突然の想い
あっという間に12月
有難いことに毎日が忙しく
十分に寝ておりません、はい
「あこ〜頼みたいことがあるんだけど」
「……なんですか?若菜さん」
「今の間なによ」
「いいえ?なんにも」
追加の仕事ですか?なんですか?
ダメだ、私忙しくしてるのは自分なのに
仕事もらえることは有り難いことなのに
守りに入ってる…。イラついてる。
分かっていながら自分をコントロール出来ない
本当、情け無い
「新しい器具が届くんだけど」
「この間言っていた三代目サーバーですか?」
「そ!明日届くから宜しくね〜」
「了解ですっ」
バーの方も忙しくなり新人も増え
就職の内定決まり辞める子もいて
地味に忙しい……
頼りの先輩方も昼の仕事が忙しく
出勤が一気に減り、その穴埋めを
自分がしてあげてると思い込む私
本当、何様だよ…な
「サーバー届くなら…だいぶ整理しないとな」
9月以来かな?いっちーにも会ってない
いや、カフェにも行ってないからな
………ん?
なんで今いっちー??
そんな事を考えてたら本人登場です。
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
「あの、若菜さんいますか?」
「あ、うん」
私は若菜さんを呼びにバックルームに入った。
まだお客が来ていなかったからか、
1番端の席で若菜さんといっちーがたぶん
仕事の話をしている。
自分でも分からないけど、
作業を淡々とこなしながらも
その席を目で追ってしまっていた。
「あこ、お水2つもらえる?」
「はい」
持って行こうとしたら若菜さんが
お手洗いに行ってしまった。
一応、おしぼりと灰皿も用意して
席まで持って行った。
「あこさん、なんか久々っすね」
「そうだね」
「……失礼かもですけど、痩せました?」
「ん〜多少ね、カフェも忙しい?」
「ぼちぼちですね、前よりは忙しいです」
「そっか…まぁ、頑張って」
適当な会話
「あこさん、毎日いますよね?」
「人手不足です」
「多忙っすね」
「おばさん死にそう」
「寝た方がいいですよ?」
「余裕があればね」
そう言って私はぷいっと顔を背け
持ち場に戻った。
2人の話は終わったみたい。けど、
いっちーは飲んで行くのかカウンターに
座り直した。15分くらいしてから女性の
お客様が1人、見るからに若そうで
ほんわかした雰囲気のした女性は
いっちーに声を掛け横に座った。
とても親しげに笑い合っている。
チクッ
なに?これ
いやいや、まてまて、ありえない
2人の会話を盗み聞きするかのように
神経を研ぎ澄ませている自分がいる
気持ち悪い
「あこさん、ニューヨーク下さい」
「……はい」
まずい、態度悪かった?いや、普通か?
てか。これじゃ、まるで私がいっちーのこと
好きみたいじゃないか…
ないないないない
そうこうしている内に注文のカクテルを作った
「あ、彼女に」
「…お待たせ致しました、ニューヨークです」
「わあー!すごい!かわいいです!」
あなたのが何倍もかわいいぞ〜
私にはない可愛さで羨ましい
ほんのり甘い香りが彼女から漂ってきた
「Roriee?」
「!分かります!?この香水好きなんです!」
「急に失礼致しました、いい香りだったので」
「私ずっと愛用してるんです!!」
本当かわいい笑顔だな〜
すごくいい子って感じだな〜
「お姉さんの作ったカクテル美味しいです!」
「恐れ入ります」
「あこさんのニューヨークは美味いよ?」
「教えてくれてありがと!」
「ごゆっくりとお過ごし下さい」
逃げるように2人の前から真逆の席に
私は動いた。きっ気まずい…
何だろう、いっちーが気になるけど
態度に出したくないし気づかれたくない
でも、はっきり好きなわけじゃない
気にはなるけど、冷静になれる自分がいる
1時間半くらい経ってから
いっちーとかわいい女性は会計をし
2人でお店を後にした。
今まで恋愛経験がゼロな訳ではないが
こういう感じは初めてだ。
恋愛?違うような気がする
お気に入りのオモチャを横取りされた感じ?
え、随分幼稚だな私…
なんて言ったらいいのかな
まだ分からない
自分のことなのに
自分が分からない