海中へ
三話連続更新ですのでお気をつけて
ゆっくりと水面へと降りていく宇宙船
次第に海へ近づいて行き、静かに着水した。
アトランタの海は決して荒れる事は無くただ静かに風と水が流れている。
それもそのはずで、言うなれば海の水は神が満たしたものであるから、最初に人を流した時以降はずっと穏やかなままだからだ。
「どこまで行っても蒼一色だな」
「何か目印がないと迷うねこれは」
「取り敢えず海底まで行ってみよう」
「そうね」
着水した状態からゆっくりと海底に向かって行く宇宙船。
水は澄んでいてどこまでも見渡せそうなほどに透き通っている。
それもそのはずで、千年と言う月日により不純物などはゆっくりと海底に沈んでいき、結果水は驚く程の透明度になったと言うわけだ。
人が居ないだけでここまで綺麗になると言うのだから自然の力は偉大である。
つまり、海底まで見渡せると言うわけだ。
しかし全てが見渡せるわけではなく、光の屈折の影響で遠くまでは見えない。
そして陽の届かない所はやはり存在するわけで、深い海溝などは見る事は出来ない。
「これが海の中か、何と言うか凄いな。言葉じゃ言い表せない程に」
「ええ、とても海の中とは思えない程綺麗」
海の中には様々な魚が居て、それぞれが自由に泳いでいる
サフィ達は実際に魚や海に生きている生物を見たことはない。
それもそのはずで、水の輸送機は水だけを運ぶのであって魚を運ぶことはないので、魚を食べたり鑑賞したりと言う文化自体が存在しない。
サフィ達が魚を見たことも無いように魚たちにもそれは言えるので、驚きや好奇心から宇宙船に近づくもの達もいる。
「ねぇ見て!これが歴史書で書かれていたさかなかな?」
「ああ、多分これがさかなだ。しかし色んな種類が居るんだな」
モニターに移される色んな種類の魚達、思い思いに泳ぎ周っていてとても楽しそうである。
魚達と戯れながら沈んでいき20分ほどで海底に着いた。
「見ろよルピ、木や草が生えてるぞ!」
着いた海底には草や木が生えており、とても水の中とは思えない景色が広がっている。
本当にただ水の中に沈んだだけのようで、特に荒れた気配などはない。
ただ、草や木は水の中で生えてるだけあって、コロニーの中で生えているような物とは多少違うようで普通の木や草のように緑色ではなく、葉は浅葱色をしていた。草も木も全てが浅葱色で、樹の幹などは普通の色だ。
「これは凄いわね、これだけ蒼いなら海の上から見ても木が生えてるなんてわからないわけだわ」
「実際にここまで来ないとわからないわけだ、よし記録として撮っておこう『カシャッ』」
サフィは宇宙船に付いている撮影機能を使い風景を記録した。
「撮影機能付けといて正解だったわね」
「だな、これからも撮り続けて行って記録を作って行こう」
風景を写真に収めつつ、感慨に耽りながら辺りを見回してみる。
サフィが奥の方に見える何かを見つけた。
「そうだな、取り敢えずの目標としてあの遠くに見えている何かに向かってみないか?」
「そうね、ここで風景に見惚れるのもいいけど早く色んなところを見たいしね」
「よし、じゃあ取り敢えずあそこまで向かうか、途中で何か見つかるかもしれないからゆっくり行くか!」
その指令を受けて宇宙船はゆっくりと水の中を進む。
ゆっくりと言っても広い惑星を探訪するだけあって速度は結構出ていたりする。
それから2時間後、遠くに見えていた何かに向かい宇宙船は近づいていったが、近づいてみてそれが街であるとわかった。
街に来る途中、木が生い茂った中を魚達が優雅に泳いでいたりした風景を見ながら昼食を食べたりしていたのだが、それは置いておく。まあとても綺麗だったと付け加えておこう。
街だが、全体としてはそう大きくはない。時間の経過により海草や木などが所々に生えている。
上から街を眺めてみたがやはり人は居ない。
それがどこか寂しくも見え、しかし美しくもある。
「近いと思ったが結構時間がかかったな」
「直ぐに着くと思ったけど結構遠いのね、これからはもっと距離に気を付けて行きましょう」
「あ、しまった!」
「何?忘れ物?」
「地図を記録していくの忘れてた……」
「はあ。探索する前から記録してるものだと思ってた」
「ま、まあ気を取り直してこの街から始めよう!」
「はいはい」
ルピの呆れた声を横に、モニターと腕輪に地図を表示させる。
腕輪のは空間に投影するタイプの地図だ。
この地図は定期的に周囲を計測し撮影して取り込み、地形情報を繋げていく方式だ。
腕輪のは視覚情報とリンクしているので、見た端から表示してくれている。
見やすいように小さく調節はされているので、大きくなったりして煩わされることはない。
地図昨日は撮影機能とはまた別で、応用版とでも言うべき物だったりする探索用に作ったサフィのオリジナルだ。
通常記録魔法は、書いてある物や絵を魔法で転写し、何かに写す魔法であって地図を作ったりは出来ない。
しかしサフィはそれを『風景』として記録することで繋げていき大まかな地図を作製する魔法を構築していた。距離の設定や物の位置の補正、コロニーからどの位置に存在しているかなど細かい設定が必要となってくるが、そこはサフィの腕でカバーしてある。
「地図機能は正常だな。それじゃこの街を中心に探索をして行こう!」
腕輪とモニターを見ながら確認する。
「まずはこの街の探索ね!」
「ああ、楽しみだ」
とウキウキな二人は街へと入っていくのであった。