よりを戻したい?今更もう遅いわ。卒業パーティーでみんなの前で私との婚約を破棄したのはあなたの方でしょ?
「おいエリザベス! 俺とよりを戻してくれ」
私の部屋にはいってくるや否や、元婚約者であるヨハンがそう言って私に土下座をした。
「ちょっと、急に入ってきてなによ。藪から棒ね」
「やっぱりお前じゃないとダメなんだ。俺と結婚してくれ」
「だって、卒業パーティーでみんなの前で私との婚約を破棄したのはあなたの方でしょ? 別の女と結婚するんじゃなかったの?」
「マチルダのことか? あいつはダメだ。見た目に騙されたんだ。いざ付き合ってみたら、平気で浮気はするし、下品だし、物は盗むし、ろくでもない女だったんだ」
「そんなこと言われても、私はもうほかの人との結婚が決まってるのよ」
「なに?! 俺と別れてからたった二週間しかたってないじゃないか! いったい相手は誰だ?!」
「私の結婚相手は・・・」
その時ドアが開いて、現在の私の婚約者であるルイが部屋に入ってきた。
「やあ、エリザベス!」とルイは言った。
「あ、ルイ」
「おや? この人は?」と彼がヨハンを見る。
「この人は私の元婚約者のヨハン。私との婚約を一方的に破棄した人」
「よろしくヨハン。君が婚約破棄してくれたおかげで僕はエリザベスと婚約することができたんだ」
「こ、こいつが新しい男なのか!?」
「そうよ。彼は私の婚約者のルイ」
「貴様! エリザベスは俺のものだ!」
「おいおい、すでに君との婚約は解消されているだろ? 今は僕こそがエリザベスの婚約者なんだ」
「うるさい! 僕は公爵なんだぞ! あの婚約破棄は間違いだったんだ。やっぱり俺はエリザベスと結婚する」
「めちゃくちゃだな。いくら公爵でもそんなことはできない」
「おいエリザベス、俺には地位も名誉も財産もあるんだ。こんなどこの馬の骨かもわからん奴よりも俺の方がいいに決まっている」
私は首を振った。
「いまさらよりを戻したいって言ってももう遅いわ。私はルイのやさしさにひかれたの」
「くそが! お前さえいなければ、俺はエリザベスと結婚できるんだ! 殺してやる!」
「うぐぐぐ! くるしい! 首を絞めるのはやめろ!」
「やめてヨハン! 誰か! 誰か来て! ルイが殺されちゃう!」
すると部屋の入り口から鎧を着た兵士たちがなだれ込んできてヨハンを取り押さえた。
「無礼者! 俺は公爵だぞ!」とヨハンが叫ぶも、兵士たちは手をゆるめない。
「殺人未遂の現行犯だ」と兵士のひとりが言った。
「殺人未遂ぐらいなんだ。これまでも気に入らないやつを何人もぶっ殺してきたんだ。俺は公爵だからそれが許されるんだ」
「これまではそれでよかったでしょうけど、今回はそうは問屋が卸さないわ」と私は言った。
「問屋?」
「私の婚約者のルイは王太子なの。あなたは王太子を殺そうとしたのよ。当然極刑は免れないわね」
「な、なんだと! この男は王太子だったのか?!」
「そうだ、僕は王太子のルイ・ボナパルトだ。君を国家反逆罪で逮捕する」
兵士に連行されていくヨハンは、とてもみじめな顔をしていた。




