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7章 変人女王の政策―――八百年・一月(二)




「これが今日の提案。全員注目」


 “白の星”の僻地。標高数百メートルのクオル王国、築数百年の城の食堂にて。

 命令に従い、就任百日と経たない素人女王、つまり私の差し出した楽譜のコピーを囲む家臣達。左回りで図体の割に頼りない皇太子のレイ、その姉でバツ一の皇女リリア。義妹のくせに長身巨乳のセミアに、最近また髪の面積が減ったリオウ大臣。最近面の皮ばかり厚くなる衛兵のアス、そして右端には私のパートナーのラフ・コリー、ボビーがいた。失礼にも好奇心旺盛な義妹以外は全員(犬までもが!)、何処か戦々恐々とした表情だ。揃いも揃って失礼な家臣共め!

「賛美歌?随分原本は擦れていたようですが、一体何処からこんな物を持って来たんです?」

 流石我が自慢の(鉄面皮)衛兵、目敏い。

「お婆ちゃんの部屋からちょっとね。言っておくけど、本人が昼寝している隙に借りただけだよ」

「それ、立派な泥棒じゃない。相変わらず手癖悪いなぁ、くーちゃん」

 セミアが悪戯っぽく笑いつつ紙を捲り、下の二、三枚目を確認する。

「で、こんな物を用意して、俺達に何をさせるつもりだ?」

「お婆ちゃんの百五十回目の誕生日、確か来月でしょ?だから皆で練習して、これをプレゼントしようと思って」


 EEEEEEE―――!!!?としか表記し難い、とんでもなく酷い叫びが巻き起こる。


「く、クランの提案にしてはまとも過ぎるわ……」

「女王様。我々は本当に『普通の』合唱をするだけで宜しいんですか?」

 警戒する年長者共に私は青筋を隠し、努めて笑顔を向ける。

「勿論。何ならクオルの他の国民達にも協力してもらおうよ。大勢に祝われた方がお婆ちゃんも嬉しいし、きっと」

「くーん」

「ほら、ボビーだって同意してる」

「いえ、単に早く朝食にありつきたいだけのよう」バシバシッ!「った!」「キャウン!」

 正義の鉄拳を下ろし、改めて全員を見回す。

「練習時間は約半月だけどまぁ、有能な先生も呼んでおいたし大丈夫でしょ」

「はあっ!?」

「先生って、そんな都合の良い人材が何処に転がって―――」


 ガチャッ。「おはようございます。あの、クランベリー、こんな朝早くに一体何の用ですか?」


 タイミング良く現れた法衣姿の四天使、イスラフィールに早速事情を説明。すると信仰者と聖書が三度の飯より好きな彼は、予想通りサファイアの目を輝かせた。

「それは素晴らしい贈り物です!ええ、私に出来る事なら幾らでも協力しましょう」

 鼻息荒い所に楽譜を渡すと、食い入るように読み始める。そしてきっかり三分後。スローテンポな天上の歌声に因って、紙上の賛美歌が蘇った。奏でられたメロディーが、広い食堂に静かに響き渡る。

「ほー」

「綺麗ですね……」

 三番まで終わると、私以外の全員がパチパチパチ……静かな拍手を送った。

「凄い!完全に聞き惚れちゃったよ!」

「?褒められる程ではありませんよ、セミア。私は主に創られし者、これぐらいは当然です」

 賛辞を天然で切り返し、再度楽譜を確認。

「では丁度四パートありますので、パート毎に分かれて練習を行いましょう。私は一応全ての声を出せるよう創造されていますが、早速始めますか?」

「朝食が終わったらね。言っておくけれど、勿論お婆ちゃんには内緒でね?」

「了解しました。ところで一つ」

「何?」

「教授にあたり、鍵盤楽器があると助かるのですが。私が声で音階をなぞっても構わないのですが、そうなると一度に一パートしか教えられません」

「あ、それもそうか」

 失念のフリをし、皇女に視線を向ける。

「リリア、そう言えば倉庫にオルガンあったよね?後で持って来てくれる?」

「良いアイデアだけど、修理しないと鳴らないわよ?最後に使ったのも、母さんがまだ小さい頃だって聞いているし」

「あれ使うなら業者を呼ばないとな。じゃイスラ、悪いが今日の所は楽器無しで頼む」

「分かりました」

 ではそろそろ主役を連れて来ますね、皆さん、くれぐれも御内密に、衛兵がタイミング良く密談終了を告げた。





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