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555 番目の緋龍  作者: 暴走タマゴ
1/1

Prologue 〜夢の目覚め〜

はじめまして。

初めて小説家になろうを利用させて頂いている者です。

拙い文章で、読みづらいとは思いますがどうか少しだけお付き合いください。

 総てが赤い炎に包まれた世界(煉獄)に俺はいた。

誰かが帰って眠る家も、

文明の発展が生み出した高層ビル群も、

子供達が集まって遊んでいるはずの公園も、

地平線の彼方ですら、炎に囲まれた世界をただただ歩いていた。

おぼつかない足取りで、あちこちに擦り傷ができた身体を庇うように。

何処に向かっているのかすらわからない。そもそも何処を目指しているのか分からない。

何かに躓いたか、幼い身体が火で熱せられたアスファルトの大地に倒れる。

熱さを感じないことを気に留める暇すら無いのか、小さな両手で踏ん張り、立ち上がる為力を入れ(イッテハイケナイ)

前に進む為に足を引きずり(イッテハイケナイ)

乾く喉を唾で潤して(イッチャダメダ)

歩き続けていたかすら怪しい倦怠な動きをしていた幼い影が突如動きを止める。

 そこには龍がいた。

炎より赤い鱗を纏った巨体(身体)で立ち塞がり、

一度羽ばたけば、嵐を巻き起こしそうな立派な両翼を翻し、

掴んだモノを総て砕く爪を両手に備え、

巨木の様な尾を垂らし、

爛々と輝く翡翠の眼光で真っ直ぐに見据え、

裂けた口から並ぶ鋭い牙の隙間から威圧する様に火の粉が噴き出す。

 幼い身体の持ち主は、人ならざる異形に目を奪われていた。

その偉大さに、その美しさに、その圧倒的な威圧感に

瞬きする事数回、そして子供は小さな右手を(力の象徴)へと伸ばし…

《クルナ》

そんな唸る様な一言が聴こえてきたと同時に、子供に突然突風が襲いかかり、視界が切り替わる。

 突然視界いっぱいに広がった、赤く燃える空、思考が切り替わる前に全身に走った大地に強く叩きつけられる様な衝撃と痛み。

口から吹き上がってきた鉄臭い液体で、自分は龍の翼の羽ばたき一つで、紙切れの様に吹き飛ばされたのだと悟る。

「………ふざ、けんな…っ!」

絞る様に出てきた子供の怨嗟の声が、痛みを訴えるより先に出てきた事に龍は驚いたかのように目を見開くも、すぐに元の表情へと戻る。

「……力が要る、んだ…よ…っ!」

翡翠の宝石(両目)に映る幼子は、己の血で作った水溜りの中で仰向けのまま手を伸ばす。

「…――の力が…っ」

赤黒く汚れた右手は力無くとも、ひしゃげた左目は、何も写さずとも、激痛の走る身体が悲鳴を上げようとも、ただただ求めるように這いずって進み、左手を伸ばす。

その子供の顔は血と煤で汚れて(無くしたくないと)右目に涙を溜めて(死にたく無いと)足掻く為に手を伸ばす(生きる為に手を伸ばす)

《……オマエニハ…》

再び聴こえてきた低い声、其れが目の前の龍から発せられているのが聴こえてすらいないのか、幼子は己の血でカーペットを彩りながら進んでいく。

《……――――。》

最後に伝えようとしたのは何だったのか。夢はいつも此処で終わる。微睡み薄れていく意識の中、最後に見えたのは、悲しむ様に目を伏せ、唸る龍の姿だった。



「――…いってぇ……」

冷たい空気と湿気を帯びた芝生、そして朝日が昇り、白み始めた空からもうそろそろ夜明けである事を少年は悟る。

相変わらず夢見が悪いなとぼんやり考えるも、状況の把握を優先した思考に釣られ、自然と仰向けに寝そべったまま頭だけを動かす。

鼻につく排ガスの匂いと、少し離れた所から聴こえてくる行き交う車のモーターが奏でる駆動音。視界に入ってきたのは、パーキングエリアを示す電光掲示板と、そのすぐ横で存在を主張するコンビニやら宿泊施設やら看板、駐車場に停めた自分専用にカスタマイズされた、魔導二輪(バイク)と、そのすぐ近くの街路樹に括り付けられ、風は出ていないはずなのにゆらゆらと揺れているハンモック。その情報と昨日の記憶で、今自分は都心部近くのパーキングエリアで一夜を過ごそうとしていた事を思い出す。

