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襲来

ヤツらが来た。


窓が割れ漆黒の中から赤髪の男を先頭に六人の人間が生徒会室に入ってくる。


会長が机を飛び越え、窓の反対側に飛ぶ。


その先頭の赤髪の男はだるそうに言う。


「どーも、異人さんたち。お楽しみのところ悪いけどちょっとあの世行ってくんね?」


ボサボサのままの髪、優しそうに見える垂れ目だがその目の奥には強い恨みの念が籠もっているのがうかがえる。服は白の服で所々に赤い模様が付いているTーシャツでジーパンを履いている。その服装は日常のどこかにいてもおかしくはないが、その中で唯一普通じゃないものがある。


その赤い模様は本当にただの模様なのか?よく見ると赤というよりかは赤が少し黒くなっている色だ。自の知っている知識に照らし合わせ、何に一番似てるかを考え思いついたものは、


「お前…ここに来る前に誰かを殺したのか…!?」


いつの間にか声に出ていた自分の問いにそいつはこう答えた。


「殺した?うーん、人聞きの悪いことを言うなぁ。質問に質問で返すようで申し訳ないが、別にお前達異人は化け物なんだからさ、殺したとかじゃなくて駆除してあげたっていうのが正解だと思うんだけど?」


俺は怒りが爆発しそうになったがそれを会長が右手で制した。


「…貴様は誰だ」


会長が赤髪の男に問う。そいつは答えるのも億劫という感じで、


「組織の幹部…んー、ここはキングって名乗っておこうかな。異人たちには本名を教えたくないんだよね

ー、これから殺す相手だし」


組織、大体は見当がついていたがやっぱりそうか。幹部レベルということはあの後ろに控えてるのは部下と

いうことになる。なら普通に考えて幹部さえ潰してしまえば問題はないだろう。だがあのキングと名乗った

男の実力はわからない。ここからどうするべきだろう。


「あー、抵抗する気満々だねぇその顔。でも無駄だと思うよ?」


キングが言い終わった直後、キングが姿を消した。


突然の状況に混乱するが周りを急いで見渡す。だが生徒会室のどこにもキングの姿はなかった。そのことが

さらに自分を混乱させる。


もう一度見渡すがキングの姿も会長の姿もない。一体、どこへ消えたのだ。


会長?会長はどこへ?


そう気づいた瞬間、自分の真上からバケツで流したような大量の血が降ってきた。


大量の血を浴びたが、混乱より先にこの血は誰のだろうということを思い、それを確かめるために上を勢い

よく見上げる。


そこには何か大きな釘のようなもので腹を突き刺され天井に固定された会長の姿があった。


「会長!!」


俺は叫んでいた。


だが会長からは返事は来ない。一向にこない。「死んでいるはずはない死んでいるはずはない」そう何度も

思い、精神を安定させていた。


他の三人は絶句し、顔が恐怖に染まっていた。自分もああなってしまうかもしれないという恐怖に。


「とりあえず見世物はこんな感じでいいかな。ちょうどいい具合に戦意喪失しただろ。一番あいつが強そう

だったし、てか偵察がてらに中を覗いてたけどうざかったんだよねぇ。全部を知った気になってるって感じ

で、だから教えてあげたんだよ。まだ知らないこと…死があるってことをね」


そのだるそうな声を聞き、俺は正気に戻った。


会長は昔、俺を助けてくれた。会長は完璧だったから今まで恩を返せずにいたけど、今が返すときだろう。

会長は俺たち異人たちを守ろうとしていた。ならその思い、俺が継いでやる。俺が会長の代わりになれるな

ら…!


