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富崎春翔のおかしな青春  作者: ザラニン
第1章 転入編
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第5話 作戦実行前

午後7時……


 春翔はとある男の家へと向かっていた。

 その男とは、自分を神奈川から東京の家まで送ってくれた田中 透である。

 春翔は透の家の前に着くと、インターホンを押す。

 すると、スピーカーから声が聞こえる。


『はぁーい。どちら様でぇぇ……お引き取りを』


 透は春翔の顔を見るや否や、追い返そうとする。


「待て待て、こっちは急用だ。断ったら損をするのはお前だ。晴海から鉄拳制裁を喰らわされる前に早く開けろ」


 そう言うと、スピーカーから慌てた声で『ちょっと待ってろ! 今開ける!』といった声が響き、家の中からドンドンと音が鳴り響く。


「な、なんだよ」


 扉を恐る恐る、少しづつ開けながら、透は外にいる春翔を除く。


「前に晴海から貰った()()()()を使いたいんだ。だからガレージを開けてくれ」


「えぇ、面倒くさ」


「晴海、無理だそうだ」


 そういうと春翔は事前に通話中にしておいたスマートフォンを取り出し、晴海にそう告げる。

 すると、透は慌てる。


「ああ分かった分かったすいませんでした。今開けるから待ってろ」


 そう言うと、達は扉を閉めた。

 春翔はそれを確認するとガレージの外へと向かう。

 少し経つと、ガレージのシャッターがガラガラと開いていく。

 その中にはピカピカに光るレトロなクラシックカーとバイクがそれぞれ1台ずつあった。

 その周りには工具が入った棚が置かれている。


「春翔、余計なもん弄るなよ」


 するとガレージの中の扉から透が出てきた。


「それは余計な物を置いている方が悪い」


「ほんとその減らず口嫌だわぁ」


「そんなことよりも、アレ、早く出してくれ」


「あいよ。ったく、ちょっと待ってろ」


 そう言うと、透は近くにあった何かを包んだ布に手を伸ばし、それを剥がした。

 布の中から現れたのは漆黒に塗られたバイク【シャドウスラッシャー】であった。


「はぁ、あれからロクに整備してないからな。今から弄るから、そうだな……約1時間ちょいってところだ」


「そうか。でもなるべく急いでくれ。そっちと晴海の準備が出来次第すぐに出る」


「……おい、何する気だよ」


 春翔はスマートフォンに耳を当てながら「人助け」と言う。

 一方、スマートフォン先の晴海はというと、『こっちもまだだ』と言いながらキーボードを叩いている。


「そんなに難しいのか? 【ECM(イーシーエム)システム】への接続は」


 【ECMシステム】とは、【電子機器完全管理型システム】の略である。

 それはこの日本国内で使われている殆どの電子機器の情報を1つのシステムで管理するというものだ。

 そして、晴海は今そのシステムの情報を確認できるステージ1へと接続しようとしているのだ。


『ああ、なんせ日本のほぼ全ての電子機器の情報を管理しているんだ。そんなシステムのセキュリティなんて、ステージ1でも頑丈に決まってんだろ』


 晴海は当然のように言いながら、接続を続ける。


「確かにそうだろうな。だがそっちも急いでくれ。できたらシステムを媒介にして街の監視カメラから葵の向かった所を炙り出す」


『分かってるけどさ、お前それでもいいのか? 葵は、お前思ってを敢えて突き放したんだぜ。その思いを踏み躙ってでも、彼女の所へ向かうのか? それに、お前が望んでたのは学校生活、青春だ。わざわざ()()銃弾の飛び交う世界へと向かうべきじゃない』


 春翔は晴海のその言葉に、一切の迷い無く答える。


「まず、確かに俺は葵に協力するのは面倒だったが、突き放せとか思っていない。学校生活を望んでたが、青春なんて人それぞれだ。俺が楽しければいい。それにあんたは俺に護身用の為に戦闘技術とかを教えていたが、もうこれは俺のものだ。俺がどうしようが勝手だ。何より俺にはまだ……友達と呼べる存在がいない」


