見るものすべてが
連続投稿です
朝食を済ませ、真新しい制服に着替える。
灰色のコートのようなブレザーとシャツ、ズボンのワンセットだ。
ここだけの話、この制服は実地訓練もあるため、動きやすいようになってい
る。
また、こっそりとではあるが、かつての勇者、アランが来ていたものに似せて
いるのだ。
そんなことは知る由もなく、アランはカバンを持って学校に向かった。
因みに、アランは家事が一通りできる。特に炊事に関してはヴェロニカに徹底
的に叩き込まれた。
なぜかと聞いてもそのうち解るの一点張りで、意味があるかわからなかった。
しかし、これが旅で大いに活躍した。
アランは「これか!!」と思い、ヴェロニカに感謝しているが、実際のヴェロ
ニカの考えとは違って いる。
さて、貰った地図を手掛かりに、今度は来た道を引き返す感覚で歩いた。
今度は周りのものには目を向けずに、ただひたすら地図と道を交互に見なが
ら、何とかたどり着くことができた。
校門の前には同じ制服を着た男女が、敷地内へと入っていく。
数人がアランの方をちらちらとみていた。
(?何か気に障っただろうか?)
首をかしげるアランだが、あまり気にせずに、校舎内に進んでいく。
職員室に行けとヴェロニカに言われていたので、そこに向かった。
(この学園は広いな)
以前学園を出る際にも思ったが、ここはかなりの敷地を保有している。
それもそのはず、この国自体にここまでの学園が存在しないのだ。
おおよそ80%の子供が階級関係なくこの学園に入学して、卒業していく。
そのため、職業のための施設や、戦闘訓練用の場所など様々な施設がこの学園
にあるのだ。
このマンモス学校は、校舎だけでも学園の四分の一を満たしているので、その
広さは破格だ。
当然のごとくアランは迷ってしまった。
どうしようかと途方に暮れていると、
「ああ、アラン君」
聞き覚えのある声がしたので振り返る。
すると、手を振りながらコーネルアがこちらに歩いてきた。
「ええっと。おはようございます?コーネルア、先生」
「ふふふ。まだ慣れませんね。あと、すいません。慣れてないと思って、校門で
待っていようと思った ら、早く来ていたなんて」
「いえ、早く着きすぎたもので」
「それはいいことです。では、今から職員室で手続きと軽い説明をしますので」
コーネルアの案内で、職員室に向かうアラン。
職員室では、大勢の先生が、仕事に明け暮れていた。
「珍しいですか?」
「はい、見るものすべてが」
学校という場所を知らない少年は、目に映るものすべてに心を躍らせていた。
「では、これが学生証で、今から学園について説明をします」
アランはしばらくの間、コーネルアから、この学園の施設のこと、校則のこと
などを説明された。
「基本的に私闘は双方の合意があれば成立します。記録はその学生証が自動で記
録しますので、一方的に攻撃されたなどのことがあった場合、学生証を通じて
こちらに通報される仕組みです」
「すごいですね」
「ここに至るまで、色々あったもので」
苦笑いを浮かべるコーネルア。それから、かなり大変だったのだろうとアラン
は察した。
「では、そろそろホームルームが始まります。アラン君はドアの前で待機して私
が読んだら入って来てください」
「解りました」
コーネルアに案内され、アランは階段を上がっていく。
「二学年の階は五階です。上の六階が三年、下が一年。最上階の七階には四年生
がいます」
途中で追加の説明を受けつつ、黙々と目的地へと足を運んでいく。
そのたびに、アランは胸を高鳴らしていた。
どんな人と合えるのか?そもそも同年代の人とはどんな人たちなのか?
考えるだけで気分が高揚した。
「ここです」
そうこうしているうちに、教室に着いた。
「では、ここで待っていてください」
一人残されたアランはかなり緊張した。
王族に謁見するよりはるかに緊張する。
深呼吸する。
自分なりの緊張緩和の方法だ。三回する頃には大分落ち着いてきた。
「入って来てください」
声がかかるのはほぼ同時だった。
(行くか!!)
新たな出会いを求め、アランはその第一歩を踏みだした。
コーネルアはヒロインではありません。もしやと思った方、申し訳ありません。