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私達は自分たちが座っていた位置に戻った。朱美さんが微笑んで私達を見ていた。
「これも学校でやってくれないかな~。面白いし、楽しいもの」
陽菜がそう言った。
「ぼくもやってほしいな。おねえちゃんよりつよくなって、いっとうしょうをとるの」
裕翔もそう言った。
「それにしても変わらないようで変わっているものもあったのですね」
「それはそうだろう。変化はどこでも起こっているんだからな」
朱美さんがしみじみと言ったら息子がそう言ってきた。
「あっ! 騙されるところだった~。おじいちゃん、おばあちゃん。だから~、いつから恋人になったの」
陽菜の質問が微妙に変わった。
「陽菜、さっきと質問が違うのだけど」
「どっちも同じことなの! それよりも答えてよ!」
「そうだな、まだ恋人になった頃の写真は出て来ないな」
夫がそう答えたら、陽菜はアルバムを凝視して、ページをめくったの。次のページは音楽発表会のもの。うちのクラスは何を歌ったのかしら。
陽菜は何も言わずにページをめくった。その次のページはマラソン大会と餅つき。どちらも保護者に手伝いを頼んでいた。子供達を応援しながら道を曲がるところを教えてくれたのよ。餅つきはもち米を蒸かすことのお手伝い。
そしてまた、運動会と音楽発表会とマラソン大会。保護者が写真を撮れる行事はこんな物だったようだ。他には、誕生日に貰ったおもちゃと写っているもの、生まれたばかりの妹を抱いているもの。妹の七五三の写真が、私の写真の間に入っていた。
そして、そろそろアルバムのページが終わるころになって、ある写真が目に飛び込んできた。
「まあ~、これは・・・」
私はそう言って絶句してしまった。
「ねえ、おばあちゃん。これっておばあちゃんよね。何をしているの」
私はみんなに見つめられて顔が赤くなるのがわかった。本当にこんな写真があることは忘れていた。私のアルバムにも同じものがあったのに・・・。
「これはな、この頃のアイドルの曲の振り付けを踊っているんだよ」
「アイドル? AKBや乃木坂みたいなものなの」
「ああ、そうだよ。これはピンクレディーのUFOじゃないかな」
「あなた・・・言わないで・・・ください」
私が顔を俯けてそう言ったら、朱美さんと陽菜が騒ぎだした。
「おばあちゃん・・・かわいい~」
「お義母さん、顔、真っ赤・・・」
「おばあちゃんがかわいいよね、おかあさん」
「ええ、そうよね、陽菜。どうしよう、こんな可愛い人が義母だなんて」
「もう、今日はおばあちゃんと一緒に寝る~」
「陽菜。陽菜はもう4年生なんだから、1人で寝られるよな」
「おじいちゃん。陽菜ね、おばあちゃんと女子トークするの。おじいちゃんは裕翔と一緒に寝てね」
穴があったら入りたくなりました。今風にいうなら、黒歴史ということでしょうか。陽菜が追い打ちをかけるように言ってきました。
「ねえ、おばあちゃん。この踊りって覚えているの?」
「振付~? ええ、うろ覚えだけど、少しなら・・・」
「わあ~! やってやって~」
無邪気にいう陽菜に恨みまがしい目をむけました。そうしたら夫に手を引かれました。立ち上がると夫が言いました。
「私も少しなら覚えているよ。一緒にやってみようか」
そう言って最初のポーズをしました。私もつられてポーズをします。夫は前奏の部分を口ずさみ始めました。私はそれに合わせて、手を動かします。前奏部分が終わり歌詞の部分を歌いながら、体を動かします。・・・意外と覚えているものです。
気がついたらUFOを踊りきっていました。本当に歌いだしたら歌詞もちゃんと出てきたの。
朱美さんと陽菜だけでなく、息子と裕翔も拍手をしてくれたお。4人の視線が恥ずかしくてしゃがみこんでしまったら、夫もしゃがんできた。そっと夫の顔を見たら微笑んでいました。
「振付を・・・知っていたんですね」
私が小声で言ったら、夫も耳元に囁くように言ってきた。
「覚えていませんか。長尾さんを吃驚させるんだと練習をしたことを」
言われて思い出したの。あの頃仲良く遊んでいた長尾理香ちゃんが、ピンクレディーの大ファンで、よく一緒に踊ったことを。それで、理香ちゃんを驚かせたくて、家で練習をしていたことを。そう、あの写真は練習していた時のものだろう。それから・・・一人で練習するより二人の方がいいだろうと、夫も付き合ってくれたことを。
「あっ・・・」
夫はニッコリと笑いました。あの時、嫌がらずによくつきあってくれていたのは・・・。
「座りましょうか」
「はい・・・」
私達が座ったら陽菜がまた湯呑にお茶を入れてくれていた。それをありがたくいただいた。
一口飲んだら気持ちを落ち着けた。
「うふふっ。いいものみぃ~ちゃった」
「陽菜ちゃん。お願いだからよそで話さないでね」
「やだ~、おばあちゃん。陽菜そんなことしないよ。人に話すなんてもったいないもの。それよりね、そのピンクレディー以外のアイドルを教えて欲しいな~」
「えーと、そうねえ、小学校に入ったくらいが、西城秀樹やフィンガー5とかかしら」
「女性が天地真理じゃないかい。確かまりちゃん自転車が出ていなかったかな」
「ええ、そうだったと思うわ。父に聞かれたもの。まりちゃん自転車を欲しくないかって」
「それで、買ってもらったの、おばあちゃん」
「いいえ、買ってもらいませんでしたよ」
「え~、なんで~」
「だってね、その当時は自転車も高かったのよ。特に子供用自転車はね。・・・それになんか余計なものがついていて嫌だったのよ」
あの自転車は確か籠の所にお姫様のような真理ちゃんの顔写真があった。チェーンカバーにはでかでかとまりちゃんと書かれていた気がする。出来れば損な目立つものには乗りたくなかったもの。
「他には山口百恵さんかしら」
「それなら花の中3トリオだろ。桜田淳子と森昌子の3人で」
「では、新御三家の西城秀樹、野口五郎、郷ひろみ、ですねえ」
「都はるみに中村雅俊、荒井由実はどうだろう」
「演歌を歌っていた方もでしたら、千昌夫、小林幸子ですかしら」
「キャンディーズ、沢田研二、細川たかしとか」
「小学生の時はよくわからないですわね。ああ、でもレッツゴーヤングという番組がありましたよね。太川陽介さんに渋谷哲平さん、川崎麻世さんが出ていなかったかしら」
「それなら、ザ・ベストテン、歌のトップテン、夜のヒットスタジオのほうを見ていなかったかい」
その頃を思い出すと、私は歌のトップテン以外は見ていなかったことに気がついた。小学校の頃には9時には布団に入っていて、見ることが出来なかったからだ。そのトップテンも滅多に見ることはなかったのだけど・・・。それは裏で水戸黄門などの時代劇をやっていたからだ。祖母が時代劇好きで、その時間は祖母の時間と決まっていたのだ。




