神格能力
27章
合宿2日目昼。
太陽が真上から旅館を照らして部屋が少し涼しくなってきている時間帯。
授業を終えた黒山たちは昼休憩ということで各自の部屋に戻ってきていた。
黒山と牙忍は2人でポーカーをして遊んでいる。
そして机の上には賭けをしているのかお菓子が2つ置いてある。
昼ごはんは奏臣が黒山たちの授業中に作った弁当。と黒山たちは聞かされている。
しかしここで重大事件が発生した。
「さすがに遅くないか?」
黒山は牙忍にフォーカードを見せ、勝ちを確信した顔で言う。
まだ弁当が届いていないのだ。
昼休憩が始まって20分が既に経過している。なのにも関わらず弁当は届いていない。すでに2人にお腹は
ぐぅぐぅと音を立てて鳴っている。
「そうだな。もうお腹も空いて我慢できなくなってきたし何かあったか見てくるか」
と牙忍は手札のカードをパラッと机に落とし、言う。
スペードのエース。スペードのキング。スペードのクイーン。スペードのジャック。スペードの10。
紛れもなくロイヤルストレートフラッシュ。ポーカーにおける最強役だった。
それを見た黒山は「はっ!?」と声を出してロイヤルストレートフラッシュをまじまじと見つめる。
そして「本当にこんな役作れるのか…」と呟く。
牙忍は「俺の勝ちな。じゃこのお菓子はもらってくぜ」と言って机の上においてあったお菓子を取って食
べる。
しかしそれでお腹は膨れるわけでもなく、ただ空腹をもっと感じるようになるだけだった。
すると、
ガチャ
黒山たちの部屋のドアが開く音がした。
そして玄関廊下から出てきたのはいつもの見知った顔だった。
「…遅くなってすまない。少し手間取ってしまってな」
そこには袋を2つ持った奏臣が居た。
そしてすぐに袋を1つ部屋に置くと「…女子の部屋にもいかないといけないからな。これで失礼する」
そう言ってまた部屋を出てってしまった。
またその部屋に黒山と牙忍が残された。
「あ、お礼を言うのを忘れた」
黒山はそう言いながら立って袋の元へ歩く。
それに牙忍は「夜のときで良いんじゃないか。急いでたみたいだから仕方ないだろ」と言ってトランプを
片付け始める。
「それもそうだな」と黒山は思って袋を持って中身を確認する。
中には箱が盾に2つ入っているのが見えた。おそらくこれが弁当だろう。
そして元の場所に座って袋を机の上に置き、袋の中から弁当を出して机の上に置く。
「それにしてもでかくねこれ」
黒山がそう言った。
黒山の言う通り取り出した弁当は重箱に入っていてそれが三段積み重ねられている。しかもこれが1人分
だ。
トランプをバックにしまった牙忍は机に戻ってきて重箱を軽く持つ。
すると牙忍は
「これ…。ただの弁当じゃないな」と呟いた。
へ?どういうこと?と黒山が思っていると牙忍は早速その重箱を1つ開けた。
開けた瞬間、白い煙が重箱から溢れ出てきた。
それに驚いた黒山は少しのけぞる。しかし牙忍は臆すること無くそのまま煙のなすがままになっている。
そして
「あー。これ開けたら自動的に中身が温められる重箱だ。多分一番下はそのからくりが入ってるから、実
質弁当は2段みたいなもんだな」とあっさりとした調子で言った。
言われてみればこの煙、スチームに近いものを感じる。
煙が晴れると中から出てきたのはかまぼこ、かずのこ、黒豆、伊達巻き、昆布など。これはまるで
「おせちみたいだな」
そう、中身は正月に出てくるおせちを簡易版みたいにしたものだった。
「ということはっと」
牙忍はそのままの勢いで2段目を開ける。開けるとまた白い煙がもんもんと立ちこめてきた。
そして数秒経ち白い煙が晴れるとそこにはきれいな色をした赤飯がいっぱいに入っていた。
