春也が倒れた
実家と新居を行ったり来たりする日々が2週間ほど続いた、5月1日。
9時頃、春也の父から電話がありました。
「ハルが職場で倒れて県立病院に運ばれたから、祐希ちゃんも来て欲しい。
俺も今から行くから。」
「わかりました。」
訓練中に倒れた?
熱中症?
消防の訓練で、脱水症状や熱中症になることはそこまで珍しいことではなかったため、病院に着いたらベッドで「心配かけてごめんね。」と言う春也を想像していました。
そして、母からも電話がかかってきました。
涙声で、今にも春也は死ぬんじゃないかと思わせるような雰囲気でした。
大げさじゃないかなと内心思ったくらいです。
でも病院に着くと、春也の母の大げさなほどの涙は、決して大げさではなかったことがわかりました。
父方の祖父母、母方の祖父母、そして叔母。みんなが揃っていました。
私は状況が飲み込めず、叔母に声をかけました。
「春也はどうなったんですか?」
「病院で痙攣を起こしたらしくて、今から脳波とCTとMRIの検査をするらしいの。
今は麻酔を打たれてて、意識はないみたい。」
何があったんだろう……。
私はとても不安になりました。
病院に着いたら面会できると思っていたけれど、この時春也の顔を見ることはできませんでした。
落ち着いたら、病院から連絡があるとのことで、その時また病院に来ることになり、一時解散しました。