迷うとは出会うを誘発する
ヒロイン?かもしれない子の登場です
「ん...」
アランが目覚めたのは、ヴェロニカが用意した家の中だった。
目覚めは悪くない。今日からアランは入学する。
正直、緊張していないと言えばうそになる。
ゆっくりとベッドから出ると、階段を下りて一階のリビングに向かった。
その途中、昨日ここに着くまでのことを振り返った。
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仮眠室にとまった次の日に
「家があるからいけ」
といわれ、地図を頼りにその場所に向かっていった。
道中、アランは旧王都(本には気づいていない)の街の変化に驚きを隠せなかった。
土が露出していた道は、きれいに整備されており、露天商なるものはどこにもなく、道に沿うよう に、商店が軒を連ねていた。
道にも歩行者専用の道と、四角い箱のようなものが走る道が分かれており、その箱はすごい速さで、 彼の横を走っていった。
(変わってしまったな)
自分が解るものはものは中央にある城だけだった。ただ、昔見たものと少し違っていた。
それもそのはず、彼が最後に見た後に、ヴェロニカが城を粉々に破壊してしまったため、今見えてい るのは、観光のために復元されたものである。
そのことで、何か自分が解るものは無いかを無意識のうちに探していた。
結果、地図の道から外れてしまい、気付いたときは自分がどこにいるのかわからなくなってしまっ た。
(う~~~~ん。困った)
目的とは違うものを探すのに熱が入ってしまい、すっかりわからなくなってしまった。
日も傾きかけているため、できるだけ早く到着したかった。
困り果てていると、後ろから声がかかった。
「ねえ君」
弾んだ声だ、声からして女の子だろうか。
振り向くと、その子が立っていた。
残念なことに、顔は口より上はフードに覆われており、服も長袖に長ズボンとこれといって特徴のな い格好で性別を確定させることはできなかった。
「見た目からして旅の人かな?こんなとこでなにしているの?」
彼女?は微笑を浮かべながら話しかけた。
今のアランの服装は薄汚れたコートとシャツ、そしてズボンと旅をしていた時のままの格好で旅人と 間違われてもおかしくなかった。
「ああ、ここに来るのは初めてで、ここに行きたいんだけど...」
さすがに、昨日500年の眠りから覚めましたのどといえるはずもなく、あいまいにごまかして、本題に入った。
地図を見せると、彼女は?しばらく見つめ、顔を上げた。
「これは西地区だね。ここからすぐだよ。ついてきて」
彼女?はアランの手を引くと、来た道を引き返すように、歩き始めた。
「何でこの街に来たの?」
道中そんなことを聞かれ、アランは
「進学の為かな...」
と端的に返す。彼女?は「ふ~ん」とそっけなく返して、「いいなあ」とアランにも聞こえないような声でつぶやいた。
しばらく歩いて、地図の指すところに到着した。
きれいな二階建ての家...というには大きい。具体的には貴族の屋敷の半分くらいの大きさだろうか。一人で住むにはかなり広い。
「大きい家だね。お金持ちなの?」
「そう、なのかな...」
これを目の前にして、「いいえ違います」など言えるわけもない。
「そうだ。ここまで連れてきてくれてありがとう」
「うんん。私も楽しかったし全然大丈夫だよ」
笑顔を浮かべる彼女?に対して、アランはドキッとした。
「あ、ああそうだ。連れてきてくれたお礼」
「いいよ。別に他意があってやったわけじゃないから」
「それでも、とてもありがたいよ」
そういうと、アランは、小さな袋を取り出すと、そこから金貨を三枚ほど出して、彼女?に渡した。
「これはほんの気持ちだ。受け取って欲しい」
「え!?こ、こんなにもらえないよ。たかが道案内で」
「俺からすれば、かなり大切なことだ。だから受け取って欲しい」
「そ、そう?じゃ、じゃあ」
彼女はおずおずと受け取ると、大事そうにポケットにしまった。
「それじゃあ、私帰るね」
「大丈夫か?」
「君みたいに短くないよ。慣れてるからね」
「そう、か。気を付けて、何かあったら、いつでも来てくれ。力になる」
「ありがとう」
彼女?はにっこりと笑うと、アランの家を後にした。
(・・・・・・・初めてだな)
これまで、同年代の人と話すことはなかった彼にとって、彼女?との時間は特別なものだった。
(また会えそうな気がする)
胸を弾目せながら、アランは家の扉を押した。