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第11話 少年少女はマイペース

【11】

 外に出ると、もう朝日が昇り始めていた。各家からは白い湯気が立ち込め、街全体が目覚め行くようだった。

 そのあまりの美しさに目を奪われ、いつの間にか隣にミズキがいることに気は付かなかった。

「綺麗だが……こんな景色が見られるのはこの国でもこの丘だけなんよ」

 ミズキの言葉に素直に頷いた。

 確かに、城も丘の上にあるが城壁が邪魔してこんな景色を見ることなんてできない。たとえ、門を出たとしても城と街とでは遠すぎる……

 そのまま呆けた顔で町全体を見回す俺を見て、ミズキはクスリと小さく笑うと、パンパン、と手を叩いて皆の注目を居集めた。

「ほんじゃまー朝食の買い出しも兼ねて街を突っ切っていきたいと思います。異論のあるやつ挙手!」

 そういうと六人中六人が手を上げた。

「……異論しかないんかい」

 ミズキは少し、がっくりというように肩を落とすと、ニコニコ微笑みながら小さく手を上げていたポピーを当てた。

「今国中は王子様クズが誘拐されたことで持ち切りだよ。そこにのこのこ王子様クズが現れたら……ただの間抜けだよ」

 ポピーの言葉に他の五人は、うんうん、と頷く。

 そりゃそうだよな……誘拐犯どんだけ間抜けんだよ、て話だよな。

 俺も腕を組み大きく頷いていると、ミズキは言われて気が付いたのか、う~む、と悩む。

「そうか……さすがにレインを間抜けにするわけにはいかんよな」

 ……ん? 間抜けなのは俺なの?

「そうだよ、いくら火災ゴミと同レベルの王子様でも少しは憂慮しなきゃ」

 そこにアスターが拳を握って勢いよくミズキに詰め寄る。

「おいこら、ちょっと待て」

 さすがに堪忍袋の緒が切れ、文句を言おうとした俺の肩に誰かの手が、ポン、と置かれた。

 振り返ると優しく微笑んで頷くポピーがいた。

 おお、俺の代わりに叱ってくれるのか!

 ポピーはミズキの方に乗り出しているアスターを優しく諭した。

「ダメだよ、アスター。燃やしたら有害物質が出るから埋め立てないと」

「ああ、そっか」

 ポピーの言葉にアスターは、ポン、と手を叩いて納得した。

 訂正するべきはそこなのかよ……

 人知れず涙を流し、六人に嫌われていることを自覚した。

 そこで、ようやく考えが纏まったのか、ミズキは組んでいた腕を解き人差し指を立てる。

「要は、のこのこ、じゃなけりゃあいいんだろ?」

 そういうと少し離れたところから様子を窺っていたアビスを手招きした。

「アビス、悪いんだが、お前のマントをレインに貸してやってくれ」

 アビスは無言で頷くと着ていたマントをその場で脱ぎ、俺に差し出した。全く表情を変えないアビスからおずおずとマントを受け取り、それを羽織る。

 アビスのマントは大きく、俺の体をすっぽりと覆い隠した。フードまで被るとほとんど足元しか見えない。

「さすがにでかすぎるよ……」

 ミズキがいるであろう方向に向きながら抗議すると、クスクス、と回りから笑い声が聞こえた。

「お化け、もしくはゾンビの様だね」

 ソウの鼻で笑ったような声が聞こえてきて、顔が熱くなるのを感じた。

「こらこら、そう言わんの。こんだけ隠れてりゃ充分だろ? それにたとえ気づかれても誰も何も言わんだろ」

 ミズキはそういうと手早く下の引きずっている部分を縫い上げた。

 誰も何も言わない……なぜ?

 しかし、その質問に答えてくれるものは誰もいないことを知っていたので、何も質問することなくされるがままになっていた。

 今日会ったばかりの六人に関してはあまり良い感情を抱かれていないということを理解しているので質問をしてもきちんとした答えが返ってくるとは限らない。また、ミズキに関しては時々回答をはぐらかす時があり、その質問を何となく区別できるようになっていた俺は疑問を頭の隅に追いやる。なぜなら、気にしていても無駄なエネルギーを使うだけだからだ。

「よし、これでいいだろう」

 明るいミズキの声で、無意識に呆けていたサニーの意識が戻される。見ると幾分足元が動きやすくなっていた。

 ミズキはてきぱきと片付けながらもう一度確認する。

「んじゃ、もう異存はねーな」

 そのまま一歩を踏み出そうとしていたミズキに、ストップの声がかかる。

「今度は何だい、ソウ」

 呆れ気味に振り返るミズキとは対照的に、ソウは必死そのものの顔で訴えた。

「街中経由で王子を城まで送り届けた後に朝食だなんてもたないよ‼」

 ああ~確かに、と今度はその場の全員が頷いた。

 成長期の少年にとって一仕事の後にさらにお預けを食らうのは死活問題なのである。

 俺も自身のお腹に手を当ててみると、昨日の昼から今の間までに腹に入れたのはさっきのドクダミ茶だけであるため、キュルキュル、とお腹が鳴る。

 そういえば、腹が空くなんて感覚……生まれて初めてだ。

 そんなことでしみじみと生きていることを実感していると、ミズキが、ポンポン、と背を叩いた。

「?」

 何だろう、とミズキの顔を見るが、ミズキは俺の方を見てはいない。

「それもそうだな……ちょうど朝市やってるし、街で買い食いすっか」

 にっこりと笑い提案するミズキにその場にいる全員が、異議なし‼ と賛同の声を上げる。

「そんじゃ、アビス、ポピー、ソウの三人で畑から野菜を引っこ抜いて来い。アスター、カライは野菜入れる袋持って来て」

 そう言い終わるか否やの時には皆動き出していた。

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