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第4話 遭遇!

「あ。牛乳がない。ちょっとコンビニ行ってくるね」

「いいよ。明日の朝、俺が飲むのに必要なだけでしょ?」

「違うの。今日の夕食、クリームシチューなんだけど最後に牛乳いれないといけないの」


もうお盆も終わったというのにクリームシチュー。

なんて季節はずれな。


言い訳させてもらうと、春頃に買っていたシチューのルーが冷蔵庫から発掘され、

賞味期限を見ると「8月20日」とのこと。

仕方なく今日はシチューになってしまった。


「じゃあ俺も一緒に行くよ。もう暗いし」

「ありがと!」


実はそう言ってくれるのを期待していた。

だって、普段はあまり二人で外出しないようにしてるし、

一緒に外出するときは人目を気にしないといけないし。

(怪しい変装をするとかね)

しかも、徹は受験生でこの夏休み中も学校で自習していて、

あまり一緒にいられない。


もっとも、生徒が8月いっぱい夏休みでも教師の夏休みはお盆だけ。

だから私も毎日学校には行ってるけど、

学校じゃあくまで「先生」と「生徒」だから一緒にいるとは言いがたい。



夏とは言え、もう7時半で外は暗い。

コンビニまでは歩いて5分だし、そもそもこの辺に学校関係者は住んでいない。

ちょっとくらい二人で手を繋いで歩いてもいいでしょ?



「このお菓子美味しそう!」

「太るよ?」

「・・・やめとく」

「うそ、うそ。買ったら?」


私は徹を恨めしそうに見た。


「そんなこと言われたら買えないよ」

「じゃあ、菜緒の万年ダイエットに協力するために、毎日言い続けるよ」

「・・・言われても食べるもん」

「だから万年ダイエットしてても痩せないんだね」


徹はクスクスと笑う。

でも、私はちゃっかりと新発売のお菓子をカゴに入れ、レジに向かった。


「菜緒、牛乳買った?」

「あ。忘れてた」

「・・・」


なんとかお目当ての物 プラス アルファを購入し、

来たときと同じように手を繋いで、私たちはコンビニの自動ドアを出た。


そして、ソレは急に目の前に現れた。



なに?夢?幻?


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


私と徹はパッと手を離した。



「・・・こんばんは」


最初に口を開いたのは徹だった。


「・・・ああ、こんばんは」


次に口を開いたのはソレだった。


私は、と言えば、目の前の状況に頭がついていかず、

ただ口をあんぐりと開けてるばかり。


徹に脇をつつかれ、ようやく我に帰る。


「お、おつかれさま・・・本城先生」


コンビニでバッタリ会って、

「おつかれさま」も何もないだろう。

でも誰も突っ込んでくれない。


ああ~




「なんでー!?今まであれだけ気をつけてたのに、

なんでこんなしょうもない状況でバレちゃうの!?」

「ねえ」


徹は仕方なさそうに微笑み、

リビングのソファーに腰を降ろす。


「ねえ、じゃないわよー。どうしよう・・・」

「どうせなら、もっと派手にバレた方がおもしろかったよね。

学校でキスしてるところを見られちゃうとかさ」


学校でキスなんてしたことありませんから。



コンビニで本城先生と遭遇してから(もはや宇宙人扱い)、

私たち3人は、もちろんそれ以上話するような事もなく、

「じゃあ」と言って別れた。


で。

家に帰ってきて冷静になって気がついた。

どうして口止めしなかったんだろう!!!


私たちは手を繋いでたので、もはや言い逃れはできない。

まさかハチャメチャストーリーのドラマのように結婚しているとは思わないだろうけど、

付き合ってると思われたに違いない。


だったら、せめて口止めしておくべきだった!


「ああ・・・明日、口止めしとかなきゃ。口止め料っていくらかな?」

「本城先生なら大丈夫だよ」

「本城先生だから大丈夫じゃないの!」


そう!

なんでよりによってアノ本城先生なの!?

もうちょっとマシなのに見つかればよかった!!!


「菜緒、本城先生は言いふらしたりしないよ」

「徹、本城先生の周りには拡声器バリの女がいつも群がってるの。

一人にでもポロッと話してしまえば終わりよ」

「本城先生はポロッと話したりしないよ」

「信用ならない!!!」


私は頭を抱えた。


「八方美人の本城先生のことだから、話のネタが尽きたらポロッと言っちゃうよ、絶対!」


徹が顔をしかめた。


「菜緒・・・どうしても好きになれない人っていうのは確かにいるけどさ。

本城先生は悪い人じゃないよ。先入観だけでそんな酷く言っちゃダメだよ」

「だって!絶対私たちのこと広まるよ!」

「だから、ちゃんと本城先生に言えば大丈夫だって」

「なんて言うの?私たち結婚してるんですけど内緒にしといて下さい、って?

絶対ダメ!それこそ一瞬で広まる!」

「そうなったらそうなったで仕方ないよ」


私は顔を上げ徹を睨んだ。


「徹は!徹は生徒だし未成年だからそんな呑気にしてられるのよ!

私は教師なのよ!?生徒と結婚してるなんてバレたらクビにされる!

校長先生がかばってくれても、保護者や他の教師から『責任取れ』って言われるのは、目に見えてる!

私がクビになったら収入なくなるんだよ!?徹だって困るでしょ!?」


普段ならこんなこと絶対言わないのに・・・

言わないようにしてるのに、思わずカッとなって言ってしまった。


言いながら後悔したけど、口を止められず、

一気に最後までしゃべってしまった。


自分でも意識していないところで、

「私が生計を立てている」っていう驕った気持ちもあったのかもしれない。



敏感な徹は、そんなことも分かってしまったのだろう。

凄く悲しそうな顔をした。

でも私も意地になっていて、素直に謝れなかった。



気まずい沈黙の後、徹は立ち上がり静かに言った。


「ちょっと二人とも頭冷やした方がいいね」



そして徹は家を出て行った。

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