救出
17章
「…私が出るまでもないな」
奏臣はポツリと呟く。
あの迎撃秘術を粉々に壊したら下位メンバーしか出てこなくなったので、激おこの櫻木とこの周辺一帯を自
らのフィールドに設定した幽美が無双している。
ちなみに咲川は私の後ろでこの建物の構造を音の反響で調べている。
やはり咲川の能力は逸材だ。
頭の高速回転だけではなく、五感を更に鋭くすることができる。さらに本人の地頭は最高だ。私を超えるほ
どに。
スカウトしてよかったな。と奏臣は思う。
幽美もフィールド内であれば組織幹部ぐらいの実力は出せる。もともとの体質の組み合わせで行う能力とい
うのはとても強いことを理解している。私もそうだからだ。
だが、生徒会に入る前、彼女は追い出されていたという話を聞いている。少し本人から話を聞いたことがあ
るがとある神社で複数人の子どもたちと生活していたようだ。
だがその子供のうち1人から泥棒の罪を着せられて追い出されたらしい。
思い出すだけでイライラする。人とはもとはすべてが平等であるはずなのに。
異人が世に出てからは変わってしまったな。
櫻木は…。あぁ…。強い。
だが櫻木は黒山や咲川と違って元のポテンシャルがあまり高くない。同じ能力を持っていても黒山のほうが
強い。だが彼女にはまだ秘密があると踏んでいる。
それが吉と出るか凶と出るか…ふふ、見ものだな。
あの黒山が借りているの能力も私の知識以上の力を発揮していた。それと同じようなものがあるかもしれな
いしな。
「出ました!これが全貌です!」
咲川の構造調べが終わったらしい。
奏臣が咲川の書いたこの建物の仮構造図を見る。
全部で4階建てで地下の階が5つほどあった。上の地上4階までは普通の事務所などとして使われているがその
表記には地下1階までしか書かれていない。今奏臣たちがいるのは地下1階のエレベーター前通路だ。
「…どこかにもっと地下への入口があるってことか。今が真夜中で良かったな」
真夜中ということでここまで楽に侵入することができたし、人も居ない。ここが勝負どころだ。
咲川の書いた仮構造図にはちゃんと地下5階までの階段も書いてある。しかしそれらが1階ずつ全て交互反対
側に設置されているらしい。これは地下に行くのに時間がかかりそうだ。
「…行くぞ。黒山たちを絶対に助け出す」
一通り下位メンバーを倒した生徒会は地下2階に向かうため階段へ向かう。
「あいつら…真っ直ぐに階段に向かってきてやがる!ここの構造バレてんじゃないのか!?」
「落ち着けキング。あいつらとて下準備も何もせずにこいつらを助けには来ないだろう。きっとここの構造
はバレている。だがそれならばあいつらが通る道がわかると考えれば良いんじゃないか?」
「どういうことだよ…。」
「迎え撃つのさ幹部全員で」
スモッグのその提案に全員乗り気だった。
幹部たちが作戦会議で盛り上がってる中、黒山はまだ牢獄にとらわれている。
ここからは体を分解しても出られない。
一つ一つの柵の間に電流のようなものが走ってるからだ。自分の無力さを黒山は悲観する。
なにかないか。と思い周りを見渡しす。すると全てが見慣れないものの中、1つだけ彼が知っているものがあ
った。
それは足元の魔法陣だ。
「これは…幽美の御札と同じ模様?」
記憶があやふやだが確かこのような模様だった気がする。あのショップングモール戦のときにそこかしこに
貼り付けていた御札。それと同じような模様だ。
「どうしてここにあるんだ?」
うっかり口に出してしまい、それを聞かれたのかキングが振り返った。
やべ…。と思ったがキングはすぐに元の方向へ向いていた。
黒山は安堵する。特にそれを聞かれても何もなかった思うがただただ怖かった。
すると、
「黒山、黒山」
という声が小声で聞こえてきた。
びっくりして声が出そうになるが直前で抑える。振り返ると球体のそばに倒れていた牙忍が薄目を開けてこ
っちを見ていた。
「起きたのか?」と小声で聞き返す。
「あぁ」という返事が帰ってくる。
