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11話・トドメの一撃は蹴り技

 

「は、はあ……?」


 ランドさんは俺の決め台詞を理解出来なかったようで、キョトンとした顔を浮かべている。

 ……とりあえず彼を降ろすか。


 男のお姫様抱っこなんて需要がなさすぎる。


「えーと、身体は大丈夫ですか?」

「あ、ああ……ところで君は、本当にあの……マサヨシ君なのかい?」


 一人で立ち上がったランドさん。

 彼は俺の身体を上から下まで見て驚いている。

 まあ面影なんて殆ど無いからな。


「それに、刺し傷や麻痺毒は……?」

「完治したみたいです」

「……世の中、不思議な事が起こるものだね」

「はい、俺もそう思います」


 彼にはそう言いつつ、実は心当たりがあった。

 突然追加された謎のスキル【復活】。

 字面通りの効果なら……そういう事なのだろう。


 恐らく、俺は一度死んでいる。

 大量の血を失った挙句にトドメの毒物。

 谷底への落下中に絶命したと考えるのが妥当だ。


 だがそこで、誰もが予期せぬ事態が発生する。

 謎のスキル【復活】によって……文字通り、比呂正義は復活して死を乗り越えた。


 しかもクラスともう一つのスキルのおまけ付きで。

 改めて自分のステータスを確認する。

 ブレスレットに触れればいいんだよな?


 比呂正義

 Lv1

 クラス 【ヒーロー(ナイトアーマー)】

 スキル 【復活】【変身】【閃光シャイン剣】【超光蹴撃(シャイニングブラスト)】【フルオーバーフラッシュ斬】


 ……何故かまたステータスが更新されていた。

 復活と変身の他に複数のスキルが追加されている。

 しかも全てが仮面戦士フォトンの必殺技だ。


 もしかして、今が変身後の姿だからか?


