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カーニバル  作者: 朝日羅
4/4

03

それは紛れもなく生首だった。懐中電灯の光ただ一つという視界の悪さを差し引いても、生首以外の何物でもなかった。

少女は俺の視線に気付いたのだろう。手に持っている生首をひょいと持ち上げた。

「あぁ、これ?」

何でもない事のように、それにはもう用がないとばかりに、床にそれを棄てた。

人は死んだその瞬間から物と化す。塵になる、そう言ったねは一体誰だったか。

「何かいたから。知り合い?」

「いや、違う」

「そうなの? じゃあいいか」

床に落ちた塵を跨ぐようにして、少女は俺の方に歩いてきた。カツカツと、足音が部屋の中に響く。

「君はさぁ、何の用事があって来たの?」

それは、そう応えるよりも早く、少女は笑った。ニィと口の端を歪めるようにして。

「いいや、理由なんて。とりあえず――」



死んでくれる?



刃が、先程まで俺のいた場所を通過する。殺す事を前提にした動き。咄嗟に一歩引いていなかったら、今頃俺の首は胴体との別れを迎えていただろう。そこまでいかないとしても、深い傷を首に負って出血多量て死んだ事だろう。

首から一滴流れる血を拭い、少女に視線を向けると、あからさまな程に落胆していた。

がっくりと肩を落とし、怨みがましい目で俺を見ている。この場合危うく殺されかけた俺が怨むものではないのだろうか、そんな常識的考えが浮かんだが、相手はいきなり切りかかるような奴だ。常識的に考えるのは間違っているに違いない。


あぁ、ならばやめよう。


俺もまた、常識的な考えを棄てようじゃないか。


「お前が死ね」


呪いの言葉を吐き捨てる。




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