その返事のあとに牙忍は続ける。
「拘束されてない俺が今目覚めたってなったらあいつらどうするかわかるよな。お前みたいに不死でもない
やつに。そういうことだ黙っておけよ」
とだけ言うとまた目をつぶって気絶したふりを始めた。
こんな原始的な方法でばれないのか。と思ったが、今までバレてないということは大丈夫か、と考えた。
そのやり取りの直後にこの部屋に新しい声が響いた。
「侵入者だそうだな」
声の元は影からだった。この部屋のどこかから現れ、幹部たちのところへ向かって行っている。
その声はとてつもなく低い声でたぶんボイスチェンジをしてるだろう。
服装も足までの長さがある真っ黒なコートをフードまでかぶっている、個人情報を一切出させない普通なら
怪しい服装だ。
背丈はキングぐらいの背丈でそこまで高いというわけではない。
コートの男はリンシャから状況を説明されると、顔をしかめた。
「生徒会長様か、動き出したってわけだな。今この男を連れて行かれるのはまずいな。まずは時間稼ぎから
だな」
コートの男が言った言葉に幹部たちが全員ひざまずいて「承知」と言う。
その後の話の内容はわからない。この部屋にレキを残して他は全員どこかへ行ってしまったからだ。
残ったレキはタブレットを触りながら時折こちらを見ている。
黒山は抜け出すなら今の内だなと思い、牙忍にアイコンタクトを送る。牙忍はちょうど目を開けていたよう
でそのアイコンタクトに気づく。
黒山は小声で牙忍に話しかける。
「あいつ1人だったらお前一人でも行ける。この柵はあいつの秘術だ。あいつさえ倒せば消えるはず」
「たしかにな。幹部たちがたくさんいるよりはマシだ。よし俺のタイミングで行くそれまでは待て」
牙忍はそう言うと再び目を閉じた。
レキがこっちを見ていたがすぐにまたタブレットを見る。
その後はしばらく静寂が流れる。
奏臣たちは今地下3階に着いたところだ。
地下1階の最初以外と2階にはまったく人が居なかった。人だけでもなく迎撃秘術もなかった。
「…誘導されてる感じか」
奏臣は呟く。
それか最初の方に人員を割きすぎのミスか?
いろいろな想像が頭をよぎる。だが今はそんな事を考えていても行くしかない。黒山たちをなるべく早く助
けなければ。
3階はなにかのオフィスのようになっていて、昔会社があったのかパソコンや資料がそのまま乱雑に置かれて
いる。
奏臣はそのうち1枚を手に取りホコリをはらって紙に書いてあることを読む。
特に面白そうな話題ではなさそうだ。この会社の普通の取引先名簿などが書いてあるようだ。
「…まとめ方が下手だなこの会社員。もっと知識を蓄えればいい内容になるのだがな、もったいない」
声が奏臣たちしか居ないオフィスに響く。
すると咲川がぴくんと反応し、小さな声で全員を集める。
全員集まると慌てているように咲川があわわと話し始める。
「向こうの出口から誰かが来てるみたいです!人数は6人でそのうち2人の音の反響の仕方に覚えがあるで
す。たぶん…幹部の人達かと!」
奏臣はそれを聞くと「そうか」とだけ言って1人で幹部か来ていると思われる出口に向かおうとする。
「まさか囮になるなんて考えてませんよね会長」
幽美が奏臣の肩に手を置いて動きを止めさせながら言う。
奏臣はその手を払い除け、
「…そうだ。私1人なら倒せずとも長時間の時間稼ぎはできる。黒山たち救出の方に人員も割ける。効率がい
いだろう」と言った。
幽美はそれを聞いて「はぁ」とため息をつく。
「死なないと思いますけど生きて帰ってきてください。救出が終わり次第、連絡します」
奏臣はそれに何も返さず無言で幹部がいるらしき方へ向かっていった。
周りの紙がひらっと舞う。
3人が取り残され、また静寂が周りを覆う。
「別の道へ迂回していきましょう。咲川さん案内をお願いします」
幽美は冷静に今やるべきことを再確認する。
迂回するためUターンし、オフィスから出る直前に後ろから爆発音が聞こえていたが気にも留めず、足を止め
ずにただ歩いていく。
