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悔いなき日々を  作者: 今野小次郎
1/3

~プロローグ~誓い

楽しく書いていきますよ~

主人公の前世が短いですが、後で語る場面が出てきますのでご了承を。

追記…少し変更を加えました。

 目を開けると白い天井が見えた、見たことのない天井だったが、すぐに自分がどこにいるのか理解できた。病院だ。消毒液が鼻にしみ込んで来るかのような独特なこの匂いは間違いない。身体を起こそうと試みるが全く動かない。今までも、幾度となく病院のお世話にはなってきたが、身体が動かないのは初めての体験だった。


 目は動かせるので、周囲を見回してみると複数の人影が見える。視力が落ちている様でぼんやりとしか見えないが、こちらに向かって叫んでいるように()()()。そう、見えただけである。いくら耳を澄ませようが、音が一切聞こえない。「”どういう状況だこれは?”」心の中で考えてみるが、理解できない。いや、理解したくなかった。これまでの自分の人生がスライドショーのように流れていく。レールの上を只歩くだけの人生だった。そう途中までは……。


 いわゆる走馬灯を見終わり、だんだんと暗くなる視界の中、理解せざるを得なかった。


 俺の人生はここで終わるのだと。


 こうして 後悔無いように生きたはずの、一人の男の人生が幕を閉じた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 目を開けると白い天井が見える。


「”知らない天井だな……”」


 直前まで、死んだと考えていた俺は、再び天井が目に入ったことで、安堵していた。死ぬと理解してしまった瞬間の絶望感は、二度と味わいたくないものである。まあ、体の具合から言ってすぐに死ぬことになるのだろうが……? あれ?


「”おかしい……身体に異常が見当たらない”」


再び身体全体をスキャンしてみるが至って正常である。むしろ、普段より調子が良い。


「”なんだこれは、奇跡でも起こったか?”」


 そう考えながら、右腕を眼前にかざしてみると、目を疑う光景が見えた気がした。目を擦って、もう一度両手を見てみると、赤ん坊のような小さなおててが見える。意味が分からない。


 しばらく思考が停止していたが、混乱しながらも周りを眺めてみる。どうやら木組みの小さなベッドに寝かされているようで、背中がフカフカしていて気持ちがいい。木の隙間から部屋の様子を見てみると、木漏れ日に照らされながら、椅子に座って寝ている女性を見つけ、声を掛けてみる。


「あうあぅあーー!」


 赤ちゃん独特の甲高い叫び声が部屋に響く。普通に話しかけようとするが上手く声に出来ない。しかし、俺の声が目覚ましになったようで、椅子に座った女性が目を覚ました。


 女性は俺の方に目をやり、柔らかな表情を浮かべながら俺の前まで寄って来ると、声をかけてくる。


「ユーナ********」

「*****ユーナ*******」


 何を言っているのか理解できない、世界を旅していた関係もあり、様々な言語を習得しているにも関わらず何を言っているのかわからない。しかし、言葉は分からずとも表情で理解できる。


 俺のことを愛してくれている存在であると。


 俺が前世の記憶を取り戻してから2週間経った。その間に分かったことを、頭の中で軽くまとめてみる。


 俺はどうやら生まれ変わったらしい、周りに人がいないのを見計らって、ハイハイで家の中を旅したとき、発見した鏡の中には、前世の俺とは全く違う身体的特徴をした赤ちゃんがこちらを見ていた。赤ちゃんの時点で、筋肉隆々としていた爺さんだった前世と違うのは当たり前だが、そもそも髪の色が綺麗な銀髪で瞳が碧色をしている。どう見ても日本人ではない。


 それと母親と思しき女性が「ユーナ」「ユーナ」と、俺に話しかけてくることから考えると新しい名前はユーナであるようだ。女の子っぽい名前で、非常に焦ったが、下半身を確認すると、ちゃんとついていたので、れっきとした男のはずだ。何の問題もない……うん。


 次に世界についてだが、赤ん坊である俺に調べる手段がほとんどなく、町へ連れて行ってもらったときに見た街並みと風景、人々からの想像でしかないが、科学文明レベルは、前世より低いらしく、街並みは中世ヨーロッパのようだ。前世で足を運んだエストニアにあるタリンの旧市街を思い出す……


 あの頃は俺もまだ若く、散々無理をしたものだ。標的が写っている写真を無くし、誰を殺れば良いのか分からなくなった時だ。それなら組織まるごと潰せば問題無いだろと考えたのが間違いだった。問題があったのは俺の頭の方だった……って、そんなことはどうでも良い。それよりも現状確認だ。


 最後に魔法だ、これが一番驚いた。この世界には魔法があるらしく、あちらこちらで魔法を使用している様子が見られた。手から水を出して洗濯していたり、炎を出して料理をしている場面にも出くわした。生活にうまく溶け込んでいるようである。前世では、魔法なんてフィクションの中でしか見たことのない代物だったので、魔法で生活している風景は新鮮で異世界に来たと言う実感が湧いた。


 驚きの連続であったこの二週間であったが、その中で一番重要なことは、俺は前世で寿命を全うし、異世界で生まれ変わったという事実だろう。二週間という短い時間ですら、ここは前世とは違う世界であると理解することができた。それほどまでに、この世界は雰囲気が違う。生まれ変わった上に異世界と来たもんだ、何が原因だろうか?


 前世では、人間の寿命の短さを、儚さを知り、後悔の無いように生きたつもりだ。それなのに何故、異世界に転生したのだろうか? 何かやり忘れたことでもあっただろうか? そもそも、人生に憂い、遺志があったから生まれ変わったという考えが間違えているのだろうか? それとも神的存在の意思か? そこまで考えてふと思い至る。


 『いや……一つだけあった……か?』


 前世の俺は後悔を無くすため、努力し、手に入れた。『力』、『名声』、『金』、『地位』.....人間として人生を謳歌したつもりだったが、人生の最後死ぬ間際に感じた絶望、あの絶望の中身は何だった? だんだんと暗くなる視界の中、必死に手を伸ばしたその先に確かに何かがあった……

 

 そう、そうだ、女……俺の人生には女性がいなかったのか。彼女いない歴(76)の最後を看取ってくれる女性はいなかった。「”あのぼやけた視界をよく思い出せ!”」自分の心が……魂が俺に語りかけてくる。あの絶望の瞬間の景色が……左から、爺さん、マッチョなおっさん、筋肉質な爺さん、髭をこさえた爺さん、筋肉質な爺さんであった。名前が思い出せないが、皆親しかったおっさんと爺さんたちであった。


 俺は目から溢れ出る汗をぬぐいつつ、フカフカなベッドの上で、誓う。前世では成し遂げられず、最後の瞬間まで気が付かなかった、自分の後悔を。生まれ変われた幸運もしくは必然に感謝しながら。


 今度こそ『悔いなき人生を』と

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