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嫁入り前の悲劇  作者: 江戸一
再入院
24/35

可愛い息子







母を見た瞬間、私はまた大号泣してしまいました。



「アンタはちゃんと救急車呼べたし、できることしたんでしょ?大丈夫よ!よくやったよ。

春也くんもアンタと一緒にいる時で良かったよ。

一人のときだったら発見できてなかったと思うよ?ね?」





病院で誰もそんなこと言ってはくれませんでした。

寧ろ真逆で、母方の親族に責められて、詰られて、いけないことをしたかのような言われ方をしましたから。





「祐希の顔を見れて安心したよ。」



私が母に電話をかけた頃、母はすでにお酒を飲んでいたため、仲の良い友達に運転してもらい、ここまで来たのです。


はじめはタクシーを使ってでも来ようとしていたそうでした。






春也の父と、私の母が会うのはこれが2回目です。



「春也くん、心配ですね。

退院してから薬を中断したって聞いて、薬が切れたときのリバウンドが起きたんじゃないかなって私は思うんです。」




「それって何ですか?」


と問うたのは祖母でした。




「今はてんかんかわからなくて抗てんかん薬飲んでましたよね?

例えですけど、てんかん発作が起きないように、蓋に薬の重しをしていました。

その重しを外したら、跳ね返るように蓋が開きます。

そのリバウンドで痙攣に繋がったんじゃないかなって。


少しずつ薬の量を減らしていけば、そんなこともなかったかもしれませんけど、全く飲まなくなったみたいですし……」





そして母はさらに、


「すぐにとは言いませんけど、春也くんの治療のことや、生活のこと、広島で私が面倒見るのはどうかなと思ってるんです。」





春也が最初に入院したときから母は私に言っていました。


「二人でこっちに住めばいい。」

と。



「転職なら私の周りの友達に聞いて回れば見つかるし、両親から離れた方が良いと思うよ。」






私もできることならそうしたい。





「今は春也の回復を見て、ちょっと考えてみます。」



春也の父はそう言いましたが、可愛い息子が他所に取られるなんて考えられないと思い、即却下だなと思いました。


息子が一番可愛いんですから。






私は、病院での出来事を母に伝えていましたが、その日に母の口からその話題が出ることはありませんでした。




母の代わりに運転をしてくれたお友達は、私も面識があります。

車に寄り、「ありがとうございました」と一言。




車から降りてくれて、

「いいよいいよ!アタシも心配になったから!今日家帰るの怖くない?こっち帰ってくる?」




帰りたい気持ちは山々でしたが、春也の目が覚めたとき、病院にいてあげたいなと思い、断ることにしました。







この日は夜も遅く、翌日には母も仕事があったため、とんぼ返りでした。


帰る直前、泣きじゃくる私を母は抱きしめてくれました。




まだ少し酔っているようで、よしよし、と冗談めいたことを言い、私の気持ちを落ち着かせようとしているようでした。




「……母さん、お酒臭いね(笑)」



涙ながらに笑えた私を見て、母も少し安心したようでした。





「また落ち着いたら様子を見にくるから、祐希も無理しないようにね。」




そして、母は帰って行きました。





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