劣等教室にようこそ。イケメン君
書いていると、だんだん手が痛くなるそんな常この頃。
人間の第一印象は見た目で決まるとは、よく言われることだ。
人は顔の良し悪しで、性格等を判断することがある。
当然、本当の性格というものは、その人としばらく過ごしてみないとわからな
い。
ただ、それを抜きにして、見た目とは他所の関心を掴む重要なポイントなの
だ。
アランが教室に入ると、生徒たちがざわつき始めた。
男子は悔しそうに、女子は声が弾んでいるように聞こえた。
それもそのはず、アランの顔は十人中十人が必ずそうだというほど、顔が整
っているのだ。
銀髪と碧眼のコントラストが絶妙にマッチしており、顔の形もシュッとして
いる。
体も高身長で、痩せすぎず、太りすぎずというバランスの良い体つきをして
いる。
アラン本人は気が付いていないが、ヴェロニカはこのことをとても誇りに思
っている。
なぜ、500年前にもてなかったかというと、王族の命で顔を隠して生活して
いたからである。
そもそも、当時の人々が魔王討伐を知ったのは、討伐された後のこと。
それ自体が秘匿されていたのである。
紆余曲折会って、アランは初めて公衆の面前で素顔をさらすことになるのだ
が、その効果は絶大だ。
ただ、ここでも当の本人はよくわかっておらず、首をかしげてしまう。
「皆さん。気持ちはわかりますが落ち着いてください」
コーネルアが注意すると、そのざわめきはすぐに収まった。
「今日から、この学園で学ぶことになった、アルデバラン君です。皆さん仲良
くしてあげてください」
苗字は名乗らない。ここではそれほど珍しいことでもない。平民からの人も
いるので、ない人もいる。
「アルデバランです。気軽にアランと呼んでください。よろしく、お願いしま
す」
慣れない敬語に若干詰まるものの、なんとか自己紹介をすますことができ
た。
「質問は休み時間にお願いします。アラン君は、あの席に座ってください」
指示されたのは、窓際の一番後ろの席だった。
アランは軽く返事をすると、その場所に速やかに向かった。
「あの」
席につくと、隣の席の子が話けて来た。
亜麻色でウェーブのかかった髪に、栗色の目をした少女だった。
「隣の席の、ミーナといいます。よろしくお願いします」
「あ、えーと。は、はい。よろしくお願いします」
「敬語苦手でしたら、普通で構いませんよ」
「そ、そう?なら俺も普通に話すから、ミーナさんも普通で」
「う、うん。アラン、君。よろしくね」
「ああ、こちらこそ」
「二人ともいいですか?」
コーネルアの声で我に返ると、二人は恥ずかしそうにしながら顔を前に
向けた。
「さて、皆さん。クラス対抗戦試合が、来週に迫ってきました」
コーネルアのこの一言で、先ほどまで、浮かれていたクラスメイトたちが、
一斉に暗い表情になった。
「先生」
一人の男子生徒が手を挙げた。
「なんでしょう?」
「それをやる意味はあるんですか?」
彼の一言にアランと一部の生徒以外は同意を示した。
「そうです。あんな一組が必ず勝つ試合なんて、する意味がありま
せん!!」
「ああ、あんな見せしめ、たまったもんじゃない!!」
「皆さんの気持ちはわかります。しかし、これはれっきとした行事
でして...」
「交流会という皮をかぶった、上位クラスのストレス発散試合じゃ
ないですか!?」
「そうだそうだ」と周囲からも怒号が響く。
「これは...」
突然のことにアランは一人呆然としていた。
「えーと。ごめんね」
それを察したのか、ミーナが申し訳ないように、声をかけてきた。
「年度の始まる月の最後に、各クラス対抗の親善試合をするんだ」
「ほ、ほう」
「でもね。私達五組は落ち込場れクラス。しかも、最初の対戦相手
は一組なんだ」
「つまりは」
「・・・・・・ほとんど歯が立たないまま終わっちゃうんだ」
「なるほど」
「一対一で行われるんだけど、クラスの代表三名がやられたら交代していくんだ」
「三人が倒れたら、そのクラスは負けということか」
「うん。一組は、魔力量もけた違いだから私達なんてすぐやら
れちゃうんだ」
「ふむ」
アランはその差がどれくらいか気になった。
この流れでは自分も参加することになるのだが、その時戦えるか
不安になる。
「何を言っているんだ!!」
一方でクラス全体では、ごく少人数の人が大多数を占める反対派
に食って掛かった。
「レオナ。君はまだそんなことを言っているのか?昨年だって無残
に負けたくせに」
「負けたからこそ、次に勝つんだ。虐げられた状況を打開するのは
あの場所しかない」
レオナと呼ばれた少女はプラチナブロンドの髪を一つに後ろで束
ねており、きりっとしたアメジストのような目を相手の男子生徒に
向けていた。
「レオナさんはこのクラスでも数少ない参加に積極的な人なんだ」
「へえ。因みにミーナさんは?」
「私?私は回復は専門だから、戦闘には向かないんだ。でも治療係
として参加するかな」
「そうか、ありがとう」
「うんん。アラン君はどうするの?」
「初めてだから、どうにも言えないかな。一週間あるならじっくり考えて決
めようと思う」
「そうだよね。ごめんね」
「気にす必要なないよ。気になるものさ」
結局この言い争いは、一時限目を軽く超え、二時限目に来た先生
によって止められるのだが、アランはその間、気になったことがあ
ったので、放課後に学園長室を訪れようと決めたのだ。
ヒロイン二人の登場です。