牙忍は「正月の米といえばこれだよなぁ。今全然正月じゃないけど」と言って袋の中にあった箸を手に取
る。
黒山もその姿を見て重箱を開け、白い煙が溢れてくる。
中に入っていたのは牙忍と特に変わらず、簡易版おせちときれいな色をした赤飯だった。
ただ1つだけ違った。
重箱と重箱の隙間。
そこに紙が挟まっていた。
なんだこれ。と黒山が思って開けてみると
「こんにちは。私は対異人組織の会長、ライと申します。突然のお手紙さぞ驚かれたでしょう。今回私達
はこの合宿であなたたちを捕らえようと考えています。しかし黒山信二と櫻木愛花の身柄だけ渡してくれ
れば他の者には危害を加えるつもりはありません。ご検討の程を。PS,既に幹部を数名向かわせていま
す。殺されないようにご注意を」と書いてあった。
それを読んだ黒山はばっと立ち上がり玄関へ向かう。
牙忍はそのただならぬ様子を見て「どうしたどうした?」とおせちを食べる手を止めて黒山について行っ
た。黒山は止まらずに玄関を開けて廊下に出る。
そして黒山が向かったのは、
廊下突き当りの大きい部屋、菊の間。
そこにあの人がいるはずと思ってきたのだ。
スライド式のドアを開けて中に入る。中には一度授業で入ったことがあった。
黒山が見ると奥に障子が閉まっており、人影が2つあった。
中にずんずんと入っていってその人影に近づいていく。
人影は黒山に気づいてガラリと障子を開けた。
「…なんだ。もうご飯は食べたのか?」
障子から出てきたのは奏臣だ。
そしてその後ろから量産型奏臣と思われる奏臣そっくりな人物がひょこっと顔をのぞかせた。
「いや大変なんです!」
黒山がさっきの紙を奏臣に見せる。
それを見た奏臣は量産型奏臣に耳打ちをして紙を渡した。量産型奏臣はそのまま何処かへ向かっていっ
た。
そして残された3人。
すると奏臣が「…問題ない」と言った。
続けて「…一応のため説明しておくか。女子たちを呼んでこい」と黒山たちに女子たちを呼びに行かせ
た。
すぐに向かって女子部屋をノックすると割とすぐに返事が来た。
そして出来事を伝えて用件を言うと少し立ってからドアが開いて3人が出てきた。
「まだご飯食べてる途中なのです…」
咲川がしょぼんとした感じで最後に出てきた。
全員で奏臣のところへ行くと菊の間に天川と量産型奏臣もいた。
「…全員集まったな」
奏臣はそれを確認すると手のひらを掲げて何かを生み出す。
生み出されたのは鉱石のようなかくかくしたものだった。
そして手をおろし、鉱石のようなものを持ちながら話し始める。
「…さっき黒山から連絡があったのだが組織の長がこっちに攻めてくるらしい。これがその手紙だ」
そう言ってさっきの紙を全員に回す。
櫻木たちはブルブル震えながら紙を読み進める。
すると咲川が
「その長にも会長は勝てるんです?」と聞いた。
それに奏臣は「…いや私では絶対に勝てない」と言い切った。
その瞬間全員が「え?」と言った感じで驚いた。
こんなに強い力を持っていても勝てない?どんだけ強いんだそいつは。と黒山は思う。
奏臣は補足説明をする。
「…そもそもあいつに勝てる異人は絶対に居ない。あいつの秘術は『心無き執行者』。概要は異人の使う
能力効果をすべて打ち消すというものだ。だから黒山や牙忍がいくら身体能力を上げようとそれすらも無
効化され、幽美がどれだけ術を展開させてもすべてが無効化される。これが勝てない理由だ」
そんなの勝てるわけないじゃない…。幽美がぼそりと呟いた声が聞こえた。
黒山も絶望にぶち当たっている。
そんな相手どうやって勝てば良いんだ。
「…1つだけ方法がある」
奏臣は指を一本立て言った。
なんですか!?と黒山たちが食い気味に聞く。
それに奏臣は「…この鉱石だ」と手の平に置いた鉱石を見せながら答える。
