プロローグ
俺の名前は榊原優太。
いたって平凡な高校2年生…
とでも言うと思ったか?
残念ながら俺は平凡でも普通でもない。言うなれば“エリート”と呼ばれる人間である。
28歳という若さにして国家機関である警察庁の警部を務め、日々難事件を相手に日本中を駆け回っている。
その上ルックスは上の中(自己判断)、スタイルは180近い長身に柔道や剣道、合気道にサバットといったあらゆるスポーツで鍛えられている。
これほど人が理想と上げる存在に近い人間がこの世に何人いるだろうか。
そんなエリートである俺の父、榊原優雅は警察庁の長官。名前からわかると思うがかなりのお偉いさんだ。
エリートコースをひた走る俺は今日、父に呼ばれ長官室にいた。
「用事はなんでしょう、長官。」
「優太、そんなに固くなるな。親子の中だろう。」
「今は勤務中です。」
「お前は昔からまじめすぎる…昔みたいにとーたんって呼んでもいいんだぞ。」
「今は勤務中です。」
父の戯言に俺は眉一つ動かさない。父は俺が思春期を迎えたころからこうだ。いつもまじめな俺をからかって遊ぶのだ。
そんな俺をつまらなそうに見つめてふぅ、と一息つくと父は重い腰を上げた。
「親子のスキンシップはここまでにして…優太、お前にはちょっと警視庁の方に移ってもらおうと思ってな。」
「警視庁…?」
…正直俺は動揺を隠せなかった。
国家公務員Ⅰ種試験を合格しいきなり警察庁の警部補につき今までエリートコースを駆けてきた俺が、何故いきなり警視庁に。
いや、もしかしたら警視庁の警視…はたまた警視長なんかを任されることになるかもしれない。
今までの俺の働きからしたらそうだろう。そうに違いない。
「何故急に警視庁へ?」
「いやぁ、ちょっとなぁ…その辺の奴じゃ務まらない役職があってな。」
ほいきた。
俺は心の中でニヤニヤしながら話を聞いていた。なるほど、俺じゃないと務まらないと。そういうことだな。
「とにかく今から挨拶に行くからついてこい。…あそこの警視長は変わってるから気をつけろよ。」
警視長…流石にいきなりそんなキャリアアップはないか。ってことはやはり警視(理事官・管理官)って所か。
そんなことを考えながらも俺は真顔で父の後についていった。
「ついたぞ。」
「はい。」
大きくそびえ立つ建物の中に入ると、長官である父を見てすれ違う人が次々に敬礼していた。
俺もいつか目の前に立つ父と同じ立場になるのだろう。
静かな野望を胸の内で光らせ、俺は堂々と胸を張って歩いた。
それにしても、俺はどの役職につくのだろうか。今までの経歴から考えると犯罪抑止対策本部辺りだと思うが。
「………?」
俺はエレベーターに乗ってから眉を潜めた。通常上へ向かうはずのエレベーターが下へ動き出したからだ。
「長官…地下には資料室しかないと思いますが…。」
「おう、その資料室に用があるんだ。お前も準備しとけよ。」
準備?一体なんの用があるんだ?挨拶に来たんじゃなかったのか?
俺は様々な疑問を浮かべながらゆっくり口を開けたドアを通り抜けた。
警視庁の地下には資料室という大きな部屋がある。
そこには解決した事件や調査内容の他にも結局解決しなかった“未解決事件”のデータも大量にある。
終わったことやわからなかったことがほとんどのためその部屋自体に人がほとんど訪れない。
そんな資料室に一体何の用があるのだろう。
「ん…“未解決事件対策本部”?」
いつの間にか“資料室”と書かれていたはずのネームプレートが“未解決事件対策本部”という名前に変わっていた。
そしてその名前を見た瞬間俺はとてつもなくいやな予感がした。
しかし俺が何か言う前に父はその“未解決事件対策本部”と書かれたネームプレートのぶら下がるドアを一気に開いた。
…ノックぐらいしたらどうだろうか。
「こんにちわ、警視長はいるだろうか。」
「あいあーい。」
そうか、そういうことなのか。俺はもう気がついてしまった。
この資料室、もとい“未解決事件対策本部”に俺は派遣されるのだと。
「優太、今日からここがお前の職場だ。どうだ、広いだろう。」
そうですね、大量の紙切れしかないですけどね。
俺は父がいつものようにからかっているんだと、信じたかった。
「そして彼女がお前の上司、警視長だ。可愛がってもらえよ!」
…女性、なのか。
俺はさらに頭を抱えて父が手を広げる先を見たが誰もいなかった。いや、誰もいないというわけではない。
正確には机にお菓子を広げジュースをすすっている子供が椅子に座っているだけで、警視長の姿はどこにも見当たらなかったのだ。
「今日は留守のようですね。挨拶は明日にしましょう長官。それでは…」
「何を言うか、目の前にいるではないか。失礼だぞ優太。」
踵を返して部屋を出て行こうとした俺の肩をつかんで父はまぶしいほどの笑顔を向けた。
今まで様々な悪ふざけを父に仕掛けられてきたが、今日ほど腹の立つ出来事は今後起こらないだろう。
可能であれば一発本気で殴りたい。警察にあるまじき行為だが。
「あの…長官、私には警視長の席に座っているのは子供にしか見えないのですが…」
「そうだ、彼女がここの警視長だ。」
「やっほー、よろしくねん、警部さーん。」
椅子に座ってミックスジュースを飲んでいる子供は、そう言ってサイズが明らかに合っていない白衣の裾をてろてろと揺らした。
どうやら本当にこの子供が俺の上司となる人間らしい。
いや、嘘だろ。普通に考えたっておかしいだろ。
どうみても小学校高学年になるかならないか位の子供が警察…しかも警視長?
嘘だろ…嘘だろ!?
「それじゃ、私は長官という身で忙しいからな、後は任せたぞ!さらば!」
「えっ…ちょ!」
思わずクソオヤジと叫びそうになってしまった。父は俺に向かって親指を立てると足早に部屋から出て行った。
部屋には幼い子供と状況の飲み込めない俺、榊原優太。
「……………。」
「ねー、あんたがあの長官の自称エリート息子なの?」
「誰が自称だ!」
俺は一体どうすればいいんだ。
読んで解ると思いますが、私、ぬーんには文法らの知識はありません。
また警察内部の知識もありません。
(何故書いたし。)
そんな私の書く小説に、世界観に少しでも興味を持っていただけると大変嬉しいです。
また感想やらなんとなく言っておきたいことやら何かしら言葉をいただけるとぬーんはとても喜びます。
それでは、お目汚し失礼しました。