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嫁入り前の悲劇  作者: 江戸一
再入院
27/35

2度目のICU




金曜日。

春也の症状は悪化していました。



口の右側がヒクヒクと引きあがるように痙攣し、唾液が止まりません。



会話はほとんど出来ず、私は見守ることしかできません。




2度目の入院では、抗てんかん薬の量を少しずつ増やし、春也に合う量に調整していくという治療方針でした。



痙攣の原因には薬の量が合わなかったこともあると医者は言いましたが、私と春也の両親は、主治医のマイナスな言葉がきっかけに体調を崩したことから、「心因性非てんかん性発作」を疑いました。



※心因性非てんかん性発作とは、突然発症、かつ一過性の運動・感覚・認知・情動における機能障害で、精神的な原因で起こると考えられている。




これまで春也にはてんかん等の持病はありません。


親族も、心の問題が大きいと考えるようになりました。





担当の看護師にも春也の症状を診てもらい、この症状が出ているときに脳波の検査をすると何か分かるかもしれないとの医師の判断で、再度検査をすることになりました。


春也の不安そうな表情が、今でも忘れられません。





春也の脳波は、左脳の波形が大きいという検査結果でした。

左脳は自律神経や発語に関する機能を担っていて、その左脳に何かしらの障害が発生しているために発語ができなくなったり、唾液を制御できなくなっているようです。





夕方、春也と病室にいると、春也の母から、


「春也に何かあった!?」



と、連絡がありました。

昨日から部分痙攣があったことは春也の両親も知っています。



「痙攣があるのは変化はありません。」






病院から両親に電話があったそうで、また、麻酔で眠らせICUで管理しましょうと提案されました。



土日は医師がいないこと、また、春也の脳は疲れていて、自律神経が弱っていることから、ICUでリセットさせようとのことでした。










春也の両親と、両家の祖父母がすぐさま集結しました。




実はというと、2度目の救急搬送で母方親族の大乱闘があってから、私は一度も母方の親族と顔を合わせていませんでした。



春也の父がその都度連絡をして、病院で鉢合わせしないようにしていたのです。


そして、あの日の大乱闘は、春也には言わないよう口裏合わせをさせられました。

今の春也にはストレスを与えないことを第一に考えていたのです。


春也があの日の大乱闘を知ると、また、「自分の親族が祐希を傷つけた」と悲しみ、母方の親族に対する憎悪の感情が増すことは誰しもが分かっていることでした。











病院のロビーで、春也の母は泣きながら私に問いかけてきました。


「これって春也の脳を休ませるだけだよね?

もう起きないとかないよね?」



「病院側が最適な方法を提案してきてるんですから、ICUに入ったほうが良いんじゃないですか?」




「母親のあなたがしっかりしなきゃ!」


「今回は完全にあの主治医が悪い!

病院を変えた方が良いんじゃないか!?」


「今この不安定な状態で転院をするのはリスクが高いと言われた。

救急車の中で容態が悪くなったら病院側は責任を取れないらしいから、とりあえずICUから出られるまで回復するのを待って、大学病院に変えるなら変えよう。」




皆、この総合病院に対する不信感が強かったのです。





そして、この日の夕方から、春也はICUで体調管理されることとなりました。







5月19日


今日、またICUに入りました。

脳が疲れてるんだって。


けいれんが大変だったね。苦しかったね。

春也の言いたい言葉を、分かってあげられなくてごめんね。


一番もどかしいのは、春也だもん。

春也の心が壊れてしまったらどうしよう。

一緒に笑い合えなくなったらどうしよう。


やっぱり私も不安です。



乗り越える。

強くなる。


これを越えたら、こわいものなんてない。

春也を信じてる。


私は、春也を支えたい。

私も、周りに支えてもらってるよ。







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