エピローグ
「浮気者。
「浮気者め。
「浮気者めが。
「ワシというものがありながら、小娘に何を言おうとしていたんじゃ。
「…怒ってるのかって?
「怒っている以外に何があるというんじゃ!ワシを怒らせてただで済むと思うでないぞ!
「…なに、膝枕?
「そんなのは当然じゃ!今日は膝枕だけでは絶対に帰してやらぬから覚悟しておくんじゃぞ。
「…言っておくが。
「この小娘は面倒じゃぞ。
「激重面倒小娘じゃぞ。
「自分で自分に嘘をつくから結局本心を自分で見失う激重面倒厄介小娘じゃぞ。
「……ふん。
「そう言われずとも、臨がそれを承知で小娘に向き合おうとしているのはワシもわかっておる。
「対等になりたかったのじゃろ。
「家族とは、周りが認めてくれないからの。
「小娘が泣き言を言えるだけの対等な立場がほしかったんじゃろ。
「小娘のことに口を挟めるだけの、立場がほしかったんじゃろう。
「ワシもわかっておる。
「ワシはちゃんとわかっておる。
「じゃが。
「それを納得するかは別の話じゃ。
「そんなのはワシは認めんからのう。今度こんな真似をしたら、ワシの権限で小娘の許嫁にはその辺のオヤジを宛てがうからな。
「…嫌じゃ!
「絶対するんじゃからな!
「それが嫌なら臨はワシの相手だけしておればいいんじゃ!
「………。
「…それに。
「巫女と恋仲というのは、辛いぞ。
「…ん?
「なに、そういう話も、昔にあったということじゃ…。
「なにより、この唐変木小娘がそんな大人しく誰かの隣に収まれるとも思えんしのう。
「あのポンコツ具合では、見合い話も、どれも上手くはいかんじゃろう。
「…嬉しそうな顔をするでない。
「見合いとしての親族会を御破算にするために、わざわざあんな作戦までワシに持ちかけおって。
「まあ、妙案ではあったが。
「…そうじゃな。
「そのボスという人間があの中にいなくて良かった。と、今は言っておこう。ワシも氏子を疑うようなことは出来れば避けたい。
「そもそもワシの深読みの可能性も捨てきれんからのう。
「じゃが…。
「ワシの存在が一代欠けた分、神楽所神社への信仰心が地域全体で弱まっているのも事実じゃ。
「…まあ、案ずるでない。
「信仰心など、たった一つの事柄であっさり深まるのも、また事実じゃ。
「臨はとにかく、せいぜい小娘のお目付役にでもなっておれば良い。
「よいか?
「恋仲になんかなったりしたら、許さぬからな?
「さて。
「ん?何を帰ろうとしておるのじゃ。
「まだ終わっておらぬぞ、言ったじゃろうが。
「今日は膝枕だけでは帰してやらぬと。




