる。


それをライは破壊の概念で押し返そうと網状にして黒山とライの間にセットする。通ろうとすると絶対に破

壊の概念が体に触れ、命を落とす。


ライは獲物がかかるのを待っている、蜘蛛のように。


無意識下のライはまるで獲物を殺すことに快感を覚えているようだ。もう1つの人格と言っても過言ではな

い。


考える頭はそこまでないようだが。


黒山は見えているはずの網に向かって突進する。


それをライは待つ。絶対に破る方法はないからだ。隙間はないし、壊すこともできない。


どんどん黒山は網に近づく。黒山にも見えているはずなのに身体強化もないのに止まらない。


壊すことだってできないというのに。


ついに、衝突した。


かと思われたが、衝突する直前に網は消えてなくなっていた。


その答えは


「あ…が…」


ライに刺さった1本の炎槍。


それを持つ黒山と同じ制服を着た異人。


ツインテールの髪が特徴的な黒山の大事な人。


「これでいいんだよね!信二くん!」


倒れたライの向こうに櫻木愛花が居た。


その無邪気な声に黒山は答える。


「マジでよくやった」と。




あの一瞬。


ライが破壊の概念で周囲を覆った時。黒山は櫻木を呼び出して作戦を伝えていた。


最初、この試練が始まったとき。


黒山は自転車でツインテールの少女を見かけていた。そして試練の櫻木に頭を殴られて気絶する前にのぞき

込む制服の違う櫻木の姿を思い出した。さらに気絶している最中の夢の中、いや多分現実で何回も櫻木は現

れた。


それでもしかしたらこっちに櫻木がいるのでは?と予想を立てたのだ。


そしてライの視界が奪われたあの一瞬で櫻木を大声で呼ぶと物陰からひょこっと現れたというわけだった。


「やっぱりお前いたんだな詳しいことはあとで聞くぞ。あいつの意識が俺に集中したらあいつを攻撃してく

れ。急所を一撃で付ければ満点だ。できるか?」


黒山は早口で作戦を伝えた。


櫻木は間を取らず即答で「わかった!」と言ってくれた。


そしてまた物陰に隠れて機会をうかがっていた。


結構早く機会は来たのだが。




我ながらよく思い出した。と黒山は自画自賛する。


黒山の記憶と消されなかったフランマの能力となぜかこの場にいた櫻木の成果だった。


しかし


「えーい!」


という気の抜けた声と共に黒山めがけて炎槍が数千本襲ってきた。


え、ちょまって。と黒山は言おうとしたがその前に槍が黒山を貫いた。


すぐに修復された口からぎゃあああああ!と悲鳴が発せられる。


それだけでは終わらず、さらに鋼鉄のように固い拳が黒山の頭上から振り下ろされてきた。その拳と地面に

押しつぶされコミカルにプチュっと潰れた。


まぁ黒山にはまだ身体蘇生が残っているため死にはしないが。それをわかってて櫻木は黒山を痛めつけた。


「あのさー、私を忘れるなんてひどくない?何回も信二くんにアピールしてたんだけど?」


櫻木はプレスされた黒山をつまんで持ち上げる。


もちろん潰れているため黒山はしゃべれない。


櫻木がぱっと離すと黒山は落ちていく。落ちていく途中に身体蘇生が働いてもとの黒山に戻る。


戻った黒山の姿勢は、


…土下座。


「いや試練のせいって言っても申し訳ない…。ほんとに忘れてたんだ…。許してほしいっていうのは傲慢か

な…?」


黒山は土下座しながら言う。


櫻木はそんな黒山を見て…


「ほい」っと軽い声を出しながら指をぱちんと鳴らす。


すると土下座している黒山の床が業火に包まれた。


「あっちぃぃぃぃ!」


黒山は慌てて起き上がろうとしたが櫻木がその頭を床に手で押し付け妨害する。


そしてにっこり笑い。


「10秒キープ」と言った。


いやこれどこかで見たことある粛清方法だな!?と心で黒山は叫ぶ。


ただ黒山は異人なのでこんな粛清余裕なのである。


ただその10秒の間に1つ気づいたことがあった。


それを考えていたら10秒なんて終わり、焼き土下座から解放された黒山であった。


体を少し伸ばして黒山は櫻木に聞く。


「そういえばなんでお前が炎の能力使えるんだ?」


それに櫻木は「そりゃ信二くんの能力だもん。私にも共有されるにきまってるでしょ?」と答えた。


確かに。と黒山は納得する。


しかし櫻木は


「でもなんでそれ忘れてて私に助けを求めたのかわかんないんだけど。なんか突然信二くんの能力消えちゃ

ったし。何かあったの?」と黒山に聞く。


すっかり忘れてた。てっきり愛花には能力が残るものかと思ってた。もしフランマが居なかったら…。と、

最悪の妄想をして気分が悪くなる黒山。


結果オーライだったがまだまだ未熟。


2人が話しているとまた声が聞こえてきた。


「next」


すると黒山たちの目の前に扉が現れた。


扉はいたって普通の両開きのドア。


「ここに入れっていうことか」


黒山は櫻木を見る。


櫻木も黒山を見てうなずく。


「行くぞ」


そして2人はドアを開けて、その先へと消えていった。

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