俺はキングをおもいっきり睨みつけた。


その俺の様子を見てキングはさらにだるそうに、


「…戦意喪失したと思ったんだけどなぁ。めんどくさい。なら、心が折れるまで続けてやるよ」


人間と、化け物の、戦いが始まる。




 合図はいらない。


一瞬で二人の距離が縮まる。


キングが黒山の頭に向かって手をのばす。黒山は自分の頭を掴もうとしていると思いその手を逆に掴んで振

り回そうとしたが、キングのニヤニヤ笑っている顔を見て何か違和感を覚え回避に移行し、キングの手の右

側に顔を動かした。


その一瞬後、キングの手から大きな釘のようなものが飛び出し,さっきまで自分の頭があった場所を通過す

る。


あのままキングの手を掴んでいたら頭を貫かれていた。その釘は標的を外すとまた手の中に帰っていった。


「あーあ、バレちゃった。初見が一番当てやすいのに。バレちゃったから教えてやるけどこれは俺の秘術

『栄光なる処刑』。磔刑モチーフの秘術というわけだ。教えてやったからもっと楽しませてくれるよな

ぁ!」


戦いの勢いが加速する。


元から異人で身体能力は桁外れな黒山だが、キングはそれを上回っている。これも秘術とやらの影響なの

か?このままでは負けてしまう。どうにかしなければ…。


キングは笑みを浮かべながら黒山に飛びかかりに行く。黒山が避けようとしたが気づいた。


足が言うことを聞かない。恐怖で足がすくんでいるのだ。「どうして…」と声に出てしまったが、それを聞

いてキングが止まるわけはない。むしろ、さっきより笑って飛んでくる。


だめじゃん、俺って。黒山がそう思い目を瞑った時、「ドン」という鈍い音が鳴り響いた。


その音は黒山に飛びかかろうとしていたキングが横に飛ばされ、床に落ちた音だった。


「グギョア!!??!?!??!?!」


キングが目を見開いたまま声を上げ、起き上がる。その視界に映ったものは、


「先輩殺されて黙ってみてられるかよクソ野郎。あと俺の友人泣かしてんじゃねぇよ」


牙忍隼だった。


怒っている。誰が見てもそう感じさせる雰囲気だった。普段はへらへらしていて何かトラブルが起きれば凹

み、その後処理をしていたが。今はそんな牙忍ではない。


身体能力はあるがそれを使って人を傷つけたりは絶対にしない、そんなやつだったが今なら躊躇なくやるだ

ろう。妙なことをしてもしなくても最終的には殺す。そう暗に告げていた。


その様子を見たキングは驚くことも、恐怖することもせず、笑っていた。


「友人…ケラケラ、君たちから見れば同類で友なんですけど、私達から見るとあなた達は人ではないので、

自分たちがあたかも人であるかのように振る舞うのやめてもらえますかね?」


完全に俺たちを見下している。ギリと奥歯を噛みしめ、キングに向けて一歩を踏み出す。


だが、完全に油断していた。


ザリザリザリザリ!と自分の足元から音が聞こえてきたと思ったら、足元の床から槍が突き出してきた。そ

のまま槍は自分の足を貫通する。


激痛が走り、咆哮が響き渡る。


「ああああああアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!」


槍から足を抜こうとしたが抜けない。


いや、抜こうとする度に激痛が走るため抜く気力がなくなっていくのだ。


その間に牙忍がキングとの距離を詰める。


今度は牙忍の真上から勢いよく槍が突き出してきた。槍が牙忍に当たる寸前、牙忍の姿が消えた。


元あった場所に置かれ、代わりに槍に刺さっていたのは木でできた人形だった。


キングが一瞬混乱する。その瞬間を、牙忍は逃さない。


キングの背後に牙忍が現れた。そのままキングの後頭部へ拳を突き出す。


ドスンと、低い音が響いた。


牙忍は手応えを感じていた。彼のパンチ力は本気を出せば1000万トンを超える。それに耐えられるやつなん

て存在しない。


実際、キングは少し前に反っていた。だが少しだ。本当ならば当たった時点で顔が弾け飛んでもおかしくな

い攻撃を、百のうちたった少ししか受けていないのだ。


「罪人は磔にされ身動きを取ることができない。反撃など言語道断。俺の「栄光なる処刑」は罪人と定義し

た存在から受けるダメージを100%カットすることができる。言ってる意味がわかるよな?」


答え合わせに絶句した牙忍はキングの背から現れた、大きな釘のようなもので会長と同じように壁に磔にさ

れた。腹を貫かれ。


鮮血が吹き出した。


「ふぅ、あと生きている異人が3人、それと学校の生徒にも何人かか」


キングが後ろの部下に命令をする。


「学校の生徒に混じっている異人を駆除してこい。一匹残らずだ」


「しかしながら…我々には異人と人間の区別が付きません…。どうすればいいのでしょうか…」


だがキングは聞く耳持たず、


「命令だ」とそれだけ言った。


部下たちは「…了解です…」そう言うと窓の外から部下は全員異人を駆除するために外に出ていった。


「さてと」


キングは痛みにずっと耐えている黒山を見て憐れむような目をした。


「しかたないだろう。異人に生まれてしまったんだから。人間に生まれてきてさえすれば俺たちだって駆除

しないさ。でも異人は駆除しなくちゃいけないんだよ。その存在で迷惑がかかる人がいるからね」


…本当にそうなのだろうか。


俺は「異人だから」という理由で殺されなくちゃいけないのか。迷惑をかけてしまうのだろうか。だが俺は

そうは思わない。異人という存在がいるからこそ、人間の文明は発達していく。それで幸せになる人もいる

のではないだろうか。


「まぁ、いいや。そろそろ楽にしてあげるよ。最初で最後の異人への優しさだ」

もういいだろう。死んでしまうのだから。いい人生とは言えなかったけど楽しかった。


…愛花ごめんな、力が足りなかった。こんなに弱い俺でごめんな。


キングが手を黒山にかざす。


「それじゃあね、あの世で元気に」


大きな釘のようなものが黒山の頭を狙って飛び出した。




ように見えた。


「は?」


いつの間にか飛び出していた釘のようなものが消えていた。


何が起こっているのか誰にもわからない。


そこに、声が響いた。


「…最初に、言いたいことがあるのだが」


その声はもう二度と聞こえないはずの声。


「一番強そうで選んで殺したやつが」


黒山の横に何者かがふわっと降りてきた。


「最初に死ぬほど弱いわけないだろう」


死から蘇った、女王。


この学校の生徒会長、最強の異人。2つの頂点に君臨する女王。


彼女が全てを解決する。

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