目覚め、そして
花粉症がつらいです。これに風邪がついてくるとなお辛い。
それはそうとして、少し、時間が空きました。不定期ですが、時間があれば書いていきたいです。
やっと主人公が起きます。
では、どうぞ('ω')ノ
「ああ、アラン!!」
水晶が割れた途端。ヴェロニカはコーネルアが見ているのにも関わらず駆け出し、崩れ落ちる少年を抱きしめた。アランと呼ばれた少年は、未だ目を覚まさない。
コーネルアは、初めて見るヴェロニカの行動に驚きながらも、彼女の母親としての姿にとても感動していた。
(あの方がこんな姿を見せるなんて一体彼はどんな人なのでしょうか?)
疑問はたくさんあるが、今は二人の再開を喜ぼう。
「ヴェロニカ様。ここでは、冷えます。部屋に戻って彼を休めましょう」
優しく声をかけると、先ほどまで泣いていたらしく、鼻を軽く啜ると、
「そうだな、コーネルア。私は彼を背負うから、彼の剣を持っていてほしい」
彼女に言われ彼の腰に差してあったものを持ち上げた。ズシッとかなり重い。見た目もかなり珍し い、く鍔のようなものは無く、持ち手の部分は————恐らく剣身も同じだろう————綺麗な蒼だ。
「何をボウッとしている。早く行くぞ」
剣に見とれていると、どうやら先に行かれてしまったようだ。慌ててついていく。前方を見ると、男 子一人を背負って登っているヴェロニカの表情が階段を下だる時よりも、嬉しそうだった。
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寒い...つらい...暗い...
封印されて何年たったのか。自分では全然わからない。ただ、今も覚えているのは、封印される寸 前。あいつらが見せた憎たらしい笑みだった。
人を信じていた。愛していた。でも、裏切られた。
いや、街の人々が感謝してくれたのは事実だ。悪いのは王族だ。
俺が何をした。恨まれることをしたか?否。ない。あいつらも救われた人間のはずだ。なのに。
権力、血筋、力。そんなもので、人の価値は決まるのか?
この問いをずっと繰り返した。繰り返して、やめた。
もういい。人の考えはそれぞれだ。
ああ、ヴェロニカが言っていたな。人を見ろと。善と悪がある。それを見定めろと。
ごめん義母さん。俺、見定めることができなかった。勇者失格だな。
勇者とはいっても、もう疲れたよ。本音を言えば辛かった。やめたかった。
今度生まれ変わったら、普通の人になりたい。普通に学校に通って、普通に結婚したい。
勇者だったときは、誰とも関係を持てなかった。友人何て一人もいなかった。みんな、へこへこしてた。
そんなことを考えていると、ある日変化が起こった。まず、この空間が消えた唐突に。
「...ン。......!?」
声が、聞こえる。懐かしい声だ。ああ、もう聞けないと思った声だ。唯一の理解者の声だ。
俺はその方向にありったけ手を伸ばし———
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理事長室に戻ると、ヴェロニカは隣の部屋の仮眠スペースにあるベッドに彼を横たえた。
コーネルアは剣を近くに置くと、「お茶を入れてきます」と部屋を出て行った。
ヴェロニカは、ベッドに眠る愛息子の頬を優しくなでる。
幸い、一通り健康状態を調べると、問題はなさそうだ。ただ、驚くべきことは、あの水晶は、五百年 の間、彼の細胞を老化、劣化、腐敗させずに、常に健康な状態を保ち続けたことだ。これだけは、研究 をして理由を確かめる必要があるだろう。
だが、今は、息子の帰りを喜ぼう。
「う...う、ん」
一瞬息をのんだ。彼が目覚めようとしている。
「アラン?アラン!?」
声に反応するかのように、その瞼がゆっくりと開かれる。
「アラン!!!」
たまらず抱きしめる。
「私だ!ヴェロニカだ!!わかるか?」
「ヴェ、ロニカ。苦しい」
強く抱きしめてしまった。慌てて寝かせる。
「おはよう。アラン。気分はどうだい?」
彼の頭をなでながら、笑いかける。
「おはよう。義母さん。大丈夫」
