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第5話 やっぱり大キライ!

「おはようございます、坂本先生」

「・・・おはよう・・・ございます・・・本城先生」


職員室に入った瞬間、

一番見たくない顔と出くわした。


しかもムカつくことに、

昨日のことなどなかったかのような、普通の笑顔。


昨日、徹は帰ってこなかった。


もう、息ができないほど苦しい。


それに加えて、朝一にムカつくくらい爽やかなこの笑顔。

もっと意味ありげにほくそ笑むとかすればいいのに。



「菜緒ー、何、本城先生を見つめてるの?」

「見つめてない。睨んでたの」


席につくと、すかさず陽子がつっこんでくる。


「睨んでた?どうして?」

「・・・いつものことじゃない」

「それもそうね。でも今日は殺気を感じたよ?」


するどいんだから・・・



夏休み中は当然授業がない。

教師は1学期の片付けや2学期の準備、

それに自習しにきている生徒の質問対応などをしている。


そうなると自然、教師はみんな職員室の自分の席にいることが多くなる。

私も本城先生も朝からずっと席にいる。


早く席を立ってよ!

口止めしたいんだから!


すぐにでも本城先生の後をつけられるよう戦闘体勢をとりながら、

恋する乙女並の頻度で本城先生の方を盗み見ていると、

女子生徒が一人、本城先生のところへ質問に来た。


あれは確か・・・

そうそう、本城先生のクラスの女の子だ。

確か月島さんって言ったかな?


どうして私が2年生の生徒なんかを知っているかというと・・・

まだ2年生にも関わらず、夏休みに自習しにきてることからもわかるように、

月島さんは我が校始まって以来の大秀才だ。

うちからの初めてのT大合格を期待されている。


見た目にもまあまあかわいい子なのだけど、

勉強ができるせいか、教師に対して愛想がなく、

扱いづらい生徒のようだ。


さすがの本城先生もさぞかし手を焼いてることだろう、

と、思ったら!!

月島さんのあの表情・・・

相変わらず愛想はないけど、明らかに本城先生にほだされてる!

そんな目をしている!!


「ほだされてる」・・・なんて古い表現。

って、それどころじゃない。


本城先生。あんな生徒にまで手を出してたのか。

いや、手を出してるわけじゃないか。

でも惚れられるようなことをしているのか。


ああ。

ますます気に食わない。



私は頭を振りつつ、下足室へ向かった。

今日まだ徹を学校で見ていない。

来てないのかな?


こっそりロッカーを見てみると、

中には上履きが入っていた。


来てない・・・

私、避けられてる?


徹は実家に帰ってるんだとは思うけど、

ずっと携帯の電源は切られてるし、

実家にかけようにも勇気が出なくて

確かめようがない。


8月末には結婚式なのに、

こんなことで大丈夫なのかな、私たち・・・



はあ。


本日何度目かのため息をつきながら、

職員室に戻ろうとして、

途中給湯室に寄った。

コーヒーでも飲んでスッキリしよう。



って、

なんでアンタがいるの。


「・・・本城先生」

「あ、おつかれさまです」

「・・・はぁ」


思わずまた、ため息が出てしまった。

すると本城先生がクスクスと笑い出した。


「坂本先生、ぼんやりし過ぎですよ。大丈夫ですか?」

「・・・全然大丈夫じゃありません。誰のせいだと思ってるんですか?」

「あれ?僕、何か悪いことしました?」

「コンビニにいました」

「・・・コンビニ行くのって悪いんですかね」

「本城先生のお家って、あんなところじゃないですよね?」

「よく知ってますね」


アパート借りるときに、全員の住所をチェックしましたから。


「合コン行く途中に寄ったんです」

「・・・」


正直すぎ。

もうちょっとカッコとかつけないのか。


「あんな遅くに出歩いちゃいけません。良い子は家で寝てください」

「・・・8時前でしたよね、あれ」

「そうでしたっけ?」


ふんっと鼻を鳴らす。


「坂本先生、いいんですか?僕にそんな態度取って」

「・・・」

「頭下げて口止め頼むところじゃありません?」

「!!!」


こ、こいつ!!!!

私が顔を真っ赤にしてると、本城先生は愉快そうに笑った。

そして私の方へ一歩近づくと、声を落としてこう言った。


「坂本先生。月島って生徒、知ってますか?」


月島?

さっきの月島さん?


私は頷く。

すると、本城先生はニコッと笑い、


「僕、月島のこと好きなんですよね」


と言った。


「は?」

「あ、付き合ってませんよ?僕の片思いです」

「はあ?」


本城先生は、「じゃあ」と言うと、

何食わぬ顔をして給湯室から出て行った。




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