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第3話 デート!

週末のデパート。

すごい人出だ。


誰に出くわしてもおかしくない。

私は芸能人並に変装していた。


「・・・芸能人って言うより、仮装大会って感じだよ」

「そう?」

「カツラは必要ないんじゃない?帽子でじゅうぶんだって・・・」


クルクルパーマのカツラに、ハット帽。

ジーパンにウェスタンブーツと普段は着ないようなカッターシャツ。


「怪しすぎ、ってゆーか、暑苦しすぎ?夏休みだよ?」


そういう徹はTシャツにジーパン、キャップを深めにかぶってる。

徹はこういうシンプルな格好が凄く似合っててカッコいいのよね、

なんて、見た目にも暑苦しい私は、更に暑苦しさ倍増するようなヘラヘラした表情。


苦笑する徹とデパートの中でエレベーターを待っていた。


170センチくらいの徹だけど、155センチの私にすれば、

見上げる程に大きい。

でも、徹は細いから圧迫感がない。

一方私は、体重48キロと少々圧迫感アリですが。


「受験勉強、大丈夫?」

「うん。ちょっとくらい息抜きしないと」

「でも、期末テストよかったじゃない?あれなら志望校も大丈夫だよ」

「そうかな・・・数学はひどかったよ。夏休み中も学校で勉強するから、

本城先生に見てもらおうかな」


なぬ!?


「どうして本城先生なのよ。あの人、2年生の担任でしょ?3年生の数学見てないじゃない」

「前、たまたま職員室で少しだけ数学教えてもらったんだけど、凄くわかりやすくって。

また教えてもらいに来ていいですか?って聞いたら、いつでもおいでって言ってくれたんだ。

夏休みも毎日来てるから、遠慮なく来ていいって」

「・・・」

「本城先生っていい人だよね。俺、あーゆー先生、大好き」

「・・・私はダイキライ」

「ははは。菜緒って前から本城先生嫌いだよね。凄くいい先生だよ?」

「・・・キライだもん」

「例え菜緒が嫌いでも、俺は勉強しないといけないから本城先生に頼らせてもらうよ。

浪人はできないしね」


そう言ってため息をつく。

徹の学費は就職するまで徹のご両親が払うことになっている。

私のお給料じゃそこまでまかなえない。


でも、徹のお父さんも、今は安定しているとはいえ、

いつ急変するかもわからない。

徹は大学はお金のかからない国公立を目指し、できれば奨学金も貰いたいと考えてる。

私もなるべく生活費を節約し、貯金を作っておかないと。


そんな私たちだから、当然結婚式もごくごくシンプルなものにするつもりだ。

婚約指輪はもちろん、結婚指輪もなし。

もっとも、二人とも学校に指輪をしていけるはずもないので、

指輪なんてあっても仕方がない。


そりゃ、ちょっとは欲しいけどさ・・・


でも、我慢だ!



今日はそんな我慢の気晴らしに買い物に来た。

高い物は買えないけど、2学期に備えて私の服を見たい。


「そういえば、こないだの教師同士の飲み会どうだったの?

本城先生も来てたんでしょ?」

「来てたどころの騒ぎじゃないわよ。幹事だし、それに・・・」


ああ、イヤだ。

思い出しちゃった。



期末テスト終了後、教師同士で1学期の打ち上げをしたのだけど、

よくもまあ、と思うほど、みんな本城先生に群がる群がる。

さすがの本城先生もげんなりした様子で、近藤先生の横に逃げて行った。

同期同士ということもあり、あの二人は仲がいい。

いっそ、くっついてしまえ。

そうすれば、年増の女性教員から逃げられるぞ、本城先生。



「ねえ、あの服は?」

「あ!かわいい!派手じゃないかな?」

「あー・・・そうか。教室で見るとどうかな・・・生徒はみんな紺のブレザーだから浮くかも」

「うん・・・でも本当にかわいいなあ」


私は徹が指さした明るい茶色のニットを手に取った。

別に派手じゃない。

普通のオフィスなら地味なくらいだ。


でも教師は服装も難しい。

あんまり野暮ったくても、最近のお洒落な高校生に馬鹿にされるし、

お洒落すぎても浮くし。

人によっては、白いスーツなんかでも違和感がなかったりするし。

(もちろん女性ね。白いスーツの男性教師って・・・どうなの)


髪の毛も、染めちゃいけないわけじゃないけど、

生徒に「校則だから染めるな」と言っている手前、教師も染めにくい。


結構色々と、気を使ってるんだからね、先生も。



その点、本城先生は素晴しい。

髪も染めず、すごく自然体。だけど垢抜けてる。

服装も流行のものだけど、それでいてベーシック。


本当に何から何まで嫌味だ。

ちょっとくらい人間らしく欠点とか弱点とかないの?



結局、さっきの茶色のニットは諦めて、グレーのシンプルなベストを購入。

それから徹の服を少し見て、1階に戻ってきた。

そこはアクセサリー売り場。

キラキラしたかわいいアクセサリー達が目に留まる。


「いいなあ・・・」

「買ったら?」

「・・・うん。でも、いいや」


アクセサリーなんて小さくても結構高い。

それに、今欲しいアクセサリーはない。

指輪以外は。



私は徹と手をつなぎ、デパートを後にした。





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