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イサイアスに捧ぐ  作者: 万事塞 翁
第四章
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プロローグ

神楽所家というのは、俺たちの住む地域で最も権力を持つ家柄だ。というのを、その分家の息子である自分が言うのもなんなのだが。けれどこの地域の人間なら誰でも信仰する神楽所神社を代々引き継いでいる家筋であるのは間違いなく、そしてその権力はそれだけに留まらない。

本家で幼少期から過ごす俺が知る限り、神社のある県の知事、市長、この周辺の村長、町長、警察関係者などから裏社会の人間にまで顔が利くのだから、その権力はもはや途方もない。

裏社会を統べる織衛組に対しては、お婆様ー神楽所家当主の神楽所薫とその会長が友好的だからか、神楽所の大人たちは「懇意にしている」という言葉をよく使うのだが。県知事や警察関係者に至っては、顔が利くというよりはほとんど諾々と従わせているような状態なのだから、一体どんな弱みを握っているのか…。

これだけの記述でも神楽所家の権力について、如何に敵に回すべきでない存在かがわかってもらえるのではないかと思うけれど、これでもこの間まで、神楽所家の権力は衰退してきていると言われていたのだから、一体全盛期ではどれ程までにその力を持て余していたのだろうか。

昔、誠さんが言っていた。


「神社への次の世代たちの信仰が少しずつ薄れていけば、神楽所神社も今後は力を失っていくんだ。そうすれば、いずれ神楽所家は…。」


それを聞いた時は、その言葉の通り神楽所家の衰退とは、若い世代が老人に比べて信仰心を深く持たないことにあるのだと思っていた。いずれ信仰心の厚い老人が減っていき、神社の参拝客や支援者が減れば、確かに神社は減退していくのだろうと。それが神楽所神社を受け継いできた神楽所家の衰退に繋がるのだと思っていた。

けれど、それは最近になって俺の中で意味が大きく覆った。

七がこの家に来たことで。

神楽所神社が如何にしてこのような立ち位置にのし上がり、今に至るまでその権力を持ち続けて来たのか、それを知ったから。


神楽所神社の神様、氏神様を降ろすことができなければ。その神託を受けることができなければ。


神楽所家最強と謳われる神楽所薫の権力を持ってしても、尊という偽りの器を取り繕い続けていたとしても、本物の器が現れなければいずれ神楽所神社は衰退していたのだろう。

あの全てを知り、理解する、全知全能の神ともいえる氏神様の力の代わりを人間の力などでどうにか出来るようなものではない。あの恐ろしくも、その存在を知る全てのものを魅了する氏神様の代わりなど。

だからこそ、神楽所家の今後は、その繁栄は巫女の身に全てかかっているのだ。



けれど、神楽所の全盛期を想像などしなくとも、俺はこれから自分の目で見ることになっていく。

神楽所七という器を介して。


氏神様のその力を、その悍ましさを。


十月中旬。

俺はまた氏神様の力の、その一部を知ってしまうことになる。どうやって七が、神楽所神社の巫女が、その器に神様を降ろすのかを。降ろしてきたのかを。

氏神様の力を知るたびに、その力を理解する度に。神楽所七という人間を、やはりここに受け入れたことを後悔していくことになる。何度も、何度でも。


4章よろしくお願いします!

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