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13話・スケルトンソルジャー

 

「ランドさんのクラスチェンジが無理なら、高位クラスの人を探して頼むしかないか……」

「難しいけど、そうなるだろうね……と、そろそろ町に着く筈だけど……」


 魔獣の渓谷から出発して暫く経つ。

 土地勘のあるランドさん曰く、そろそろ町に着いてもおかしくないらしいが。


「もしかしてあそこですか?」

「ちょっと待って、様子が変だ」


 警戒心を露わにするランドさん。

 確かにやたらと騒がしい。

 喧騒ではなく、悲鳴や怒号がよく聴こえてくる。


 この雰囲気を俺は知っていた。

 こちらの世界にやって来た直後に目の当たりにした、人とモンスターの戦争風景。


「まさか……行きましょうランドさん!」

「ああ、私も嫌な予感がする!」


 二人で全力疾走して向かう。

 やがてハッキリと町が見える位置に辿り着く。

 案の定、そこは戦場と化していた。


「町を守れ! 絶対にモンスターを入れるな!」

「うぎゃあ!? あ、足をやられた!」

「ここは死んでも通さねえぞモンスター共!」


 どうやら町の前で防衛戦を強いられているようだ。

 町の住民と思われる人々は、目視で約三十人前後。

 対してモンスターの数は倍以上。


 戦いは人間たちの方が圧倒的に劣勢。

 防衛線を破られ、町中にモンスターが雪崩れ込むまで然程時間は必要としないだろう。


 その後の惨劇を想像するのは容易だった。


「あのモンスターは……」

「スケルトンソルジャー……上位種の命令に絶対服従という奇妙なモンスターだけど、攻守共に優れた厄介な相手だよ」


 ランドさんが解説してくれる。

 そう、今町を集団で襲っているモンスターは、二年二組が初日に遭遇したモンスターと同種だった。


 上位種のモンスターに絶対服従……成る程、だから荒川に攻撃されても反撃してこなかったし、俺達が逃げても無反応だったのか。


「このままじゃ町は壊滅しますよね」

「うん、間違いなく」


 変身は……出来るな。

 けどそこまで長い間は維持出来なそうだ。

 さっきの無理がまだ尾を引いている。


「ランドさん、どうにかしてスケルトンソルジャー達を一箇所に集められませんか?」

「……分かった、やってみよう」

「ありがとうございます。俺いつでも出れるんで、ランドさんのタイミングで仕掛けましょう」


 変身のやり方は既に分かっている。

 ランドさんは注意深くスケルトンソルジャー達を観察し、仕掛ける機を伺っているようだ。


 ……俺もステータスを確認しておくか。


 比呂正義

 Lv12

 クラス 【ヒーロー】

 スキル 【復活】【変身】【武器生成】


 一気にLvが12まで上がっていた。

 それに素の状態でも新しいスキルを覚えている。

 表示された文字に触れると、画面が切り替わった。



【復活】


 英雄は死の淵からも帰還する。

 生涯に一度のみ使用可能。


【変身】


 自らが望む姿へ生まれ変わる。


【武器生成】


 強く記憶している武器を瞬間的に作り出す。



 スキルの説明が載っていた。

 どれも大雑把な説明で詳しい事は分からないが。

 ただ、武器生成は早速使えそうだ。


 本当は超光蹴撃で一箇所に集まったスケルトンソルジャーを一網打尽にするつもりだったが、武器が使えるならもっとやりやすい。


 ナイトアーマーの本領は剣技だからな。


「いくぞマサヨシ君! サンドストーム! 更にサンドストーム! トドメにサンドストーム!」


 好機を見つけたのか、ランドさんが仕掛けた。

 恐らく魔法を唱えたのだろう。

 砂や土が混じった三つの竜巻が発生する。


 竜巻は三方向からスケルトンソルジャー達を囲い、風圧で吹き飛ばしながら一箇所へ集めた。

 凄い、ここまで完璧にやってくれるなんて。


「ここまで連続……かつ、大規模な魔法は……ひ、久し振りだ……」

「助かりました、ランドさん! あとは任せてください!」」

「あ、ああ……た、頼んだよ……マサヨシ、君」


 ガクッとその場で崩れ落ちるランドさん。

 相当な無茶をしたようだ。

 全く、彼も人の事を言えないな。


「変身!」


 拳を突き上げながら変身する。

