HCU
その日の夕方、再び私たちは病院に向かいました。
HCUで容体を管理されている春也と面会できると聞いて。
※HCU(High Care Unit)は準集中治療室、集中管理病棟、重症患者病棟で、高度で緊急を要する医療を行うための病室です。 ICUよりは軽症な患者を収容します。
私が病院に到着したときには、春也の両親は既に面会を済ませていました。
「今は、HCUで眠らされている状態だから、命に別状はないらしい。でも、現状を見ると、本当に大丈夫なのかなって不安に思うと思うけど、命に別状はないからね。」
と、涙声で何度も言い聞かせてくれました。
そして、ようやく私は春也と面会することができました。
入り口で室内と通じるインターホンで面会したい旨を伝え、両手のアルコール消毒を済ませてHCUの室内に入りました。
HCU内で眠らされている春也を見て、私は動揺を隠し切れませんでした。
様々な管に繋がれた婚約者。
機械的に酸素を送っている人工呼吸器の音。彼はこれに生かされているのだと。
今一番苦しんでいるのは彼であり、今まで抱え切れないストレスが溢れ出た結果なのだと思うと、涙が止まりませんでした。
そして、先ほどのお母さんの言葉を繰り返し、頭の中で言い聞かせました。
ーーー眠らされているだけ。
そう思っても、本当に元通り元気になるのだろうか、現時点の容体を見ると、とても不安になりました。
昼間に来ていた親戚全員で面会を済ませ、午後9時頃、病院を出ました。
「私が言いすぎたんだよね…。」
義母がそう言いました。
すると叔母が、
「これからみんなで良くしていこう?
春也がこんなに誰かのことを大切に思ったことはないよ?
私は彼女を親戚に紹介する春也を見たことがなかった。
やっぱり、これからは親じゃなくて、彼女なんだよ?」
そう言ってくれました。
そこでも私は涙が溢れ出ました。
春也も、私を守ろうと頑張ってくれていたんだと。
アパートに帰っても、考えるのは春也のことだけ。
私は春也との交換日記を手に取り、綴りました。
5月1日
今日は3回病院に行った。
麻酔で眠らされてるだけとは言え、すごく不安だね。
管だらけの春也を見るのは辛い。
もう会話が出来なかったら?
もう目が覚めなかったら?
また一緒に笑い合うことができるの?
早く目を覚ませてほしい。
会いたいよ。
この1か月間、環境が一気にに変わって色んなことがあったね。
私が春也の家族と上手く付き合っていけるか、たくさん心配してくれた。
春也もたくさんストレス抱えてたんだよねって思うと、申し訳ない気持ちでいっぱい。
家族のこと、私のこと、新しい職場のこと。
春也は、相談できる相手がいたのかな………?
春也と私は付き合いたての頃から交換日記をしていました。
文字を通じてお互いの気持ちが、わかるように。
私は、春也がこの交換日記を読むまで、毎日書き続けることにしたのです。