「…」
「…」
「…」
未だ黒山たちは動かず、何も起こっていなかった。
まだレキが隙を見せていない。
その時まで待つんだ。
黒山は何もできない空間でずっと虚空を見いている。するとレキの方がタブレットから顔を上げ黒山に話し
かけてきた。
「ねぇ、君はどうして異人を守ろうと?」
「どうしてってそれはあいつらも同じ人間だからだよ。それ以外に理由なんてない」
レキは「ふーん」と返し、またタブレットを見る。
一体あのタブレットには何が書いているのだろう。そこまで熱中して見るようなものなのか?
「1つヒントを教えてあげるよ」
レキがまた話しかけてきた。
「ヒント?何のだ」
「異人についてのだよ」
「な!?わかるのか!?」
レキはコクリとうなずく。「詳しいことは企業秘密だけどね」と付け足して。
異人について分かれば世界から異人を消すこともできるかもしれない。黒山はそう思った。
「…教えてくれ」
敵からの情報だが知るに越したことはない。その情報が本物だとわからないと実行もできないしな。
レキが「いいよ」と言い、話し始める。
「僕たちの方で話せるのは、異人はどこからかエネルギーを受けて生まれていること。その何処かは僕たち
にもわかってない。そして秘術も同じ仕組みなんだ。違うのは先天的か後天的かの違いだけ。エネルギーを
発しているのも違うところだけどほぼ同じだね」
「ちょっと待て話されてる側の俺が言うことじゃないが秘術についても話して良いのか?お前らの必殺技な
んだろ?」
黒山はまだ話そうとしていたレキの言葉を遮って質問する。
それにレキはふっと笑って一言だけ答える。
「僕たちも殺したくて殺してるわけじゃないんだよ」
頭の中で?マークをいくつか作った黒山は
「それは一体どういうことだ?」と言ったが、
話はそこで途切れた。
建物全体に爆発音が響いて揺れた。
天井からホコリがパラパラと落ちてきた。レキはバランスを崩しておっとっとという感じによろける。
そしてその瞬間を待ってましたと言わんばかりに牙忍が起き上がり、レキに突進していく。
レキの持っていたタブレットがパタンと画面の方から床に落ちた。
牙忍はレキを押し倒して乗りかかり、レキの首を絞め気絶させようとする。
だが、
「秘術、意識なき処刑」
首を絞められて声が出せないはずのレキの口からその言葉が発せられた。
その瞬間、牙忍の体が目に悪いほどの強い光で光り、同時にビリリリリと大きな音を発した。
その光が消えた時、光の中から真っ黒に焦げた牙忍が現れ、動きを止めるとそのままパタリと床に倒れた。
牙忍が倒れたあと、レキは何事もなかったかのように立ち上がり、タブレットを拾い上げる。
「牙忍!おい!生きてるよな!おい!」
黒山は檻の中から叫ぶが、牙忍が反応することはない。
その黒山の様子を見てレキはタブレットと黒山を交互に見ながら「なるほどなるほど」というかんじでうん
うんうなずいている。
「てめぇよくも!」
黒山はまた叫ぶ。それにレキはめんどくさそうに答える。
「殺してはないよ。今の電流は人を死には至らしめない程度の電流だしね」
不意打ちも失敗した…。俺がもっと注意を引いていれば…。黒山は後悔する。
もうダメだと思った、だけど頭の中に直接誰かの声が聞こえてきた。
「見てられんな」
声は聞いたことがない声だった。でもなぜか親近感が湧いてくる。
気づくと周りの空間が真っ白になっていた。黒山自身はその場から動けない。少し離れたところに誰かが立
っているのが見えた。
「哀れだな。敵の思惑にはまり、挙げ句友達任せで自分は敵と仲良くお話だと。現実を楽観視しすぎだ。そ
んな程度で倒せる相手ではないだろう」
その人物はの詳しい姿は逆光で見えなかったがそいつが喋っているということはわかった。
じゃあどうすればよかったんだよ。何もしないのは負け犬のすることだ。方法はあれ以外にあったのかよ。
ていうかお前は誰なんだ。
「何もしないのが負け犬だと?哀れにもほどがある」
何だよ違うっていうのか!
