【幕間②】教皇 Papst
永久中立国のザイス公国首都・ジャイネーブ市内
在ザイス公国シャラーム教最大流派・公同聖庁大使館内
新皇帝歴2年1月31日
夕方16時10分頃
教皇であるペイオス13世は大いに困っていた。
先ほど始まったアーモニア帝国との会談で、皇帝は堂々と包み隠さずに神の名のもとに大量の亜人隔離及び追放政策を世間話のように持ち掛けてきた。
「それは流石にやりすぎのではないか、皇帝陛下。」
シャルーツ枢機卿は半身を前に出して、怒りが伺える目で話した。
皇帝は気にしてないような笑顔で枢機卿を見た。
「丁度いい計画と自負していますが・・・お互いに大きな利点があるのではないか・・そうでしょう、教皇聖下。」
「度が過ぎるぞ・・・皇帝よ。」
枢機卿の堪忍袋の緒が切れ、怒りをあらわにして、真正面から否定した。
「枢機卿・・・少し冷静になれ。」
ペイオス13世は腹心であるシャルーツをなだめた。
「その利点は見えないのですが・・・皇帝陛下よ。」
皇帝は人間性の欠片もない嘘の笑顔で教皇を真っ直ぐ見つめた。
「意外ですね・・・これだけの大きな見識を持つ教皇聖下が利点を見出さないのは
おかしいですね。」
相変わらず冷酷さを隠さない笑顔で皇帝は教皇に話した。
「貴様・・・最近まで無名は一般人だったくせに・・・」
皇帝の取り巻き達と護衛たちが枢機卿を睨んだ。
「やめるんだ、ライモント・・・」
教皇は腹心を睨んだ。
シャルーツは不機嫌そうに椅子に深く座った。
「流石教皇聖下・・・」
皇帝は穏やかな嘘の笑顔で話した。
「話聞こうではありませんか・・・その利点とやら、聞かせて願いたい。」
少しは強めと言葉で教皇が話したものの、気分は蛇に睨まれた蛙の如くだった。
「私はわかっている、目の上のたん瘤のよう存在がこの世界にいること。」
「何を言いたいのか、皇帝?」
「同じ信仰を分かち合いことなく、独自路線を進んでいく者ども。」
「それは何か・・・大体の国々が信仰の自由を認めている。」
「聖下がそれを言うのは以外ですね。」
「言いたいことははっきりと言ってほしいもの、皇帝。」
「本当は隔離や追放ではなく、蹂躙するのですよ・・・我が神を崇めない者たちよ。」
「蹂躙ですっと?」
「はい、この大陸から排除するのです・・・どうでしょうか。」
「ありえん・・・そんなの認めん・・・」
「どうでしょうね・・・帝国は既に動いていますよ。」
その言葉と同時にゴブレス辺境伯、公同聖教アーモニア帝国ベーラン教区のウェーガッテン大司教、アーモニア・シャラーム福音教会の総会議長のミュラール子爵、そして貴族院のハイス伯爵が薄笑い笑顔のままで頷いた。
「何をしたのか?」
「私が考えた、最も論理的な絶滅政策を指導させました。」
「絶滅・・・?」
「驚くことではない、公同聖教は連中を下に見ているし、地域によって、弾圧も差別もしているのでしょう・・・表面は正式に発表していなくても。」
「彼らは生を持つ者たちです・・・」
「でも我々の同種ではない。」
「教義や主の教えに反する。」
「そうですか。私が今持ち掛けてきた計画を公同聖教は一度も考えたことはないというのですね。」
「倫理的に許されない行為。」
「論理的に感情を満たす行い。」
「参加しろというのか。」
「正にそこですよ・・・聖下、参加は求めませんね、何もしないように同意してほしいだけです。」
「まさか・・・」
ペイオス13世は深い絶望と感情を圧倒する驚き、そしてこの初老の男性の非人道的な考えと行っている行為について、戦慄した。
「聖下、それはいけません!!こんな悪魔のような男、この異世界人の話に耳を貸さないでほしいのです。」
シャルーツ枢機卿は会話に割って入った。
「ほお・・・知ってたんですね。」
ゴブレス辺境伯は冷めた目と笑顔で枢機卿を見た。
「公同聖教は世界最大の宗教だ!!情報収集能力をなめるな、辺境伯。」
「ならば消さねば・・・」
辺境伯は笑顔を崩さず、枢機卿を睨んだ。
「ゴブレス辺境伯、落ち着き給え。」
皇帝は父親が子供をたしなめるような声で辺境伯を落ち着かせた。
「認めるのですね、皇帝よ!!」
枢機卿は弾圧するように皇帝を怒鳴った。
「うむ・・そうだ。」
皇帝は恐ろしく冷たい笑顔を浮かべた。
「聖下!!この事実を公表しましょう!!」
固まっていたペイオス13世は非人間的な輝きを放つ皇帝の茶色を見つめた。
「ライモント・・落ち着け。」
ペイオス13世はやっとの思いで枢機卿の名を口にした。
「私の正体が暴露されたようで、一旦整理する、異論ないですね・・・聖下?」
ペイオス13世はこの男から逃げられない、この男が張った用意周到な罠に落ちていた。
「あああ・・・」
シャルーツ枢機卿は教皇と皇帝を驚きの目を交互に見た。
「55番、首をひねりなさい。」
皇帝は命令するとミュラール司祭は素早い動きで椅子から立ち上がっていた枢機卿の後ろに立ち、両手で頭を掴み、180度回転させた。
枢機卿は何か起こったに気ずら付かず、目を大きく開けたまま、即死した。
「どうですか、聖下、我が帝国の超人の実力?・・・本物のミュラール司祭を3か月ほど前、代えさせてもらった。」
「皇帝・・・」
怒りよりも途轍もない絶望に蝕まれてペイオス13世は弱く呟いた。
「55番、ドアを開けなさい。」
皇帝が命令すると司祭の恰好をした超人は会議室のドアを開けた。
皇帝ご一行の護衛の隊長は金髪角刈りの大男は教皇の警護をするザイス衛兵団の隊長であるガズペル・ヴァン・ジョレンケの生首を手に持って、入ってきた。
生首は苦痛に満ちていたような表情で固まっていた。
「全員始末しました、皇帝陛下。」
「ご苦労、男爵。」
ペイオス13世は地面に膝を付けた。
「まいりました・・・皇帝。」
「別に絶対服従は求めていません・・・あなた方、公同聖教にはこれからのことについて、見て見ぬふり、目をつぶってほしいだけだ。立ちなさい、聖下。」
この時は初めて、皇帝は悪魔のような笑顔を浮かべた。
久々の更新です。