 だからクラスにナイトアーマーと記されている。

 ナイトアーマーとはフォトンの初期&基本アーマーで、一番出番の多かった姿だ。


 よく見ると他の能力値も上昇している。

 それも爆発的に。

 とてもじゃないがLv1とは思えない。


 そんな風にステータスを見ていると、冷静さを取り戻したランドさんが口を開いた。

 苦々しい表情を浮かべながら。


「……私も落ち着いてきた。まずはありがとう、マサヨシ君。私を助けてくれて……しかし」

「家族は人質にされているまま、ですね?」

「ああ。悪いが私は、このまま帰る事は出来ない。もう君を始末しようなんて事は考えてないが……どうにかしてマーリス様……いや、マーリスから家族を救い出す必要がある」


 そう、命は拾えたが問題は一つも解決してない。

 このままノコノコ城へ戻れば、俺もランドさんも今度こそ確実に息の根を止められる。


 それどころか任務を失敗したランドさんへの当てつけで、マーリスが彼の家族を殺すかもしれない。

 迂闊な行動は自らの首を絞めることになる。


「それについては、俺に考えがあります」

「ほ、本当かい?」

「はい、でもまずは……」


 俺は背後へ振り向きながら言った。


「アイツらを何とかしましょう」

「な、あのモンスターは……!?」


 いつのまにか、一匹のモンスターが近づいていた。


 見た目は巨大な亀。

 だが顔に当たる部分は獅子で、前足には二頭の蛇。

 後ろ足も同様で、尻尾は針のように鋭い。


 随分と不格好で奇妙な怪物だ。

 普段どうやって移動しているのか気になる。

 俺はランドさんに聞いてみた。


「ランドさん、あのモンスターに心当たりは?」

「……間違いない、キメラだ。決まった姿を持たないモンスターで、普通はこの世界に生息してない。レッドデイの最中にヒビ割れた空からやって来る」

「じゃあアイツは偶然この谷に落ちた個体と?」

「お、恐らくは」


 ……なんかマヌケなモンスターだな。

 レットデイの影響で現れたはいいものの、谷底に出現した所為で地上に出られないのか。


 危険なモンスターがウヨウヨしてる『魔獣の谷底』と聞いていたが、実際はさっきまでやたらと静かだった……多分コイツの影響だ。


 チラリと視線を落とせば、モンスターの死骸らしき物体があちこちに転がっている。

 他のモンスターは食べられてしまったのだろう。


「ランドさん、知ってると思いますが、俺は迷い人です。率直に聞きますけど、貴方とLv1の素人が戦って勝てる相手ですか?」

「絶対無理だ。まずLvが違いすぎる……戦場に現れるキメラは最低でもLv30はあるそうだ」


 参考までに、ランドさんのLvは25。


 これで平均より少し高いくらいのようだ。

 クラスはメイジで、下働きだったが城でマーリスの部下として働いていたとか。


「分かりました、それならランドさんは隠れててください。俺一人でやるんで」

「む、無茶だマサヨシ君! 理由は分からないが、折角拾った命を無駄にする気かい!?」

「大丈夫……勝ってみせます」


 それだけ言ってからキメラに向かって駆け出す。

 こんな奴に手こずっていたら、まだまだ実力未知数のマーリスを倒すなんて夢のまた夢だ。


 それに勝算だってある。

 あの高さからの落下を耐え抜いた身体能力。

 そして何より、今の俺は仮面戦士フォトン。


 フォトンが負けるのは、最終話手前の回だけだ!


「ゴ、ギギ、オオオオオオオッ!」


 意思があるのか無いのか、キメラは全身の毛が立つような恐ろしい雄叫びをあげる。

 同時に前足と化している二頭の蛇が動き出す。


 右足の蛇は赤く、左足の蛇は青い。

 まず攻撃を仕掛けてきたのは青蛇。

 大口を開けて丸呑みにしようとしてくる。


 成人男性をすっぽり覆うくらいに巨大な大顎には、噛まれたら痛いだけでは済まなさそうな牙がビッシリと並んでいた。


 絶望が形を成して襲ってくる恐怖。

 しかし……俺には見えていた。

 青蛇の動き、その全てが。


「……見える!」

「ギシャアアアアアアアアッ!」


 どれだけ迫力があっても、所詮は一直線の攻撃。

 仮面戦士状態の身体能力と動体視力を持ってすれば、回避は難しくない。


 身体を左に傾けて避けた後、身体を青蛇の顎の下へ潜り込ませながら右拳にエネルギーを集中させる。

 そして真上に向かって突き上げた。


「シャイニングアッパー!」

「ギシャッ!?」


 光輝く拳が青蛇の顎を打ち抜く。

 ぐわんと大きく身体を揺らすキメラ。

 瞬間、獅子の瞳が細められる。


 そして針のような尻尾が唸りを上げながら俺の体を貫こうと放たれた。

 青蛇よりも線が細い分、回避に専念する。


 右、左、右、右……身体を絶え間なく動かして捉えられないように立ち回った。

 そんな攻防が数分続く。


 これ以上は体力を無駄にするだけだな……仕方ない、多少のダメージは覚悟して突っ込もう。

 そう考え、行動に移した直後。


「ゴアアアアアアアアアッ!」

「ぐっ……!」


 待ってましたと言わんばかりの咆哮。

 それは空気の塊を射出してるのと殆ど同じだった。

 踏ん張ろうとするも叶わず、空中へ飛ばされる。


「ギシャアアアアアアアア!」

「キシャアアアアアアアア!」


 空中では受け身を取れないと知っているのか、赤蛇と青蛇が左右に分かれて攻撃してくる。

 ギラリと光る牙に反射して俺の体が映った。


 避けられない一撃。

 けれど俺にとっては好都合だった。

 空中ならランドさんを巻き込む事も無い。


「はあぁぁぁ……!」


 体に眠るエネルギーを限界ギリギリまで留め……二頭の蛇が近付いて来た直後に解き放った。


「シャイニング……バースト!」


 熱を帯びた光の放出。

 身体中から発せられる光の熱……言うなれば超光を間近で浴びた二頭の蛇は刹那の間に消し炭と化した。


「ゴ、ゴアアアアアッ!?」

「凄い……」


 動揺するキメラと感心するランドさん。

 さあ、そろそろフィナーレの時間だ。

 俺は空中からキメラを見下ろす。


「……トドメだ、正義の光に裁かれろ!」

「ゴアアアアアアアアアッ!」


 フォトンのキメ台詞を言いながら滑空する。

 キメラも大技が放たれると悟ったのか、圧縮された空気弾を放ち、尻尾針で追撃した。


 俺は足先にエネルギー収束させる。

 そのまま蹴り技のポーズをとり、超光を背中から放出してジェット機のように加速した。


「––––超光蹴撃(シャイニングブラスト)!」


 背中から放出する光を推進力に、足先へ集めたエネルギーを相手へ叩き込む。

 それが超光蹴撃という技の仕組みだ。


「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」


 まともに受けた生物は身体の内部から光で焼き焦がされ、最終的には全体が滅びる。

 当たれば即死のまさに必殺技。


 その例に漏れず、キメラも硬そうな甲羅の防御力を発揮出来ずに朽ち果てた。

 終わってみれば呆気なかったな。

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