ゆっくりと起き上がった。
すると、後ろからドアをノックする音が聞こえ、コーネルアが入ってきた。
「大丈夫だアラン。彼女は敵じゃない」
言うと、一瞬警戒態勢だった彼が、すっとほどいた。
「わああ、その、かなりイケメンですね」
その言葉にヴェロニカは自慢げに胸をそらす。
「ふふ。そうだろそうだろ。こいつはな...」
「ヴェロニカ。それよりも、聞きたいことがある」
アランが突然話しかけてきた。
「ん?どうした?」
「まず、彼女は誰だ?」
「ああ」と、ヴェロニカはコーネルアに手招きをする。コーネルアは近くに来ると、頭を下げた。
「初めまして、コーネルア・フランカスと申します。ヴェロニカ様の秘書をしております」
「彼女は、この学園の教師もしていてね。頼りにしているよ」
ここで、アランが首をかしげる。
「学園?なあヴェロニカ。その学園とはなんだ?そんなの王都にはないだろ」
誰でもこの言葉を聞けば、「彼大丈夫かな?」と思うだろ、だが、彼は特別だ。
「そうか、まずはそこからだな。いいかアラン。よく聞け」
緊張感が漂うアランがごくりと唾をのんだ。
「ここは、私達が過ごした時代じゃない。あれから約五百年先の時代だ」
彼女の言葉に、アランは息をのんだ。彼からすれば驚くべきことだ。
「そんな、俺には不老不死の能力何て持ってないぞ、いや、魔法か?」
「落ち着け。お前を封印したあの水晶が、恐らくお前を仮死状態にし凍保存したようだ。これも、一つの、仮説だから、まだ研究を進めるがな」
「五百年か...」
ぽつりと、つぶやく。そこには何かを失ったような、はたまた、呪縛から解き放たれた安心感のような、そんな感情が浮かんでいた。
「お前が恨んでいた王族はその日のうちに滅ぼした。お前を縛るものは無い。これからは好きに生きろ」
「でも、そんなに時間が経つと、色々変わっているだろ」
「おいおい、私を誰だと思っている」
ヴェロニカが自慢げに話し始める。このようなことは昔から変わっていない。
「まず、通貨は五百年前と変わらないよ。私が時の権力者どもに圧力かけて残した」
((案外強硬だな!?))アランとコーネルアは同時に思った。
「それと言語だが、お前の能力なら苦はないだろ」
「え?いいんですか?」
心配したコーネルアがヴェロニカに聞いた。
「こいつの能力に〝天賦の才〟というのがあってな。簡単に言うと、ある一定量の言葉や方式などを見たり聞いたりすれば、一瞬でそれを取得することができるという能力だ」
「私そんな能力初めて聞きました」
コーネルアが苦笑いを浮かべている。
「そりゃそうさ。この能力はこいつだけが持っているやつだからね」
「ユニークの部類に入るやつですか」
「とても地味だから、大抵の奴は記憶力がすごいとか、適応能力が高いとしか思わないがな」
ただ、地味だが強い用は、全ての言語を見たり聞いたりすればすぐ使えるし、武術も即習得できるということだ。
「まあ、あまり公にしたくないから、だまってろよ」
ちょっと圧入りで言われ、コーネルアは若干引き気味に「わかりました」といった。
「そういえば、ヴェロニカ様。彼目覚めたのはいいんですが、これからどうするんですか?」
コーネルアの問いに、ヴェロニカはアランへと目を向ける。
アランは
「そうだな。冒険者のギルドがあればそこに入ろうかな。通貨が変わらないなら、そこそこの家を買って暮らそうかな」
彼の言葉に、ヴェロニカは、「ふむ」と顎に手を当て考える。そして「おお!!」何か閃いたようで
「なあアラン。確かに冒険者も悪くない。だが少し早いと思う。この時代おおよそ二十台中頃で入るのが一般的だ」
「そうなのか?じゃあ...」
「アラン。お前いくつだっけ?」
突然の質問に戸惑うアラン。年齢を聞かれるの何て、いつぶりだろうか。
「十七。あの時から肉体に変化が無ければ」
「そうか、なら......」
その言葉はこれからの彼の人生を大きく変えた。
「私の学園に入らないか?」
終わり方が難しいですね。主人公視点や、ヒロイン視点でもかけたらなあとは思います。
ありがとうございました。