悪役令嬢はため息をつく
初小説、初悪役令嬢!
ただ描いてみたかっただけなので、つじつま会ってなかったらすいません!!
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「はぁーーーー」
シルビアは盛大にため息をついた。
ため息ぐらい許してほしい。
だって今からは私は、心からお慕いしている婚約者に別れをつなげなければいけないのだから。
別れたくなどない。愛しているのだ。
けれど、私の婚約者アルノイド殿下は1年かそこらで、私ではない、平民の女の子に心を奪われ、添い遂げるのだ。
何故そんなことがわかるかって?
当然だ。私は知ってしまったのだ。
この世界が現世でいう乙女ゲーム「光と闇のコンチェ…なんとか」だということも。アルノイド殿下が攻略対象の1人だということも。
そして私が、ヒロインと殿下を引き裂く悪役令嬢、シルビア ナタス ということも。
それに気がついたのは、まだ私が5歳の頃。
お茶会という名の王族との縁談に出席し、当時6歳のアルノイド殿下と初めて顔を合わせた時である。
「はじめまして、シルビア ナタス令嬢。
私はサーチスト王国第1王子、アルノイド サーチストです!」
目の前に現れたのは、透き通るような優しい声に、やわからな笑みをたたえた、銀髪 緋眼の美少年。
幼い子供にもかかわらずしっかりとした挨拶に聡明さが伺える。
見惚れた、一瞬で恋に落ちた。
それと同時に湧き上がる違和感。
(あっ、攻略対象だ。)
(あれ?シルビアって悪役の?)
頭の中で知らないはずの言葉が次々と流れ込んでくる。
耐えきれずその場で倒れた私は3日ほど寝込んだ。
目が覚めた時、私は前世で高校生のまま亡くなったこと。この世界が妹と一緒にやっていた乙女ゲーム「光と闇のコンチェ…なんとか」なこと。
そして、わたしが悪役令嬢シルビアであることを悟った。
ゲームの舞台は魔法や剣、精霊や魔獣などか存在するサーチスト王国。庶民の身で魔法学校に入学したヒロインが5人…(いや6人だったかな?)の攻略対象と協力しつつなんやかんやで国を救っていく王道ストーリーだ。
(確か、攻略対象は各々心に闇を抱えてて、それをヒロインが癒す的な感じだったはず??)
(邪魔ものは私、シルビアと、あと2人ぐらいいたと思う。)
…お気づきだろうか。
ところ どころ情報が曖昧なことに…
そう、ゲームはほぼ妹がやっていて私は見ているだけだったのである。乙女ゲーム好きの妹にただ付き合ってやってただけだ。
正直、ゲームタイトルすら怪しい。
けれど、奇跡が起きた。
なんと、今現在のルートは私が唯一攻略したことのある第1王子アルノイドなのだ。
曖昧なくせに、何故わかるのかって?
何をかくそう、妹は鉄壁なるアルノイド推しであったのだ。当然、引くほど周回していたし、私はその様子をじっと見ていた。
ありがとう妹よ。
妹曰く、シルビアはアルノイドルートでしか出てこない悪役だが、中でも一番あくどい事をやるらしい。
実際、ゲームを進めると金や公爵の名を使いヒロインに毒をもろうとしたり(未遂)、男どもに襲わせようとさせたり(未遂)と…凄まじく破天荒であった。
さらに、性格は最悪で、弱いものにはとことん強くあたり、貴族以外の人間なんて端からゴミとしか考えていない。さらに嫉妬深く、婚約者の地位を鼻にかけ、ことある事に殿下にまとわり付いていた。
一方、アルノイド殿下は容姿端麗、成績優秀。優しい心の持ち主で、破天荒なシルビアに対しても優しい言葉で諭してくれていた。
王国を継ぐ者に相応しいお力をもっているが、
その分、孤独であった。その孤独の寂しさをヒロインが気づき、お互いに分かち合い、2人の距離は近づいていく。
ハッピーエンドでは、ヒロインと殿下がなんやかんやで、めでたく結婚。2人を引き裂くため様々な悪事を働いたシルビアは投獄され牢の中で一生を終える。
バッドエンドでは、シルビアが嫉妬に狂い殿下の目の前でヒロインを殺してしまい、心が壊れた殿下が闇に沈み魔王となり、王国を滅ぼしてしまう。
全てを知った私は、ある決意をした。
それは、アルノイド殿下を幸せにする事。
自分でも訳がわからない。
それほどまでに、あの時会った一瞬で恋に落ちてしまったのだ。
あの優しい笑顔を絶対に守ってあげたかったのだ。
そのためには、このルートはどうなるべきか。
私はヒロインを殺すつもりはないので、バッドエンドはありえない。
さらに、いじめる気もないので、牢獄生活もおそらくない。
目指すは殿下がヒロインと結婚し、幸せな人生を送る、正規ルート一択である。
確か、殿下とヒロインが出会うのは9年後。
ヒロインが魔法学校に入学するその日だったはすだ。
私はやるべき事をまとめた。
まずは、殿下の婚約者(仮)として殿下の恥にならないような振る舞いを身につける事。
そして、殿下とヒロインが出会う前に婚約を破棄する事。
破棄に関しては私の一方的な心変わりにしよう。ただ、この縁談は王家と公爵家の正当なもの。
殿下に話をする前に、父様に話をし公爵家との縁を切ってもらおう。
そうすれば、実家には迷惑がかからない。(よね?)
私はよくて、平民落ち。
最悪でも国外追放となるだろう。
あとは、何なりと生きていけばいい。
決意した私は凄かった。
婚約者として、必死に勉強したし、お妃教育も、これでもかというぐらい真剣に取り組んだ。殿下とも、困らせないよう適度な距離を守り、弱者をしいたげるようなことは絶対にしなかった。
私は全人生をアルノイド殿下に捧げたのだ。
大丈夫、全てうまくいっている。
ただ一つの誤算を言えば…
私がアルノイド殿下を前よりもずっと、ずっと
愛してしまった事である。
シルビアさんは王子が大好き。