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生徒会

朝、学校に着く前に櫻木と合流した。


いつもの制服、いつものツインテールにした髪の毛。


そして、


「そろそろ腕離してくんない?暑い」


「やーだー、私は別に暑くないしー」


「いーや、俺が暑いんだよ、今日は夏日だって言ってたし、春ももう終わりそうなんだよ!」


腕に捕まっている櫻木を振りほどこうとしながら黒山は言う。実際、両手を使ってがっしりとホールドしているので彼の腕に何かふっくらとした感触が伝わっていて、そういうものの経験がない彼はあたふたとどうすればいいか顔を赤らめながら混乱している。


黒山の腕にがっしりと捕まっている櫻木は渋々といった様子で腕を離し、代わりに黒山の隣を歩く。


ちなみに腕を解こうとしたのは暑いのと何かふっくらとしたものを離させようとしただけではなく、周りの男子(女子も一部)たちが今すぐにでも凶器を持ってきて全員で自分たちを殺りに来そうだったものもあったが、櫻木は全くそいつらが見えていないようだ。


多分だが櫻木には興味のあるものにしか見えなくなるという特徴でもあるのだろうか。


「そういえば生徒会の仕事って何?」


櫻木が尋ねてきた。多分行く前に電話で話した内容のことだろう。まぁ別に言っちゃいけないようなもので

はないから言っても大丈夫か、櫻木だし。


「図書室の本の整理だよ。最近、本を借りる人が増えてるらしいから図書委員会が整理が全く終わらないっていう感じみたいで図書委員長が会長に涙ながらに訴えてきたらしいんだよ。んで、その助太刀に俺が行くわけ」


話が終わると櫻木が食い気味に、


「じゃあ私も行ってもいい?」と言ってきた。


「ん?まぁいいぞ別に。人手が増えるのはいいことだからな。それじゃ、ボランティアってことで昼休み図

書室集合な」


わかったー、と櫻木が返事を返すと道に奥の方に学校が見えてきた。


あと少しで学校だ。いつもの学校生活に思いを馳せ、残りの通学路を進んで行く。


 学校に着いたが、朝に一回生徒会室に集まることになっている。ということで一旦櫻木とは離れ、四階建ての学校のみな南校舎最上階にある生徒会室に向かう。


生徒会室のドアは両開きのものだ。この学校は生徒会が一番権力を持っている学校であり、部屋も豪華になっている。


両開きのドアの左側を開け生徒会室に入る。


中は普通の学校の校長室みたいになっており、真ん中に大きいテーブル、その左側と右側に三人がけのソファが2つ、左側の壁の前には何やら本棚が置いてあり、中には今までの生徒会長が書いた本がいっぱいに入っている。左側の壁には今までの生徒会長の写真が貼ってある。そして部屋の奥にはよくラスボスが使っているような机が置いてあり、その上には現生徒会長の名前が書いてあるプレートが置いてある。そしてその

後ろに大きい窓が貼ってある。


その左側のソファにはすでに来ていたピンク髪と黃髪の二人の生徒会のメンバーが座って話している。もっとも、話の内容は、


「無料ガチャで最レア当てた」


「くたばれ」


というソシャゲの話なのだが。


最レアを当てたと言っているやや暗めな黄髪の男が牙忍隼。普段はおちゃらけているが女子の前では異様な身体能力を発揮するやつだ。俺とは仲はいい、俺も同じゲームをやっているからだ。


くたばれと言っていたピンク髪が幽美聖奈。今はこんな言葉遣いだが、普段はおしとやかで優しい女性だ。


この人がこんな言葉遣いになるなんて、まぁ最レア確率0.5だから仕方ないか。牙忍と同じでゲーム仲間として仲はいい。


そして今生徒会室の奥の机に座っている現生徒会長、奏臣真子。学校設立から今に至るまでの秀才だらけの生徒会長の中で一番の天才。そして数々の伝説を作るほどの身体能力。多分今でも化け物揃いの生徒会の中で会長以外の全員がが手を組んだとしても勝てないだろう。さらに腰まで伸ばした黒髪。キリッとした目。程よい自己主張の唇。美しさも学校内一位というまさに隙なし(ミスコン二年連続優勝)。


その彼女は今机に向かって険しい顔でパソコンとにらめっこしている。


「何してるんですか会長」


会長はいかにもだるいといった調子で、


「…昨日限りでクビにしたあのバカの後処理に追われている。まったく、あいつ自分の罪を謝罪するどころか『俺に預けた黒山が悪い』などとほざいて、さすがにここにはおいておけない。ということで後処理をしたあとこの学校から追放することにした」と言った。


会長の周りに怒りのオーラが漂っている。俺は何も悪くないと思うが少したじろいでしまう。


この人に言葉と屁理屈で歯向かうなんて馬鹿だなぁあいつ、ていうか俺のせいにしようとしてたのか。それはさすがに俺でも人としてどうかとは思うな。


「追放って大丈夫なんですか?けっこう口止めされてることもありますし、そもそもヘマをしたってだけで退学なんて文句を言いに親が飛んで来ても知りませんよ。学校は失敗を学ぶためにあると思いますし」


と、牙忍が自分は迷惑ごとには関わりたくありませんよと先に釘を差して言った。


その質問に会長は


「…失敗を学ぶと言ってもあいつの場合は失敗が多すぎるんだ。そしてその度に『反省します』というお決まりのセリフを吐くか、他人のせいにしていた。流石にそれではここにいることを許可できない。50回目という節目だからこそ、この処罰をくだせた。口止めさせている話はこっちでなんとかしている。外に出ることはないということは断言しよう」