(――おかしい、寝泊まりする余裕が無い俺はあのハンモックを使って寝ていたハズ…)

そこまで思考して、頭の痛くなる様な自虐に行き着いた情報から逃避する様に上体だけを起こし、伸びをする。

(何故ハンモックから落ちてるんだ?)

打ち付けて痛む背中と寝起きでよく回らない頭をほぐしていくと、自分の周囲をチカチカと光りながら飛び回る飛来物を見つける。

それはいつも連れているモノだった、黒と白、紫で彩られたトリコロールカラー、ランタンの様なシルエットに鶏の尾羽、(ケージ)を模した卵型の胴体についた小さな四つ足、蓋の様な頭部に備えられた3つのカメラアイに、忙しなく羽ばたく蝙蝠の翼。

その正体が、いつも連れている使い魔の機械生物(ガーゴイル)だと理解すると、それは自分から少しずつ距離を取り、ある程度離れた所で勢いをつけ真っ直ぐに標的(自分)に突っ込み…

「……って、テメェの仕業かゴルァァァア!!」

「キュイイイ!?」

突進してきた使い魔をぶつかる前に捕まえ、近所迷惑なんて知ったもんかと怒りの咆哮を上げ、胴体をがっしり掴んで逃げない様に抑え込む。

こやつめ、起こす時に体当たりは止めろと何度行ったら分かるんだ。いい加減立場を分からせる為に一回分解(バラ)してしまおうか、といざ実行しようとドライバーを取り出した所で、キュイキュイ鳴きながら逃げ出そうともがく使い魔の頭部が赤く点滅している事に気がつく。

(―――あー…連絡……)

「―――っち…ペチカ、繋いでくれ」

「キュイ!!!」

携帯電話を買う余裕の無い自分にとって、機械生物(ガーゴイル)は数少ない連絡手段だったと思い出し、軽く舌打ちして通話画面を開く様指示すると、可愛くない使い魔は、「ドヤァ」と言わんばかりに胴体を上下に展開して液晶を表示する。「このポンコツめ…次は分解(バラ)す」と復讐を誓いながらも、表示された画面を確認し…顔を蒼褪めさせる。

表示されたのは誰でもない、自分にとって唯一の姉の様な幼馴染(頭の上がらない天敵)。其れが既に53件も同じ時間に履歴で残っている辺り、()()()()()()()()()()()()という事だろう。

「絶対不機嫌になってるな…っクソ……もしもし…」

「……随分連絡するのが遅かったですね……」

キリキリと痛み出す頭を右手で抱えながら、テレビ電話を繋げると案の定画面の向こうの幼馴染は「私は不機嫌です」オーラを発している。間違っても「こうなると面倒なんだよな」なんて言ってしまうと、余計ややこしくなる事は長い付き合いで分かっているので、絶対に言わない。

「遅いって……お前なぁ…日本(こっち)イギリス(あっち)じゃ時差があるあるって分かりきった事だろ…ていうか、イギリス(そっち)は夜でも日本(こっち)は明け方だっての!!まだ寝てる奴は寝てる時間なの!!!」

「―――すいませんうっかりしてました」

「悪びれてないだろテメェ!!!」

いつもこれだ、口喧嘩ではいつも言い負かされて、こちらが言及すればのらりくらりとかわしてくる。

だけどすごい安心するやり取りだ。これが赤の他人だったらお互いに手が出るのが早いのも手伝って暴力沙汰になっているだろうが、家族の様な二人だから成立している暗黙の了解(コミュニケーション)そんな相手が、こんな時間にわざわざ画面の向こうの少女が連絡してくる理由を察せられない程、少年は「自分は愚鈍じゃない」と自負している。

「―でっ…どうなんだよ、研修は…順調?」

「えぇ、貴方に心配される程ではありませんよ。それよりも自分の懐を心配されては如何ですか?」?

