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第4話 その少年、誘拐される

【4】

 三日後にまた来る、とミズキと約束していた俺はいつものように城の者に気付かれぬよう細心の注意を払い、本を片手に庭園の木の根本に腰掛けようとしていた。

その時、防壁の外から、ひゅんひゅん、と言う聞き慣れた音が聞こえた。ひゅんひゅんひゅんひゅんと、しかしそれはいつもと同じようで、違った。まるで複数の鉤縄を一斉に振り回しているかのような音だ。

俺はさっと立ち上がり鉤縄が飛んで来るだろう方向を注意深く見つめた。そして、案の定複数の鉤縄が防壁に引っかかり複数の頭が顔を出した。全員薄汚いフードを被っているので顔の区別が付かない。

 そういうや、前にミズキが仲間を紹介すると言ってたっけ……

もし本当に、この集団がミズキとその仲間だとしたらむやみに兵士を呼ぶことは出来ない。

俺はいつでも逃げ出せるように本を脇に置くと身構え、その集団を見極めようと目を凝らした。そしてその集団全員が地に足を着けたところで、一番背の高い人物の瞳が俺を捉えた。

俺はまだ動かない。

微動だにせずにいると、そいつは真っ直ぐ俺に向かって歩いてきた。

 何となく嫌なものを感じ、ジリジリと後退しながらも見極めを続けた。そして事は起こった。

一番背の高い人物はおもむろに懐から長剣を取り出すと近くにあったハナミズキの木を切り倒したのだ。

 なっ‼

 ついこの間、花が咲いたとミズキが大喜びしていたハナミズキの木を何のためらいもなく切り倒したのだ。

 こんなのミズキの仲間であるはずがない!

 クルリと向きを百八十度変え、全力で走り出す。

「おいっ、誰かいな……‼」

 しかし、時既に遅く、一番背の高い人物は数メートルと空いていなかった距離を一瞬で埋め、俺が助けを呼び終わる前に殴りかかった。

「うっ‼」

うなじに鋭い痛みを感じ、意識が遠のいていく。

 一番背の高い人物は俺が地面に倒れる直前に抱き上げ、肩に担ぐとフードを取り、醜い顔をさらした。

 髪は何日間も洗っていないかのように、ぐしゃぐしゃで肌は黒く、左目に大きな切り傷がある男だ。男は口の端を醜く歪め、肩に担がれている意識の朦朧とした俺に話し掛けた。

「ちょーっと不用心すぎねーか? 王子様よー。それとも、誰か待っていたのかなー?」

 男は、クックックッ、と不気味に笑うと無言で仲間に合図を送った。

 そこで俺は完全に意識を手放した。



 そして、次代国王候補サニー・アルフォードが誘拐されたという事実は瞬く間に国中に広がった。


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