表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/67

炎幻

24章



異人にだって人間のように幽霊が怖い人も居る。


超常的な力を持っていてもそれがさらに超常的な存在の通じるかわからないからだ。炎でも氷でも効かない

かもしれないし、思考がなく操れないかもしれないし、触れられない可能性がある。


根本的な部分は異人は人間と同じ。


ただそれに通ずる能力を持っていなかったらの話だが。


「なんですかこの森。幽霊がかなりの数居るじゃないですか。襲っては来なそうですけど」


そう言っているのは虚空を見つめている幽美だった。


もちろん幽美以外の黒山たちには何も見えていない。何も見えないだからこそ怖い。


これが普通の人間の合宿だったら「そんな事言うなよー。脅かす気だろー」や「嘘つくなよ。いるわけねぇ

じゃん」とか「あいつやば…。友達やめるわ…」な風に色々言われるが黒山たちは違う。


幽美が本物ということがわかっているからだ。


彼女の能力「空間霊作」。


自身の周り一帯をフィールドと設定することでその空間内にいる超常的なにかを操ることができるという能

力。


そしてその能力の肝である超常的なにかこそが霊なのだ。


それを操るためにはそれ自体が見えていないと操作のしようがないが、彼女はそれ系の能力をもとから持っ

ていたらしく能力を自由に使えるというわけだ。


つまり、彼女の霊能力は本物ということだ。


だからこそこの森が怖い。


櫻木は変わらず気絶し、黒山にお姫様抱っこをされているが、咲川は牙忍と手を繋いでもらって恐怖心を紛

らわせている。牙忍自身も内心「こえぇぇぇぇぇぇぇ」と思っているが。


黒山も怖がっているが、彼が1番思っていることは「とりあえず、こいつが重い」だ。


この森に入ってから10分ぐらい経っているがずっと櫻木は起きずに気絶し続けている。その間櫻木はずっと

黒山にお姫様抱っこをされているため重いと思うのは当然のことだろう。


そんなことはつゆ知らず幽美は1人どんどん進み続けている。


それを慌ててついていくのが黒山たち。


「ん?」


唐突に幽美が疑問の声を発して暗闇の先に目を凝らし始めた。


「なんだ?何かいたのか?」


と黒山が聞くと幽美は「いえ何か生きてるものが見えた気がしました」と言った。


もちろんその目はガチである。


それに牙忍が「怖いからやめてくれ…。幽霊も怖いがこういう森に人がいるって言うことだけでも怖いん

だ…」と普段からは考えられないようなおどおどした声で言った。


すでに周りは漆黒に覆われており近くの木以外は真っ暗で何も見えない暗さだ。そんな暗闇のこんな人里離

れた施設の森の中に人がいるなんて考えられるだろうか。


少しずつではあるが黒山たちはちゃんと進んでいっている。懐中電灯1つでその度胸は褒められるものだろ

う。


「やっぱりいますね。今度は後ろに」


幽美がそう言い出した。


「ははそんなことないってー」と震えた声で黒山は言ったが、


ザッザッ


耳を澄ますと黒山たちと少し離れた後ろから足音が聞こえてきた。


しかもその足音はどんどんとこっちへ近づいてきている。


幽美以外全員が震え上がった。


明らかに足音は人だ。動物ではない。動物なら四足歩行で4つ足音が連続して聞こえてくるはずだが2つしか

聞こえてこない。


牙忍が黒山と櫻木を守るように立ちふさがる。なお変わらず怖がっているようだが。


そして足音が迫り、暗闇から現れたのは


長く艶めきがある黒髪。目はツリ目で見ているものを圧倒させるものがあり、高い鼻、程よい自己主張の

唇。


極めつけは黒山たちと同じ学校の女子制服をビシッと着崩し無く着ている女。


我らが生徒会長、奏臣真子がそこにいた。


「あれ、会長も来たんですか?」と幽霊ではないことに安心した牙忍が聞く。


「…少し心配になってな。様子を見に来たんだ」と奏臣は返す。


それを聞いた咲川がムッとした顔になったがすぐに元の顔に戻ってまた牙忍にくっついた。


心配ってどういうことだろう?と黒山は思った。


しかし奏臣は「…さっさと行くぞ」と言うとさっき聞こえていたのと同じ足音で歩き出した。


さっきとは比べ物にならないペースでどんどん進んでいく。


これがリーダーの居るグループというものだ。