「…これは熾天使の鏡という鉱石でな。本当ならこの鉱石は観賞用なのだが実は異人の能力を最大で『神
格』レベルにまで強化できるらしい。使ったことがないからわからないがな」
「でもいくら強化しても無効化されるんじゃ意味ないんじゃないですか?」
幽美が聞く。
話を聞く限り、すごい鉱石なのはわかった。しかし会長の能力すらも無効化できるのならそこまで強化し
ても勝てないのではないかということかと黒山は考えた。
奏臣は鉱石を握って言った。
「…この鉱石は使うべきものが使うなら組織長の秘術すらも効かない程に強くなる。そういえば言ってな
かったが異人の能力にはいくつか段階がある。黒山、櫻木、幽美が使ってる『強格』レベル。牙忍と咲川
が使ってる『超格』レベル。そして私が使っている『天格』レベル。その上に存在する最高の階級が『神
格』レベルだ。何が言いたいかというとな」
そこで黒山が話に割り込む。
「『神格』は桁が違うっていうことですね」
それに奏臣は「…そうだ。」と言って唐突に鉱石を黒山に投げる。
慌ててそれをキャッチする黒山。
そして
「ほぉ、なんだか懐かしい感じがするな」と頭の中でフランマが呟いた。
奏臣は「…これはお前が使え」とだけ言って理由は言わなかった。
黒山は渡された鉱石をジロジロと見る。
しかしどう使うのかもわからなかった。
すると奏臣が「とりあえずご飯を食べてこい。手紙が来たからって予定を変更する気はないぞ」と言って
菊の間から黒山たちを追い出した。
そこで黒山は自分が全く昼ごはんに手を出していないことを思い出しその瞬間お腹がぐぅぅぅと鳴ってし
まった。
その音で黒山は赤面して牙忍たちは、はははと笑う。
そしてそのままそれぞれの部屋に戻っていった。
「…次のカリキュラムは何だオリジナル」
量産型奏臣が3人だけになった菊の間で奏臣に聞く。
「…予定より早かったからな。あれをやるしかない」
奏臣はそう言ってパソコンを開いて何かを打ち込み始めた。静寂が漂う菊の間にパチパチというタイピン
グ音が響く。そこから数分経った頃、天川が奏臣が操作するパソコンを覗き込んで写っている何処かの部
屋の間取りを見て懐かしそうに言った。
「この部屋嫌いだったなぁ。今でも入りたくないよ」
量産型奏臣も奏臣の記憶の一部を継承しているためその部屋の概要がどんなものかわかる。
記憶によれば確か「蜃気楼」という名前だった。
すると奏臣が
「…この部屋は私はまだ全盛期だった頃の力を限界まで詰め込んだ修行部屋だ」と話し始めた。
「…『時間神逆』をベースに作り、私の持ってい『た』神格能力のヒントを各部屋に詰め込んでいる。も
う私に神格能力は習得できないがあいつらならやってくれると信じてる」
ピピピピピピピとという音と共に5つの能力名がパソコンに表示される。
『身体神持』『強大神化』『思考神化』『空間神激』そして『時間神創』。
「…すべて神格レベルの能力。いや『時間神創』はそれ以上。これを全員が習得できればアイツラにも勝
てるはず」
奏臣は振り向いて言った。
そのせいでその時、パソコン画面にノイズがピリリと走ったことに気付けなかった。
そしてまたカリキュラムが始まっていく。
すべて彼女の手のひらの上。
こんにちは最近モチベーションが失われつつあるsakuです
前回後書きがなかったのもそのためです
今回はちゃんと書きます
やっと組織のボスが登場します
彼のイメージは対異人最終兵器とでも考えておいてください
心無き執行者は異人が関係するすべての能力を無効化できますもちろん不死能力も…
これ以上は言わないでおきましょう
面白ければ高評価を感想もお待ちしてます
それでは