 春翔にとって、葵は大切な存在になっていた。

 たった数日、その数日間でも人と関わることをあまりしなかった彼にとっては、そう認識してしまっていたのだ。


「だから俺は行く。行ったところで葵が問題無いないなく、無駄足になっても構わない」


 その春翔の答えに、


『フッ、言うようになったじゃねぇかクソガキが。いいぜ、好きにしやがれ』


 と、晴海は満足そうに言った。

 その約1時間後、出発の準備が完了する。

 春翔は制服を汚すわけにもいかない為、黒い服に着替えた。

 黒なのは夜間の隠密行動に最適だからだ。

 春翔は道路に用意されたバイクに跨り、ヘルメットを被る。

 アクセルを捻り、ブルンッという音を出してエンジンなどに異常が無いか確認するが、流石に問題は無かった。


「問題無し。流石だな」


「へっ。今度は自分で直せるようにしておけよ……それで、本当にいいのか」


「……ああ。ここまで来て引き返すわけにもいかないからな」


「生きて帰るよな」


「当然」


 そう言うと春翔は足をバイクに引っ掛け、出発した。

 バイクはどんどん加速していき、心地良い風が当たる。

 少し経つと、ヘルメットに内蔵されたスピーカーから晴海の声が流れてくる。


『ECMシステムへの接続完了だ。この街にある監視カメラから情報を解析、指定した個人を捜索……いた。今からお前を目標へ誘導する』


 春翔は「頼む」と返すと、バイクの速度を上げ、目標地点へと向かった。



☆☆☆



 葵は指定されたポイントに時間通り着いた。

 その先約100メートル程の地点には工場に偽装された大麻栽培施設があった。


「F部隊の有原だな?」


 葵は防弾チョッキやアサルトライフを身に着けた男に声を掛けられ、確認された。


「はい。貴方は」


「C部隊の隊長だ。お前の部隊はあっちで準備している。早く準備しろ」


 葵は「了解」と返事するといわれた方向へと向かう。

 そこには見慣れた顔があった。


「お、葵じゃーん」


 葵に手を振りながら、そこにいた女は近いてくる。

 的葉 理恵(まとば りえ)、葵と同い年のと同僚だ。


「葵ー」


 そして葵の目の前で止まる。


「久しぶりね。理恵」


「うん、私も葵に会えて嬉しいよ。まあ、いつも任務でしか会ってないけど」


 理恵は苦笑いする。


「同感だわ。どうせ会うんだったら、任務外がいいわね」


「だよね......そういえばさ、学校のほうで普通の友達できた? 私、学校未経験だからさ、戦友以外ではどうなのかなって思ってさ」


「と、友達、かぁ」


 葵は今日の昼を思い出す。

 あの時の屋上でのことは、彼女の中では今でも心残りであった。

 葵は少し沈黙すると、それに答える。


「......私は......私にはできなかった。悲しいことに友達という人は、1人も」


「ふーん、そんなに難しいものなのかなぁ」


「貴方もやってみれば分かるわ」


 そんな2人の会話に、筋肉質な体系の男が乱入してくる。


「おおい女子共、そろそろ時間になるぞ」


「ああ、ごめんなさいアンドリュー」


 アンドリューと呼ばれたその男は、葵に装備一式を渡す。

 制服に防弾チョッキと銃は見栄え的には最悪だ。

 だがしかし、今はそんなこと言ってられない。生と死を掛けた戦いになるからだ。


「それにしても、結構制服似合ってんだねぇ葵ちゃん」


 そんな中、呑気にそんなことを言っている者が1人。

 橘 浩一(たちばな こういち)、このF部隊の隊長だ。


「変態隊長、今マジそんなキモイこと言わないでください」


 部下からは【変態隊長】と、親しみを込めてそう呼ばれている。


「おお、そうなると理恵ちゃんの制服姿も気になるな」


「マジでキモイ」


 だが慕われているかというと......言うまでもないだろう。


「悲しいなぁ、これでも隊長なんだけど。なぁアンドリュー」


「......」


「悲しいからなんか答えてよ!」


 葵はやかましい同僚を見て、「はぁ」と溜息を吐く。

 すると、無線にC部の隊長の声が流れてくる。


『全部隊に告げる。15分後に突入を開始せよ。今回は事前に伝えた作戦通り先行部隊であるC、Dの突入後、E,F,Gが続けて突入することとする』


 そうC部隊の隊長は言うと、無線はプツン切れた。


「......だってよ、隊長」


「うし、気入れますか」


「こっちとしてはもっと早くから入れてほしかったですけどね」


 すると彼らはテキパキと準備をしだした。

 やる時やるというメリハリのある仲間に、葵は安心した。


「ほら、葵も早く準備しろ」


 アンドリューが葵にそう指示する。


「ええ、分かったわ」


 その指示に、葵は素直に従った。

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