「テメェなぁ…」

「………隣……」

「…うん?」

隣と呼ばれた少年は、少女に皮肉で返されて引き攣った表情を直すと怪訝そうに顔を歪める。冷たい汗がたらりと額を流れるが、これはこいつにこういう呼ばれ方をされた時は、大体録でもない事だという、危険を察知したからでは無い。……間違っててもそんなものではない。―――きっとメイビー。

「…………あの無理して仕事をしてないですか?」

「……えっ…お、おう大丈夫だ」

「…なんで面食らっているんですか…?」

「いや、何でもない…」

まさか心配されてるなんて思ってもいなかったらしい少年は画面から目を逸らしつつも、なんとか返答する。上目遣いでこちらを本当に心配してきた幼馴染に、不覚にもドキッとしたなんて絶対に言えない。言ってしまったが最後、彼女から終始白い目で見られ一生距離を取り続けられる。なんて最悪の事態を自分から招くわけにはいかない。

「取り敢えず…あー、ほら、俺は結構タフだから心配はいらねえよ」

「…最後にとった休みはいつですか?」

「3日前の謹慎が丁度解けた所だから」

「……何ですかそれ」

少年の冗談めかした言い方に、クスッと小さく笑った少女は「謹慎は休暇じゃないですよ」と付け足す。話題を上手くすり替えられた様で、ちょっと気まずくなった空気を切り替える事ができた事に、少年は通信相手にバレない様に安堵の溜息をつく。

一息着いた所で、画面の左下に映る[0557]の数字が時間を示していることに気づき、胡座を崩して立ち上がり、通話中の機械生物(ガーゴイル)のペチカの取手を掴んで持ち上げ、出発の準備をする。魔導二輪(バイク)に締まっていた上着を羽織り、一緒に取り出したマフラーを巻き、ミラーを見ながらよれている所を直していく。どこにもおかしい所は無い。其れだけ確認すると、シートに締まっていたヘルメットを装着し、魔導二輪(バイク)のハンドルに手を翳す。其れだけで龍を模したパーツでカスタムされた車体は目を覚まし、獣の咆哮の様なエンジンの起動音をあげ、排ガスを吐き出す。

「それじゃあ、俺はそろそろ行くから一回切るぜ」

「あっ…隣、最後に…」

「?」

少女は最後に屈託の無い笑みを浮かべて、少年と向き合う、画面の向こう側だとしても、これだけは、淡い想いを密かに抱いている相手に素直にこの一言だけをしっかりと伝えたい。

「頑張ってください」

「おう、そっちもな、研修頑張れよ」

その会話を最後に少年は通信を切り、赤い車体に跨る、その際使い魔を座席の後部に備え付けられたコンテナに押し込み、エンジンを蒸す。微かに口の端に浮かべた笑みはきっと嬉しいからだと自覚し、唸りを上げる魔導二輪(バイク)を走らせハイウェイへと侵入させる。

目指すは東京、自分の仕事場(今回の狩りの舞台)空に昇った太陽は今日もまた新しい1日を告げていた。




新歴108年、世界は一度第三次世界大戦で荒廃し、追い討ちをかけるかの様に世界各地で発生した魔力災害(マナ・ディザスター)にて人類は滅びの危機を迎えた。

世界の表舞台から隠れて過ごしていた魔術師達の介入によって、世界は均衡を取り戻し、化学と魔術を織り交ぜた魔導化学が発展することとなったが、其れは新たな争いの火種を生むだけだった……。



これは、残酷な世界で悪意に立ち向かい、自分達の未来を得る為に戦いを繰り広げて行く少年達の物語である。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

自分のペースでゆっくりとかいて行きますが、どうか暇な時はまたお付き合いしてください。

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