「ところで会長は幽霊とか怖くないんですか?」


黒山が奏臣に聞く。


それに奏臣は「…人を襲う幽霊なんているはずがないだろうしな。怖くない」と返した。


黒山は「そんな風に思ってるのか」と思う一方、なにかこの生徒会長に違和感を感じていた。


黒山が思う会長だったら「…私はまだ目で見て感じたことがないから何も言えないがな」とでも言いそうな

のに。


俺の中の会長はものすごく美化されてるんだな。と自分に呆れつつ思った黒山は特にその違和感を奏臣に聞

くことはしなかった。


サクサクと黒山たちは暗い森の中を進んでいく。


さっきまでおどおどしていてゆっくりとしか進んでいけなかった黒山たちが奏臣が来たことによって安心感

が高まり、どんどんと進んでいけるようになった。


これが行く前に会長が言ってたことかぁ。と黒山は考える。


そしてそこでも黒山は違和感を覚える。


どういう違和感なのかはわからないが、なにか見逃していることがある感じがずっと黒山の中で暴れまわ

る。


その違和感の正体を考えているうちにありえないことに少し開けたところに出た。


ここが終点のようだ。


ここだけ木が生えるのを嫌ったように開けていて、その空間の一番奥にある木の根元に机が置いてあり、机

の上に御札が貼ってある。


それ以外はなにもないか…と黒山が呟くと


「うわぁ…」


上を見上げた咲川が感嘆の声を漏らしていた。それに気付いた黒山も空を見上げると


…星だ。


空に広がる街じゃ絶対に見れないような一面の星空。


雲ひとつない快晴。周りを森に囲まれていることによる暗さ。そして空気の綺麗さ。


それらが組み合わさってやさしい星びかりが黒山たちを照らしている。


まさに絶景だった。


「ん…ううん…?」


黒山の手の中で寝ていた櫻木がちょうど目を覚ました。


そして角度的にちょうど目を開けると見えるのは黒山たちと同じ星空。


櫻木も目を覚ました直後なのに思わず「きれい…」と呟いていた。


「ははっ、すげぇこんな星見たことないぜ」


牙忍が星を見てはしゃいでいる。


「…やっぱりここの景色はいいな。もっと昔に知っていればよかった」


奏臣が星を見ながら言う。


「ここの景色見に来たことあるんですか?」


と黒山が櫻木を下ろしながら聞く。


それに奏臣は「…あぁ。何回かな。壁にぶち当たったり、超えられなかったりしたときはよくここに来てい

た。この景色を見ると悩んでいることがどうでも良くなってくる」と返した。


わかる気がする。


こんな壮大な景色を見せられたら俺だって「俺の悩んでいたことってちっぽけなことだったんだな」と思う

だろう。


ここで黒山は「この人もやっぱり普通の人間なんだ」と思った。


この人なりに色々苦労してきたんだろう。メイクの話が本当だったとしても。そうじゃなきゃこんな大物に

はなれっこない。と黒山は考えた。


黒山たちは帰りの時間が来るまでずっとそこに居た。


その間の時間は星空の下、みんなで話していた。


将来の夢とか、恋話とか、明るい話を。ずっと。


ここ最近黒山たちは組織に襲われたり忙しかったからこんな時間が長く続けばいいのになんて考えていた。


しかし


「…そろそろ時間だな。戻るぞ」


奏臣が懐中電灯裏の時計を見て黒山たちに向けながらそう言った。


黒山たちが向けられた懐中電灯を見ると残り時間が既に15分を切っていた。


「もうそんな時間かー。まだ合宿が始まった初日なのに名残惜しくなってきたぜ」


「奇遇だな。俺もだ黒山」「私もだよー」「私もなのです」「もちろん私も」


5人がそんな事を言って最後に全員で一笑いした。


そして指令である御札をペリっと剥がして手に取る。


黒山が持った瞬間、突然に御札が光り始めて光が黒山を包み込んだ。


そして黒山は声を聞いた。


「ようやくだな。一体いつになるのか私にもわからなかったよ黒山とやら」


光りに包まれた中で


「この声…あの時の誰か?」


黒山はこの声を聞いたことがある。俺と牙忍が組織に囚われたときにこの声は初めて現れて俺を諭した。


仲間を待てと。


「やっと私はお前の意識下に入ることができる。新たなる力の獲得だ。よろこべ」


声は黒山にまだ訳のわからないことを言い放ち、混乱させる。


黒山はその声に「新たなる力…?どういうことだ?」と聞いた。