一体どういうような手法で断言できるんですかねー、ホントこの人どんなことをしてるんだろう。


するとドアの左側が開いた。が誰も入ってこない。


いたずらだろうか、と思っていたら下の方から声が聞こえてきた。


「おはようございます…」


下を見ると小6ぐらいの背をした女の子が立っていた。


目の下にできたクマ、ふわっとし、ほっぺにちょっとかかっている明るい青の髪、そして一番の特徴はなん

と言っても、着ている服だ。大人の白衣を着ているため手は萌え袖のようになっており、だらだらと伸びたズボンは地面を引きずっている。


生徒会の中の癒し役、幼女担当、咲川白音だ。


「…咲川さん、あなたまた学校に泊まって実験してましたね。水道代と電気代が結構来てるんですよ今月。少し控えてください」


と会長が言うと咲川が弁明した。


「違うんですよ…、いつも実験に夢中になっちゃって気がついたら朝になってるだけなのですよ…、お金の話なら私が以前作った高校生昏睡続出の事件で起きた昏睡を治すお薬のレシピを学校を経由して製薬会社に買っていただいたので少し大目に見てくださいです…」


たぶん寝てないのだろう、フラフラしながら咲川が弁明してるのを見てこいつ本当に俺と同い年か?と疑い

たくなってくる。


「…その薬のことだけど、もう昏睡の原理が変わってしまったからその薬はもう効かなくなってしまったんですよ」


えぇー!!じゃああの私の苦労はいづこへー!!もしかしてもう一回徹夜ー!?と叫んでいるのを見て全員頭を抱える、そして一斉に全員こう思う。


「「「「学校に泊まるのを控えろって言われたような気がするん(だけどな)(ですけど)」」」」


「…ともかく全員集まったな、朝会を始めよう」


会長がそう言うと全員の顔つきが変わり、俺と咲川は右側のソファに座った。



 全員が座ると一呼吸空け、会長が話し始めた。


「…今日は特に急ぎの用事はなにもないが、放課後に人間性の有無の確認テストを実施するらしいということで放課後はここに。今日の役割としては牙忍が風紀の見回り、異人が無断で能力を使っていないかを重点的に。幽美と黒山が教師たちの手伝い、あと黒山は図書室の本の整理。咲川はいつもどおり新薬の制作、今回は原理が変わった昏睡回復薬の制作をメインに。今回の原理についてはデータを送っておく」


この生徒会は化け物揃いのためここに収監されていると言っても過言ではない(あのバカのような例外はたまにいるらしいが)。


つまりここは化け物をいかに人間に近づけられるかという場所だ。学校自体は普通の私立高校だが、異様に身体能力が発達しすぎた者や脳の構造が変質し野良で生活させることが危険なもの、などの特殊な人間たちを集め、人間にどこまで戻せるかを試すという場所、簡単に言えば超能力者調教機関というものだろう。


自分たちの他にもそのような化け物たちは学校にいるが皆口止めされ、普通の生活を送っている。あくまで調教としての。


そのような化け物は総称して異人と呼ばれている。「ひとならざるもの」というのが主な意味らしい。生徒会は能力を最大限発揮しても暴走する危険や本人の意志で暴れだす危険はないと評価されている異人が集まって、学校のために能力を使うことができる便利屋みたいな集団だ。


 「あと、」


会長はそこで言葉を切って俺を見た。


「黒山、お前は図書室には櫻木と行って来い」


俺は朝の話を思い出して、会長たちに櫻木との会話を話した。


 会長は、安堵したように息をついて、


「…了解した」


と言った。が、まだ話は終わっていなかった。


「…わかってるだろうな、黒山。お前の任務は彼女を守ることだ。絶対に、なんとしてでも…いっそその生命を投げ出しても、守りきれ」


苦い思い出を噛みしめるような厳しい口調で会長は言った。


話の話題が変わり、瞬間から、部屋の雰囲気が晴れの日の朝にも関わらず、重苦しくなっていく。


いつの間にか、部屋は薄暗くなっており、先代生徒会長の肖像達が不気味な笑みを浮かべているように見えた。


置いてある本棚の、本の背表紙に書いてある文字が、段々と読めなくなっていった。


窓の外は朝にも関わらず、暗くなっていて漆黒が広がっている。


部屋に掛けてある時計のコチ…コチという音がだんだんと、音を外していき、不気味になっていく。ついに

は、時計の針さえもぐにゃりと曲がり、正確な時間はもうわからなくなっている。


そして、その音の外れ方がある一点を通過し、何か大きな雄叫びのようなものが響き渡ると、会長がポツリ

と、一言。


「来たな」


その声は、これから始まる長いようで、短い戦いのファンファーレだった。



 すべての命は皆等しく、「平等」である。


だがそうであるからこそ奪われる。


ならば奪われないためにはどうすればいい。


答えは「不平等」であること、それだけだ。


「不平等」の頂点に立つために集まった人間たちが一つの組織を作った。


そいつらは様々な研究に没頭し、最終的に自然界に存在しない秘術を生み出すほどになった。


その秘術で狙うのは、異人。


圧倒的な力で好きなように人の命を奪うことができ、人間を遥かに超越した能力で人間の役割をなくす。


そんな「不平等」の頂点を無視しておくわけにはいかない。


現在では異人とひとくくりにしてかなりの数の犠牲者が出ている。


負傷者はいない。彼らは目的のためなら何でも絶対にこなす。


標的の異人が身内にいたとしても、彼らはためらわない。


そしてその組織の刺客が今、生徒会に襲いかかる。

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