 俺の体は瞬く間に純白の鎧に包まれ、比呂正義から仮面戦士フォトンへと姿を変えた。


 そして……


「来い! 聖剣ピカピカリバー!」


【武器生成】スキルを早速使用する。

 生み出す武器は聖剣ピカピカリバー。

 フォトンが愛用する輝く長剣だ。


 ファンの間ではその名称のヘンテコさから「ピカ○ュウ剣」と揶揄されているのは内緒である。

 名前はアレでも、性能はピカイチだ。


 ピカピカリバーの名を叫んだ直後……本当に俺の右手にはプラチナ色に輝く長剣が生み出された。

 これで剣術『閃光シャイン剣』が扱える。


「皆さん! 下がっててください!」


 突然の竜巻発生と俺の登場に驚く町人達。

 ただ竜巻がスケルトンソルジャーを攻撃したからか、とりあえず敵だとは思われてないようだ。


 負傷者が多い事もあって戦線から離脱してくれる。

 威力は調節するつもりだが、万が一ってことを考えると人避けはした方が良いからな。


「はあああ……!」


 ピカピカリバーを両手で持ち、腰の辺りで留めながらエネルギーをチャージしていく。

 目標は当然スケルトンソルジャー。


 奴らはまだ一箇所に固まったままだ。

 サンドストームの威力で既に全体の一割くらいが死んだおかげで死骸が散らばり、足場を悪くしている。


 イメージするのは全てを斬り裂く長剣。

 長く鋭い光の刃。

 時間はかけられない以上、一撃で片付ける。


「シャイニング––––」


 刀身に収束させたエネルギーを解き放つ。

 すると光を纏った刃がぐんと伸び、刃先が見えないくらいのロングソードと化す。


 それを一気に、横薙ぎへ振るう。


「ロングブレイドォォォォォォ!」


 光の柱と言っても過言では無いピカピカリバーはスケルトンソルジャーの骨格を容易く断ち切り、動かす度に次々真っ二つに切断した。


「うおらああああああっ!」


 刀身を伸ばした分ピカピカリバーの重量も相当なモノになっていたが、気合いで振り抜く。

 そして弧を描き終えた刀身は元に戻った。


「スケルトンソルジャーが、一掃された……?」

「あ、あり得ない……あの数のモンスターを……」

「何者だ……あの白い男……?」


 町を襲ってスケルトンソルジャーは全てただの骸骨と化し、物言わぬ骨に成り果てた。

 山のように築かれた骨を見て町人達は呆然とする。


 その内、一人の男性が前に出た。

 額にバンダナを巻いた若者で、負傷はしているが他の町人達に比べたらまだまだ元気そうな雰囲気。


 彼は真剣な眼差しでスケルトンソルジャー達の亡骸を見たあと、俺を見る。

 どんな反応をされるかと身構えるが––––


「……何処の誰だか知らねえが、俺達自警団は正直言ってヤバかった。だからこの町を代表して、言わせてもらおう––––助かった、ありがとう!」


 意外にも、バンダナを巻いた若者は笑った。


「そして野郎共! なーにシケた面してやがる! 経緯はどうあれ、俺達は生き残ってモンスターは死んだ! つまり……俺達の勝ちだああああああっ!」


 彼は背負っていた大剣を鞘から抜き、切っ先にスケルトンソルジャーの頭蓋骨を引っ掛けて頭上に掲げると、雄々しい声で勝利宣言をした。


 直後。


「「「ウオオオオオオオオオオッ!」」」


 野太い声が戦場に轟いた。

 町人達は互いに勝利を称え、拳を突き合わせて隣を戦った戦友達の無事を確かめ合う。


 勝利の雄叫びはそのまま町にも電波したのか、様々な所から歓喜の声音が湧き上がる。

 小さな町と聞いていたが活気はあるようだ。


「オレの名はクラッシュだ! よければアンタの名前も教えてくれないか? 町で歓迎してえ!」

「俺は……リヒトと申します。私も元々この町に用があったので、是非訪れたいです。それから連れが一人いますが同行してもよろしいですか? 竜巻を生み出したのは彼ですから」

「勿論だ! オレとこの『ゼルンの町』は、お前らを歓迎するぜ!」


 クラッシュは豪快な笑みを浮かべながら言う。

 咄嗟に偽名を使ってしまったが、何処から俺達の情報が漏れるか分からない故の処置だ。


 因みに『リヒト』というのは仮面戦士フォトンに変身する主人公・勇気リヒトから取っていたりする。

 ランドさんの偽名はリヒトの仲間のマサルかな。

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