「使えばわかるさ。力が必要になれば私の名を叫ぶといい。『フランマ』とな」


フランマと名乗ったその声は黒山の聞いたことを完全に流して話す。


「フランマ…?」


フランマが光の向こうに現れた。


逆光で詳しい姿は見えなかったが、シルエットだけが黒山にかろうじて見えた。


「天使の…翼…?」


そのフランマには羽が2つ生えていて、シルエットはまるで絵に出てくるような天使に似た姿だった。


「さぁ!私とともに破壊の限りを尽くそうじゃないか!」


そう言ったフランマは黒山の目の前まで瞬間的に移動し、黒山と重なった。


するとフランマの姿も消え、黒山を包んでいた光もサーっと拡散してしまった。


黒山を包んでいた光が消え、その場に懐中電灯の光だけが残った。


何が起こったか黒山も黒山以外も何もわかっておらず、ただ黒山が光に飲み込まれてまた現れた程度にしか

考えていないようだ。


黒山は光から解き放たれて呆然としていたが、すぐ我に返って自分の手を握ったり閉じたりする。


「何が起きたんだ?」と呟いた。


「あれ会長はどこです?」


唐突にそう言ったのは咲川だった。


黒山たちも周りを見渡してみるとどこにも奏臣の姿はなかった。ただ懐中電灯だけが土の上に置かれてい

た。


「光に夢中になってて気づかなかったけど1人で先に戻っちゃったのかなぁ」


櫻木が残念そうな声で言う。


するとピピピピと懐中電灯が大音量で鳴った。


あわてて黒山が拾うと音は止み、裏のタイマーは残り時間が15分と書いてあった。


「やべ!早く戻らないと終わるぞ。急げー!」


慌ててもと来た道を戻っていく黒山たち。


開けたところから全員が居なくなるとまたその場所に静寂が訪れた。




「はぁはぁ…セーフ…」


森の入口に着いたと同時にタイマーがピピピピと鳴り始めた。


黒山たちはギリギリ走って時間内に到着することが出来て疲れ果て倒れていた。


「…ギリギリだったな。おつかれ」


そう言いながら奏臣が水の入ったペットボトルを全員に投げる。


1個会長に聞きたいことがあったがまずは水分補給が先だ。と黒山は水を少量飲む。


プハァ…と黒山は息を吐き出す。


「結構遅かったですね。幽霊にでも会ったかい?」


建物から歩いてきた天川がタバコを吹かしながらてくてくと歩いてくる。


それを見た奏臣が怪訝な顔をして


「…一応今ここでタバコはやめてくれ。未成年が居るんだ」と天川に言った。


別に外だから大丈夫でしょ。と天川は反論したが奏臣は「…ダメだ。そもそもお前が吸ってるやつはかなり

危ないやつだからな。副流煙の被害が普通のタバコの比じゃないんだ」と返した。


「それもそうだな」と天川はタバコを地面に落とし踏みつけて鎮火した。


そんなタバコ吸ってて大丈夫なのか?と黒山は疑問になったが多分大丈夫じゃないんだろう。と自己完結し

た。


「そういえばなんで会長は先に行ってしまったんです?」


咲川が黒山の聞きたかったことを聞いた。


すると奏臣は「?」の表情をすると


「…なんのことだ?私はずっとここに居たぞ?」と衝撃的なことを言った。


全員目が点になった。


「え?居ましたよね」「居たと思うんだが…」「信二くん〜」


1人愛に酔ってるやつが居たが全員奏臣がいた事の記憶があるそうだ。


その様子を見て天川が「乳コンならずっとここに居ましたよ。私と話してましたし、さっき建物から出てき

たのはタバコを取りに行っただけですよ」と言った。


黒山たちが全員震え上がる。


一瞬森がそれに呼応するかのようにサァッと風に吹かれた。


「そういえば…」


咲川がゆっくり口を開く。


「あの会長少しおかしかったです。会長は基本的に言ったことは覆さないですし…、あんな決めつけたりし

ません…」


静けさがその場を支配する。


「え?じゃああの会長は…誰だ?」


黒山のその言葉から一瞬の間が開いた後、


「「「「ギィャアアアアアア!!!」」」」


と黒山櫻木牙忍咲川が思いっきり叫んだ。


まだ初日、明日にはどんなことがあるのだろうか。




合宿初日就寝時間。


ほぼすべての部屋は消灯され、旅館内は暗闇と静けさに包まれていた。


黒山たちの部屋には布団が2枚敷かれていて、そこに牙忍と黒山が1人ずつ入っている。


黒山は寝れずに布団をかぶっていた。子供っぽいと思うかもしれないが肝試しの偽会長に怖がって寝れてい

