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異世界マンガ家のハーレム冒険譚  作者: くあwせ
はじまる新天地編
3/53

3.冒険者


ファルさんに連れられるまま、やってきたのはリビングだった。

やはりそこも物は少なく、部屋の真ん中にどーんと大きなテーブルと椅子がおいてあるくらいのものだ。


そしてそこには、2人の女の子が席についていた。

そのうち紫紺の長髪をポニーテールでまとめている少女が、こちらを見るなり手を振ってくる。


「お、君がナナミのお兄さんだね?私はセレンティーナ、気軽にセレンって呼んでね!」


「どうも、七海の兄の鋭斗です。先ほどはお世話になりました」


「いいよいいよ敬語とか堅苦しいし。ほら、ミスティも自己紹介して!」


「んー?あー、私はミスティアっす、よろしくっす」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


挨拶を済ませ、勧められるままに席につく。

ちょうどそのタイミングで、ファルさんが紅茶がなみなみ注がれたカップを運んできてくれた。


「はーい、今日はミルクティー、おやつはエイトが持ってきてくれたお菓子だよ。」


「へー、これが遠い異国のお菓子?ナナミちゃん、これおいしいの?」


「はい、甘くておいしいですよ!」


「だって、ファル!」


「そうだね。よし、じゃあ早速いただこうか。いただきます」


ファルさんに合わせ、皆一斉にまんじゅうにぱくつく。


「うん、やっぱりこのぴよ子まんじゅうはうま…」


「エイトくん!なにこれ!?」


「えっ!?」


しまった。

食文化の違いもあるだろうし、やはり口に合わなかったのだろうか。


「すみません、やっぱりお口に合いませんでしたかね?」


「いやいやすっごくおいしいよ!今まで食べたお菓子よりも甘いし!え、これどれだけ砂糖が使われてるの?」


「すごいんだなあエイトの国は。ここでは砂糖なんて貴重でそうそう手に入らないのに」


「そうなんですか、それはよかったです。」


とりあえず、喜んでもらえた様だ。

ひと安心し、ほっと息をつく。


「ところで、エイト達はアルカドア王国に何しに来たんだい?」


紅茶を飲み終えたファルさんが、にこにこと柔らかな表情を浮かべ質問を始めた。

しかし、鋭斗は内心穏やかではない。

本当のことをいっても頭のおかしいやつだと思われるだろうし、ここはなんとかごまかさなくては…

脳をフル稼働し可及的速やかに答えを練ること数秒。


「…あー、実は僕たち、冒険者になりにきたんですよー」


結果、鋭斗の答えはこれだった。

まあ情報が足りないにしてはよくやった方だと思う。

…いやどうだろう。妹は冷めた目でこちらをじーっと見つめてくるので分からない。


「そっかー、エイト君達も冒険者になりたいんだ!いいね、分かるよその気持ち!やっぱりロマンだよね、冒険者!」


「セレン、落ち着くっすよ。同士を見つけてうれしいのは分かるっすけど、まだ冒険者になると決まったわけじゃないんで」


「えー、なんで?私達がいろいろ教えてあげれば簡単に冒険者になれるんだよ?旅の人でも戸籍無しでも普通になれるし」


目をキラキラと輝かせていたセレンさんが、一転して口を尖らせミスティアさんに疑問をぶつける。

だがミスティアさんは少しも動じることなく説明をし始めた。


「確かに、冒険者になるのは簡単っす。でもそこから先生き延びるのがどれだけ大変か、セレンは知ってるっすよね?」


「うっ…それは、まあ…」


「それに、エイトとナナミは見たとこ武器も持ってないじゃないっすか。どうすんすか、私達が買ってあげるんすか?そんなお金がうちにありましったけねー?」


「ううっ…」


完全論破され、落ちこむセレンさん。

見ているだけでなんだかこっちも悪いことをしたなと申し訳なくなってくる。


「と、いうわけで。冒険者になるのはおすすめしないっす、私もある程度お金貯めたら魔法の研究するつもりなんで。」


「え、そうだったのミスティア!?」


「確かパーティを組んだ頃に言っていたね、そんなこと。もう忘れているかと思っていたよ」


「忘れるわけないじゃないっすか。冒険者は怪我したら終わりなんで、早く安定した仕事して暮らしたいと思うのが普通っすよ。」


「うう…いくら収入が少ないからってそんな薄情な…」


最初のテンションが嘘のように下がりきったセレンさんを横目に、ファルさんは代わって話を続けた。


「でも本当に冒険者になりたいなら、僕は応援するよ。武器は僕たちのおさがりを使えばいいし、いろいろ必要なことも教えてあげる、ねえミスティア?」


「えー嫌っすよ!そんな時間あったら魔法の研究したいっす」


「じゃあ今から皆で仕事しに行くから、それを見てもらうくらいはいいだろう?」


「それこそ嫌っすよ、二人を守るのは後衛の私になるんすよ?」


「でも僕達が冒険者を始めた頃は周りに助けてもらったじゃないか。今度は僕達が助ける番じゃないのかい?」


「それは…まあ…」


「さて、そういうわけでナナミ、エイト。僕達のことは気にしなくていい、君達がどうするか決めてくれ。僕達と一緒に行くか、ここで待つか。どっちがいい?」


ファルさんは先ほどまでの物腰柔らかな様子とはうってかわって、真面目な口調で鋭斗に尋ねる。

途端、空気は一変しセレンさんもミスティアさんも一切口を挟まなくなった。

七海は鋭斗の判断に任せるといった風で、鋭斗の方を向いてくる。


俺の判断で、全てが決まる。

冒険者になるか、ならないか。

もし冒険者になれば、死と隣り合わせの生活を送ることになるだろう。

七海も危険に巻き込むかもしれない。

だがそれ以外の職業となると、鋭斗が就くのは難しいと思う。

戸籍はないし、鋭斗にはこれといった特技もない。


冒険者になるというのはハイリスクだ。

だが、鋭斗にはそれ以外選択肢は残されていなかった。


「…俺は、冒険者になります。だから是非、付いて行かせてください。」


答えを聞いて、ファルさんは「うん、わかった連れてくよ」と微笑み、セレンさんはぱあっと表情を明るくし、ミスティアさんは少し不機嫌そうにむすっとしていた。


そして、巻き込んでしまった七海は。


「まーそれしかないか。ファルさん、早速冒険に行きましょう!」


特に心配する様子もなく、いつも通りの調子で椅子から立ち上がった。


「そうだね、じゃあ行こうか。」


ファルさんの指示により、俺達は初めての冒険に出ることになった。


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