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第12話 その少年、いざ外の世界へ

【12】

 ミズキとワトソニアは家の中に戻ると赤色や青色など鮮やかに染め上げられ、細かく刺繍の施してある何やら綺麗な反物を丁寧に畳んで袋の中に入れていた。

「それ、何だ?」

 あまりに綺麗なその反物に目を奪われ、反物が袋の中に消えるさまをずっと目で追い続けた。

 そんな俺の様子にミズキは少し照れたように返した。

「これを街で売って、食費とかの足しにするんよ」

「なるほど、綺麗だな……ミズキが作ったのか?」

 これ、というように指で指し示すと、照れたようにしていたミズキの顔がますます赤くなった。

「うん、まぁ…ちょっとね」

 褒められることになれていないのか、それだけ言うと急いで反物を袋の中に詰め込んでしまった。

 ……もう少し見ていたかった。

 全ての反物を袋の中に詰め込み終えると、三人は再度外に出る。すると、ちょうど野菜を収穫し終えたのかアビス、ポピー、ソウの三人が軽く野菜の土を払い落としていた。

「その野菜は持って行ってどうするんだ?」

「他の食いもんと交換してもらうんだよ」

 そんなことも知らねーのか、と言外に伝えるため息とともにソウは投げやりに言った。

 成程、そうやって人々は生きているのか。

 純粋に感心していた俺は、ソウの嫌味な言い方にも特に腹を立てることなく様子を見守っていた。

「うむうむ、なかなか立派よ」

 ミズキは取れたての春野菜を一つ手に取り、昇ったばかりに太陽に照らしてみる。大きく育った野菜は太陽の光を受けてその輝きを増していた。

「袋持ってきたよー」

 アスターの間延びした声とともに複数の麻の袋がドサドサと俺めがけて投げられ、その全てを諸に受けた俺は地面へと顔からダイブし麻の袋の下敷きとなった。

「いてぇ……」

 抗議しながら起き上るもミズキを除く六人は気にかける素振りを一切身ぜず、無視して作業を続けていた。

 完全にのけ者とされ少し寂しく思いながらも、初めて目にするあらゆるものに目を奪われていた。

 それは、調理人がまだ手を加えていない生の野菜だったり、まだ呉服屋が手を加えていない反物だったり、見るモノすべてが真新しかった。

 採ってきた野菜を全て丁寧に六つの袋の中に詰め込み終えたそれらを手分けして運ぶ。一つはアビスが、一つはポピーが、一つはアスターが、一つはカライが、一つはソウが、そして一番大きな袋は俺へと手渡された。

 初めて持つ重みに、思わず野菜のたくさん入った袋を取り落としそうになった。

「……落としたら許さない」

 耳元で、ぼそり、とアスターがつぶやく。

 真剣そのものの声に危機感を覚え、背中に冷たい汗が流れるのを感じた。

 ちらりと横を見ると反物の入っている袋を大事そうに抱えるミズキと、小さなポシェットを肩から掛けているワトソニアがいた。

 何度見ても違和感の拭えないミズキの長い金髪が風を受けてふわりと広がる。

 ミズキが振り返った。パチリと目があう。ただそれだけで、俺の鼓動が、ドクン、と高鳴った。

 ……?

 にこりとミズキが微笑む。

「レイン、フードをきちんと被って。さあ、街へ出発~!」

 ミズキの号令と、おー、という掛け声とともに、全員が一斉に丘を下っていく。

 声高らかに歌を歌いながら。


【一人の少女が泣いている

 冷たい籠の中で泣いている

 そこへ自由に羽ばたく小鳥がやって来た

 ねぇねぇ どうして泣いているの?

 そこで少女は小鳥に答えた

 あなたのような自由が欲しいの

 それを聞いた小鳥は首を傾げてこう言った

 どうして? どうして?

 籠の扉は開いているよ……       】


 その歌は何となく耳にしたことのある歌だった。よく意味の分からない哀しい歌。

 確か隣国の民謡だったような……

 それを彼らは軽快に何度も何度も歌った。このワンフレーズだけをまるでその歌が愉快な歌であるかのように何度も何度も歌った。

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