「違うな」
声は断言する。
「お前とあの異人でなんとかできない問題なら諦めればいい。それは負け犬ではない。そもそも戦っても居
ない時点で負け犬でもなんでもない。仲間を信じるんだ」
仲間…?牙忍はもう倒れてる。ここに居る仲間なんて…。
「ますます哀れだ。お前がここに囚われている間にあの女が動かないわけ無いだろう」
あの女?誰だそいつは。
「そのうちわかる。そしてお前がやるべきことを再確認した時、その時は…力を貸そう」
声の人物がどんどん遠くに離れていっている。
最後に黒山は「ちょっとまて!お前は誰なんだ!」と聞いたが気付いたときにはもう元の牢獄に戻ってい
た。
「一体何なんだよ…」
黒山はつい声をこぼす。
次の瞬間。
シュルシュルシュル!と太い糸が部屋の出入口から飛んで入ってきて変わらずタブレットを見ていたレキに
絡みついた。
「っ!?秘術!」
レキはとっさに叫ぶとまた光が現れ、糸を伝っていった。しかし反応はない。
そのままレキの体に強く巻き付き、レキはタブレットを落とす。
部屋の出入口から、よく知る声が聞こえてきた。
「あ、見つけたー!ねぇねぇねぇやっぱり居たよ!信二くん!」
「あなたの読みどおりですね。咲川さん」
「当然なのです!あの光は明らかに現代にある機械や自然現象で出せるわけないのです!」
愛花と幽美と咲川だった。
幽美は一目散に俺の方へ走ってきた。
「幽美たち!?どうしてここに!?」
「詳しい話はあと!ん?この牢獄の魔法陣…私が使ってるのと同じ?もしかして!?」
幽美は何かに気付いたかのようにレキを見た。
「まさか…お前は…霊兎?」
レキに向かって話しかける。レキはそれに気づき幽美の顔をまじまじと見ると「あぁ」と思い出したかのよ
うに返事をした。
「なんだ聖奈じゃん。久しぶりだね。何年ぶりだっけ。一年ちょっとぶり?」
「黙れ、今更お前と仲良くする気なんかはない!逆にここに居てくれて丁度いいぐらいだ。あの恨みを今晴
らす!」
そう言う幽美の顔は普段とはかけ離れた鬼のような形相だった。
一体この2人に何が会ったんだ…?
黒山たちは2人のやり取りを見て呆然とするしかなかった。
6幹部対奏臣。
レキ対幽美
そして発端、黒山。
物語のピースは一つ一つパチパチとどんどん埋められていくがまだ全然足りていない。
真相に辿り着くのはいつになるのか。
こんにちはsakuです
今回までに結構な人間関係を明かしてきたんですが全部覚えてる人って居るんですかね
ちなみに私は覚えてません
メモを見ながら書いてるので多分そのうち覚えてくるとは思うんですが難しいですよね
ちなみにレキの強さは幹部の中で中堅下ぐらいです
面白ければブックマークや評価を、なにか直すべき所があれば教えて下さい
それでは、また来週