ないのだ。


そんなことをまったく気にせず隣では牙忍がいびきをたてながらグォーと寝ている。


こいつのいびきうるせぇ…。鼻つまんでやろうかな。と黒山は思ったが牙忍が窒息しそうなのでやめておい

た。


すると


「寝れないか相棒」


そんな声が頭の中に直接響いてきた。


その瞬間から黒山の意識が自身の中に入っていく。眠りとはまた違う感覚だ。


気がつくと黒山は真っ白な何もない空間に立っていた。


黒山の反対側には羽をつけ、ふわふわとした衣を身に着けている優しそうな男が黒山と対峙するように立っ

ている。


その男は口を動かして声を発する。


「やぁ相棒。こうやって面と向かって合うのは初めてだね」と言った。


それに黒山は「お前が…フランマか?」と男に質問した。


「そうだよ。僕がフランマさ」


男はあっさりと言った。


フランマは羽を触りながら「やっと自由に暴れられるよ。君と縁があってよかった」とニコニコして言う。


「お前、新たなる力とか言ってたが一体どういうことだ?」


黒山は半分にらみながらフランマに聞く。


フランマは黒山の頭を指さしながら、


「それはね。私が君の力になり、守りたいものを守る力を与えようということだよ」と言った。


黒山は一瞬考え、「じゃあお前の力がどんなものか教えてくれ」と言った。


フランマは「いいよ」と答え、


「百聞は一見にしかず。本気で私にかかってこい相棒」と続けた。


黒山は腕を鳴らしながら「望むところだ」と言い、能力を最大まで使って身体能力を上げる。


それを見てフランマはじーっと目を凝らし、黒山を見る。


「何か?」と黒山は聞いたが「別に」とそっけなくフランマは返す。


1回深呼吸をして黒山は


「じゃ、遠慮なく行かせてもらうぜ!」と言い、爆発的にフランマに突進していった。


黒山が爆発的に到達する直前にフランマは一言、


「炎幻」


と言った。


直後、黒山が到達し、動かないフランマに一発拳をぶつける。


するとフランマの形が崩れてボォっと消えてしまった。


慌てて周りを確認するが


「遅い。裁剣」


時すでに遅し。


フランマはいつの間にか生み出した炎をまとった剣で黒山を滅多切りにする。


黒山の体が真っ黒に焦げた。


その場で黒山は倒れる。


だがすぐに復活して立ち上がる。


黒山の共有能力、「身体蘇生」。どんな傷でも、死んでいたとしても修復し生き返ることができる身体再生

の強化能力。


しかし


「だから遅い。復活の時間はタイムロスだ」


フランマは復活した黒山の目の前で待機していた。そして


「裁炎」


そう唱えると黒山の周囲にポータルが現れ、その瞬間ポータルから炎柱が勢いよく吹き出し黒山をまたして

も黒焦げにする。


その後は復活、黒焦げ、復活、黒焦げの繰り返し。


途中何回か黒山は反撃しようとしたがそのたびに炎柱の勢いが強くなりまた黒焦げになってしまう。


最終的に黒山がギブアップして終わった。




対戦後、フランマはニコニコ笑って


「これが君の力になるんだ。いい話だろう?」と言った。


床に倒れ、「…このバケモン…」と思った黒山は一瞬悩んでから


「いやまだいい」と返した。フランマはそれを聞いて驚いたような顔になる。


「どうしてだい?なにか不都合でも?」とフランマは黒山に聞いた。


黒山は「お前が強いのはわかった。でもそんな強大な力を俺は簡単に手に入れたくない。そんな力を簡単に

手に入れて人を守っても虚しくなるだけだ」と答える。


フランマは真顔になって黒山を見たがすぐにニヤリと笑って


「いい心がけだ。さすが相棒。私は待ってるからいつでも呼んでほしい。力になってやろう」と言った。


あ、相棒の心のなかにはいつもいるので時々出てきますよ。と付け加えて。


2人でクスリと笑った。


そのまま黒山の意識は闇に落ちていった。

こんにちはsakuです

あの声の正体が明かされましたね

もちろん重要人物です

フランマはいわゆる精霊的なものです

なので実体は持ちませんし、縁があった黒山の体がないと存在できません

面白ければブックマークや評価を、なにか直すべき所があれば教えて下さい


それでは、また来週

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