表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

幼馴染 序章

作者: しいのみ

1つのセリフから、ショートショートを書きました。


「また、振られたのかよ」


 一方的に別れを告げられ、ついでにかばんをぶつけられた俺は、たいして痛くもない腕をさすりながら、彼女が走り去っていく後姿を見送っていると、後ろから聞きなれた声がした。

 振り返ると、腕を組んでふくれっ面をして、仁王立ちになった幼馴染の姿があった。


「なお」

「あいつ、カバンぶつけるとか、ひどくね」

「うん?まあ、そうだね」

「なんで……」

「ん?」

「なんでお前、すごくモテるくせに、いつもすぐ振られるわけ?」

 口をとがらせ、頬を膨らませた直哉(なおや)は、なぜか泣きそうな顔をしていた。

「さあ、なんでだろうね」

 何かぶつぶつ言いながら、下を向いて、地面に半分埋まった小石を、つま先で掘り返そうとする姿は、小さいときから何も変わらない。

「なおだったら、俺が黙っていたって、傍にいてくれるのにね」

「当たり前だろ」

「そうだね。ずっと小さいときから一緒だもんね」

匠実(たくみ)のこと、振るとか、信じられない」

 俺が彼女に振られるたびに、自分のことのように怒る直哉に、なんだか意地悪を言ってみたくなった。

「じゃあ、なおが彼氏になって(なぐさ)めてよ」

 きっと「ふざけんな」と直哉から蹴飛(けと)ばされるだろうと覚悟をしていると、ガバっと顔をあげた直哉に、思いもかけないことを言われた。


「つ、付き合ってやってもいいだぜ!」

 一瞬、俺は呼吸をするのを忘れた。

 直哉はふざけて言ったのだろうけれど、思わず泣きそうになって、慌てて笑って誤魔化そうとした。


「ぷっ」

「なんだよ」

「あははははは」

「なんで笑うんだよ。もういいよ。ばーか」


 俺はとっさに、走りだそうとした直哉の腕をつかんだ

「ごめん、ごめんって…なお」

 引き寄せると、真っ赤な顔をして、涙をためた目で、じっと(にら)んでいる。

 

 もうこうやって、何度直哉に心臓をわしづかみにされてきたことか。


「はあ、いつまで我慢できるかな」

「なに、それ」

「ん?ひとりごと」

「変なやつ」

「そうだね」



 完




続編はkindleで出版いたしました。


https://amzn.asia/d/h2DJELz

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 短いお話の中に、ギュッと、トキメキや、キュンや、切なさが詰め込まれていて、良かったです。 [一言] できれば、続きが読めると嬉しいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