すき
月曜日。
春也の意識はしっかりしているようです。
両親は、1日に2度、ICUで春也に面会します。
面会できるのは、原則家族のみとされていました。
この2度の入院で、「家族のみ」の場面が多くありました。
その度私は、
「私も家族になるのに……」
と疎外感を感じたものです。
病院でも何のサインもできないし、婚約しているのに、「彼女」という立場には何の権限もないのだと、無力感しかありませんでした。
春也が入院している間、私はよく父方の祖父母の家にお邪魔し、ご飯をご馳走になったり、祖母とおしゃべりしたりで毎日のように出入りしていました。
新しい土地でまだ友達も身寄りもない私に、祖父母はとても良くしてくださいました。
そしてこの日もいつものように祖父母の家で過ごしていると、夕方、春也の兄の光也が来ました。
外食することとなり、私もご一緒することに。
祖父母と光也と私の4人で外食をしている頃、両親は春也の面会に来ていたそうです。
明日には一般病棟に移るため、私は今日は面会に行かない予定でした。
すると、春也の父から連絡があり、春也が私に会いたいと言っているとのこと。
外食を済ませると、光也に運転してもらい病院に向かいました。
ICUに入ると、春也がにんまりと笑いました。
鼻にチューブは付いているものの、昨日より管が減り、少しスッキリしていました。
「春也くん、彼女さん来たら笑顔になったね!」
今晩のICUの担当の看護師は、若い男性でした。
目が覚めてから、春也と筆談でコミュニケーションを取り、春也も心を開いていて、打ち解けたようでした。
光也と祖母とICUに入りましたが、
「春也には祐希ちゃんしか見えてない(笑)
敵わないね。」
と、笑いつつ先にICUから出ました。
私もホワイトボードで筆談しました。
「なおる?」
春也が私に問いました。
「なおるよ!」
そして私から、
「すき」
春也は泣きました。
そして、何度も頷きました。
「彼女さん来てくれてよかったね。
明日には一般病棟に戻れるし、大丈夫だよ。」
春也に、また明日と別れた後、ICUを出る前に男性の看護師から、
「今は熱もないし落ち着いてますよ。
まだ言葉が出てこないけど、焦らせないように、ゆっくり会話してあげてくださいね。」
と、にこやかにアドバイスしてくださいました。
私もこの男性看護師にとても好感を持てましたし、それは春也の両親も同じでした。




